2010年6月13日(日)「しんぶん赤旗」

主張

「強い経済」

誰にとって強いかが問われる


 菅直人首相は11日の所信表明演説で、「『強い経済』『強い財政』『強い社会保障』の一体的実現」を掲げました。

 日本の経済も財政も社会保障も、相当に弱っています。その回復は国民の切実な願いです。

 昨年の総選挙で退場した自公政権は経済、財政、社会保障のいずれも間違った“処方せん”を続けて、ますます病状を悪化させてきました。問われているのは、間違った“処方せん”を根本から改めて、経済、財政、社会保障を痛めつけた病根を退治することです。

「第三の道」というが

 菅首相は、これまでとは違う「第三の道」を追求すると所信表明で言っています。しかし、「強い経済」「強い財政」「強い社会保障」の看板で実際にやろうとしていることは、法人税の減税であり消費税の増税です。これでは、自公政権と変わりません。

 直嶋正行経産相は9日の記者会見で、「成長戦略」として法人税率を「15%ぐらい下げることが必要」「来年度から5%ぐらい下げたい」とのべました。民主党の細野豪志幹事長代理は11日、参院選公約に「法人税率の引き下げ」を盛り込むことを明らかにしています。野田佳彦財務相は8日、首相が言っている「税制の抜本改革」には「消費税も当然入っている」と説明しました。

 所信表明演説によれば、無駄遣い根絶を進めて成長戦略を推進し、さらに税制改革で財政健全化を図って社会保障を安定させ、国民に安心を約束するといいます。

 この筋書きは“絵に描いたもち”にしか見えません。米軍普天間基地の問題では、アメリカ言いなりに名護市辺野古に巨大な基地を建設するなど、巨額の軍事費を減らすどころか膨張させます。行き過ぎた大企業・大資産家減税を改めるどころか、さらに大幅に大企業減税をやろうとしています。軍事費と大企業・大資産家減税の二つに切り込まなければ「無駄遣いの根絶」も「財政健全化」もできないのに、もっと無駄遣いを広げようというのです。

 「成長戦略」で掲げている中身は自公政権の「成長戦略」とうり二つであり、期待できません。

 社会保障でも民主党が提案している年金制度は、大企業の保険料負担をなくして消費税で国民に転嫁する仕組みです。後期高齢者医療制度は「廃止」の公約に反して2013年度まで存続させ、“うばすて山”の対象年齢を65歳まで拡大しようとしています。「安心」どころか「不安」がいっそう膨らみます。

 民主党の新執行部が発足してすぐの8日、さっそく枝野幸男幹事長と細野幹事長代理が日本経団連会館を表敬訪問しました。細野氏は「成長戦略として経団連の皆さんとも方向性の合うものを携えていく」とのべています。

財界にものを言って

 「強い経済」「強い財政」「強い社会保障」といっても、国民ではなく財界・大企業に顔を向けた政策、財界にとって「強い」政治では国民は浮かばれません。

 自公政権の間違った“処方せん”の根本にあったのは、国民のくらしよりも財界・大企業の利益を上に置く本末転倒のやり方です。

 暮らしを守り、経済を立て直す“処方せん”をつくって実行するには、財界とアメリカに正面からものを言う政治が必要です。





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