2010年6月6日(日)「しんぶん赤旗」

中国外資系大企業で賃上げ

自殺・スト相次ぎ 要求受け入れ


 【北京=小寺松雄】「富士康」「ホンダ」など中国広東省の外資系大企業が、労働者の自殺やストが相次いだのを契機に、賃上げ要求を受け入れています。一方、中国当局も労働者の働く権利の擁護などに重点を置く方向に動きだしました。


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 深圳市にある台湾系の携帯電話製造企業・富士康では、今年に入って出稼ぎの青年労働者10人が自殺。仏山市の日本系自動車企業ホンダの部品工場では、5月中旬から断続的なストが続いて生産停止状態でしたが、4日からようやく操業を開始しました。

 いずれも同省有数の外資系大企業で、富士康の従業員は40万人を超えます。

 自殺、ストと事態の内容は違いますが、いくつかの共通項があります。

 現場労働者の賃金は、いずれも省規定の最低賃金水準の月1000元(約1万3500円)程度でした。しかし一連の事態を機に、それぞれ賃上げへ動き出しています。

 富士康の親会社である台湾企業は、富士康労働者の賃金を6月から30%以上引き上げることを明らかにしました。

 一方、ホンダでは「800〜1000元の賃上げを」との労働者側の要求に対し、経営側は約370元(約5000円)の賃上げを提示。地元労働組合組織などが仲介に入ったこともあって、スト中止、操業再開にこぎつけました。

 さらに両社の事態に共通するのは、省の共産党組織をはじめとする政治機構が、労働者を激励、援助する立場から積極的な役割を果たしたことです。

 これまで行政は、地域経済に大きな貢献をしている外資系大企業を優遇してきましたが、今回の問題では「労働重視」にかじを切り替えつつあります。

 省トップの汪洋・中国共産党省書記は5月末に深圳入りし、親会社の会長に事情を聞いています。また労働組合が健全な役割を果たすよう要望。賃上げのニュースはその直後でした。

 ホンダの場合も、国営新華社通信が5月末に「労働権の弱化を大いに警戒すべきだ」という異例の論評を配信。論評は、「国民所得に占める労働収入が、2000年の51・4%から、07年には39・7%に落ち込んでいる」と国全体の傾向に警鐘を鳴らしました。

 さらに、02年から09年までの国内総生産(GDP)の平均伸び率が10・13%だったのに、賃金の伸びは8・18%だったと指摘。「社会全体の物質的富が増えているのに、労働者の所得の総量が小さく、伸びが遅い」と告発しています。

 同通信は今月1日の論評でも、ホンダが中国人労働者にストはしない旨の署名を求めていることを批判。「圧力の強化や利益の一面的追求でなく、賃金・福祉をどう向上させるかという問題こそ大切だ」と企業側にクギを刺しました。

 同論評は労働者に対しても、「賃金は団体交渉で決める仕組みをつくろう」と呼びかけました。

 ホンダのストは労働組合の決定ではなく、自然発生的な面が強いものでした。『遼望』誌5月31日号は、同社労働組合の消極的姿勢を指摘、労組が本来の役割を果たすよう訴えています。





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