2010年6月10日(木)「しんぶん赤旗」

主張

株価下落

足元の内需を立て直してこそ


 東京株式市場は9日、今年の最安値を更新しました。

 欧州の金融・財政危機がギリシャからスペインなどに連鎖する懸念が広がって、共通通貨のユーロが下落しています。東京株式市場の売買金額の6〜7割を外国人投資家が占め、そのうちの6割は欧州の投資家です。欧州経済への不安が強まる中で、これらの投資家の資金回収の動きが加速しているとみられます。

 欧州経済の悪化とユーロ安・円高は日本の輸出企業の業績にも響くことから、東京市場での「売り」が膨らんでいます。

日本経済のもろさが

 欧州市場の混乱を収めるには、ユーロ圏諸国の経済・財政が安定に向かうことが必要です。

 それと同時に、欧州の金融危機はリーマン・ショックやギリシャ危機以前から、ドイツ、フランス、イギリスの銀行の経営危機で火を噴いていました。欧州を含む世界経済の長期的な安定のためには、危機の大もとである国境を越えた金融機関の投機取引を抑える仕組みづくりが不可欠です。

 5日閉幕した20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議でも、日本政府が世界的な金融規制の強化や銀行税の導入に反対しているのは見過ごせません。

 株式市場の安定には足元の日本経済の立て直しが欠かせません。株安の直接のきっかけは海外の要因です。しかし、輸出企業に不利な円高になると、たちまち株価が下がるのは、輸出頼みの景気回復路線を転換できないでいる日本経済のもろさを示しています。

 内需が弱く、海外の動向に振り回される日本経済の脆弱(ぜいじゃく)さは、昨今に始まったことではありません。日本経済が「失われた20年」と呼ばれるような停滞から抜け出せないのは、長期にわたって内需が冷え込んでいるためです。

 その最大の原因は、「国際競争力」の強化を口実に、雇用・賃金と下請け中小企業にしわよせして「コスト削減」を大規模に進めた財界・大企業の行動にあります。大企業の身勝手な経営戦略を、労働法制の規制緩和や、「庶民に増税・大企業に減税」の逆立ちした税制「改革」で後押しした政治の責任は重大です。

 内需を立て直すためには、経済政策の軸足を国民の暮らしに移し、大企業の身勝手な行動を変えさせることが求められます。

 しかし、民主党政府が成長戦略や財政健全化計画で検討しているのは大企業向けの法人税減税であり、庶民を痛めつける消費税の増税です。さらに、政府の労働者派遣法改定案は抜け穴だらけです。

「失われた30年」への道

 菅直人首相は8日、財政赤字の原因について次のようにのべました。「この20年間、税金が上げられないから…大きな借金を繰り返して、…効果の薄い公共事業に税をつぎ込んできた」―。

 法人税の大幅減税など大企業減税を繰り返す一方で、消費税を導入し増税してきた歴史を書き換えるような発言です。本末転倒の政治を続けるなら、いっそう家計と内需を冷やし、大企業のため込み金を増やして財政赤字を垂れ流す悪循環から逃れられません。まさに「失われた30年」への道です。

 こんな道を切り替えるためには、財界・大企業にはっきりものを言う政治こそが求められます。





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