2010年5月17日(月)「しんぶん赤旗」

英選挙結果 米で関心

2大政党制不信背景に


 【ワシントン=小林俊哉】英国で異例の連立政権が誕生したことは、二大政党制の国・米国でも関心がもたれています。注目されるのは、英国での連立政権樹立を評価する意見が主要メディアや保守派からも相次いでいることです。

“最良システム”

 ロサンゼルス・タイムズ紙(13日付)は社説で、連立政権の誕生を「議会システムの最良のものだ」と主張しました。自由民主党が比例代表制の導入を求めていることにも言及した上で、「ドイツなどの国は連立政権によって生きていくすべを学んでおり、連立がときには合意を形成するのに役立つことを理解している」と指摘しています。

 保守派の評論家デービッド・ブルック氏も、ニューヨーク・タイムズ紙(14日付)で、「たびたび、国家は、危機を回避するような政治的枠組みに意図せずに突入することがある。これこそ、イギリスで起こったことだ」と指摘。金融経済危機のなかで、財政出動と財政再建の均衡など、難しい問題が残されているとしながらも、保守党が連立に踏み切ったことで、純粋な自由市場を強調するよりは社会的連帯を強調する政府にますます変わっていくとの見通しを述べています。

 主要メディア上で、こうした議論が相次ぐ背景には、米国の民主党、共和党の二大政党政治に対する国民の不信があります。最近のウォール・ストリートジャーナル紙とNBCニュースの共同世論調査(6〜10日に実施)では、オバマ大統領の支持率は50%、不支持率が44%だったのに対し、米議会については評価するが21%、評価しないが72%でした。オバマ政権への評価とは別に、強い議会不信が国民に広がっています。

硬直政治に懸念

 米議会では現在、秋に中間選挙を控え、野党・共和党がオバマ政権への対決色を強く打ち出しています。そのため、金融規制の強化策や気候変動対策法案など、オバマ政権の重要課題が相次いで停滞しています。オバマ氏を社会主義者などと非難する“ウルトラ保守”の「ティーパーティー」を名乗る政治グループが台頭し、共和党内に影響を広げていることも、事態に拍車をかけています。中間選挙に向けた同党予備選では、現職がより保守の候補に敗れる事例が出ています。

 この政治の硬直状況に、米ワシントン・ポスト紙は「党派政治と(政治的)まひにいかに抵抗するかを議論すべきだ」との社説(13日付)を掲げました。共和党が何でも反対という立場に固執するなら、「なにも達成できない。たとえばエネルギー政策しかりだ」と指摘し、保守メディアとしても、現在の状況に懸念を表明せざるをえなくなっています。

第3党の台頭も

 二大政党が国民不在の党派争いを続けるなら、第3党の台頭は必至と主張するのは、クリントン元大統領の選挙参謀を務めたマーク・ペン氏です。同氏は、英総選挙結果について「それほど遠くない時期に米国でおこりそうなことの先駆けだ」(ワシントン・ポスト紙6日付)と指摘。不況への国民の怒り、イデオロギー的な硬直状況、打開を体現するリーダーの存在などが第3党台頭の条件だとして、「今後3回の大統領選挙で、新しい旗印のもとでの新しい主要候補が現れることは、ありそうなことだ」と述べています。





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