2010年6月12日(土)「しんぶん赤旗」

宇宙ヨット帆開く

「イカロス」 史上初の成功


 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は11日、金星に向かう軌道を飛行中の小型ソーラー電力セイル実証機「イカロス」が14メートル四方の帆を広げることに成功したと発表しました。惑星間空間に帆を広げ太陽光の圧力で推進する“宇宙ヨット”の実現は史上初の快挙です。

 イカロスは、5月21日に金星探査機あかつきと一緒に打ち上げられました。直径1・6メートル、高さ1メートルの円柱形の本体に、厚さ0・0075ミリメートルの超薄膜でできた正方形の帆がたたまれた状態で巻きつけられていました。

 帆の展開は3日から10日まで、2段階で実施。回転する本体の遠心力を利用して帆を開きました。ジェット噴射で本体の回転速度を毎分25回転まで上げると、先端のおもりに引っ張られて帆がたたまれたまま十字型に展開。さらに、たたまれた帆4枚の支えを外し、数分で帆を広げました。帆に張った太陽電池の発電も確認しました。

 今後、太陽光圧による加速・減速を確認し、帆を操作して軌道制御する実験を行います。

 帆の折りたたみ法を考案した津田雄一JAXA助教は「帆は軟らかく、折り紙を折るのとはぜんぜん違う。みんなで折り方の改良を重ね、地上でできる実験をしてきた。宇宙で人の手を借りずうまく開いてよかった。人類初の方法で推進を開始し、ワクワクしている」と話しています。


解説

“100年来の夢の構想”が実現

 宇宙ヨット「イカロス」が帆の展開に成功し、遠い惑星の探査に新時代が訪れました。

 イカロスは燃料のいらない“夢の宇宙船”です。100年も前から着想はありましたが、大面積に広げられる軽くて丈夫な帆の材料の開発で、ようやく実現しました。太陽光の圧力による推進は、瞬発力はないものの、長時間かければ燃料なしで十分に加速できます。

 これまでの木星や土星への探査機は、大量の燃料を積むため大型ロケットで打ち上げたり、電気エネルギーを得るために原子力を使う必要がありました。

 イカロスによる技術実証は、将来の木星圏探査への足がかりとなります。将来構想では、50メートル級の帆を使った太陽光圧による推進と、帆に張りつけた薄膜太陽電池による電気推進も併用します。イカロスは帆の一部に太陽電池を搭載しており、発電特性も調べます。

 遠心力を使う帆の展開方法は、日本のオリジナル技術。無重力・真空の宇宙環境に少しでも近づこうと、スケートリンクや気球を使った実験で試行錯誤を重ねてきました。

 初の宇宙ヨットは、いよいよ帆の操作による航法技術獲得に挑みます。(中村秀生)





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