2010年6月4日(金)「しんぶん赤旗」
韓国地方選 与党が大敗
民主が躍進 李政権に審判
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2日に行われた韓国の統一地方選は、保守与党・ハンナラ党が大敗し、最大野党・民主党が躍進しました。
主要16自治体(7広域市、9道=日本の県に相当=)の首長選のうち、ハンナラ党はソウル市、首都圏の京畿道など6カ所で当選。民主党は、地盤の光州市、全羅南道、全羅北道のほか、首都圏の仁川市、伝統的に保守が強い江原道、首都機能移転計画の見直し問題で注目された忠清北道、忠清南道の計7カ所で勝利しました。
ハンナラ党の地盤の慶尚南道でも民主党系の無所属候補が当選したほか、済州島でも民主党系の無所属候補が当選しました。大田市では保守野党・自由先進党が勝利しました。
ソウル市長選では、ハンナラ党の現職・呉世勲(オ・セフン)氏が当選したものの、市内の25行政区のうち17区で、民主党など中道・左派野党の統一候補・韓明淑(ハン・ミョンスク)元首相の得票を下回りました。呉氏は3日、「事実上敗北した」と述べました。
ソウル市内の区長選でハンナラ党は、4年前の完勝で確保した25区のうち、21カ所で首長を失いました。
同党の鄭夢準(チョン・モンジュン)代表は、選挙結果を受けて党執行部の総辞職を発表しました。
李明博(イ・ミョンバク)大統領は3日の首席秘書官会議で、「選挙結果を自己省察の機会にして、経済回復に専念しよう」と呼び掛けました。
民主党は結果について、「ごう慢な政権に対する国民の審判」だと表明。政府が推進する4大河川開発事業や首都機能移転計画の見直しを中断するよう求めています。
投票率は前回を約3ポイント上回る54・5%。民主化で自治体首長の直接選挙が始まった1995年以来、2番目に高い結果となりました。(中村圭吾)
解説
対北強硬路線 国民が警戒
韓国の統一地方選は、与党ハンナラ党が事前の予想を大きく覆して大敗するという結果になりました。
今回の選挙は、5年の任期の折り返し点を迎えた李明博(イ・ミョンバク)政権の「中間評価」と位置づけられてきました。李大統領は、今後の国政運営で厳しいかじ取りを迫られることになります。
選挙直前の世論調査では、哨戒艦沈没事件を受け、北朝鮮に対して強硬姿勢を取る与党ハンナラ党の候補が、野党候補を大差でリード。南北間の緊張が高まる中、与党圧勝も予想されていました。
しかし、結果は、与党陣営の「予想外の惨敗」(東亜日報)となりました。地元紙は、「終盤に政権と与党に対する警戒心理が働いた」(ハンギョレ新聞)と指摘しています。
中央日報は、「哨戒艦事件で生まれた戦争への不安感も、若い有権者を投票所に引き出すのに大きな役割をした」と分析。南北の緊張の激化を憂慮する声が広がる中、野党陣営は「与党を選べば戦争になる」と主張し、支持を集めました。
李政権は、北朝鮮への独自制裁の実施や米韓合同軍事演習の強化などの措置を表明してきました。こうした対応に、国民から「ノー」を突きつけられた結果となりました。
今回の選挙では、盧武鉉(ノ・ムヒョン)前政権を支えた「親盧」グループが多数当選したことも特徴の一つです。ハンナラ党の地盤の慶尚南道で、盧政権の閣僚を務め、「リトル盧武鉉」の異名をとる無所属候補が知事に当選。忠清南道、江原道の知事選でも、「盧武鉉の両腕」と呼ばれた最側近の2人が当選したほか、首都圏の首長選で盧政権の元閣僚らが与党候補と激戦を演じ、「親盧」グループの健在ぶりを印象づけました。(中村圭吾)