2010年5月4日(火)「しんぶん赤旗」

9条と相いれない軍事同盟――
日米安保廃棄へ合意広げよう

憲法集会での 市田書記局長の発言


 日本共産党の市田忠義書記局長が3日、東京・日比谷公会堂での憲法集会で行った発言は、次の通りです。


写真

(写真)スピーチする市田忠義書記局長=3日、東京・日比谷公会堂

 会場いっぱいにお集まりのみなさん、場外でオーロラビジョンをご覧のみなさん、日本共産党の市田忠義でございます(「頑張れ」の声、拍手)。志位和夫委員長がNPT(核不拡散条約)再検討会議に出席するためにアメリカに行っております。今年は私が代わってスピーチをいたします。よろしくお願いします。(大きな拍手)

 きょう、私は、二つのことをお話ししたいと思います。一つは、今日の憲法状況について、もう一つは、今年改定50年を迎える日米安保条約と憲法との関係についてです。

改憲策動をめぐる今日の状況を見る

国民のたたかいに確信をもとう

 明文改憲の策動は、いま、国民のたたかいによって重大な困難に直面しています。

 この間、具体的な改憲策動を推進する先頭に立ってきたのが、中曽根元首相を会長とする「新憲法制定議員同盟」でした。この同盟には新体制発足時(2008年3月)、150人近くの衆院議員が参加していましたが、昨年の総選挙で再選されたのは、このうちわずか53人にすぎませんでした。(拍手)

 改憲派の“オピニオン・リーダー”を自任する「読売」の憲法世論調査でも、注目すべき結果が出ています。同紙の調査では、1993年以来、「(憲法を)改正する方がよい」とする回答が、「改正しない方がよい」とする回答を大幅に上回っていました。ところが、あいつぐ自衛隊の海外派兵、改憲勢力の問答無用の改憲ごり押し姿勢を目の当たりにした国民の中に危機感が広がり、2004年を境に「改憲賛成」が減少の一途をたどりはじめ、今年、ついに「改憲賛成」と「反対」が拮抗(きっこう)する結果となりました。また、きょうの「朝日」の世論調査では、「9条改正反対」が67%(大きな拍手)、その9条が「平和に役立つ」と答えた人が、7割を占めました。(大きな拍手)

 一時は“一瀉(いっしゃ)千里”にすすむ勢いだった明文改憲策動は、国民のたたかいの前に「頓挫」ともいうべき状態に陥っています。

 みなさん、改憲策動の芽が根絶されていないことに十分に警戒心を払いながら、国民がつくりだしたこの状況に、お互いに深い確信をもとうではありませんか。(大きな拍手)

「国会改革」による解釈改憲に警戒を

 同時に、形を変えた解釈改憲のくわだてには、特別の警戒心が必要であります。

 鳩山政権は、成立以来ことあるごとに、“憲法解釈については、従来の内閣法制局長官答弁に縛られることなく、政治主導で決めてゆく”という立場を表明しています。鳩山政権の掲げる「内閣法制局長官の国会答弁禁止」措置の狙いは、この立場をおしすすめようとするものです。

 歴代の法制局長官は、解釈改憲に手を貸しながらも、海外での武力行使、他国の軍隊の武力行使と一体となった活動は「憲法違反」だという一線を越えることはできませんでした。

 他方、民主党の立場はどうでしょうか。小沢幹事長が公言しているように、「国連の決定があれば、それにしたがって自衛隊が武力行使することはなんら憲法に抵触するものではない」というものです。この立場を公式の「政府見解」に仕上げるためには、従来の答弁に固執する法制局長官をそのまま答弁席に座らせておくことはできない――これが真の狙いにほかなりません。

 「国会改革」の名で、無法きわまる憲法「解釈」を国会と国民に強制するたくらみを阻止するため、世論による包囲と運動をいっそう強めようではありませんか。(拍手)

日米同盟、とりわけ軍事基地問題を考える

 昨年のこの集会でわが党の志位委員長は、日本国憲法には核廃絶の願いが込められていると強調しました。ちょうどいま、第8回NPT再検討会議がニューヨークで開かれています。日本共産党は核廃絶へ大きく一歩を踏み出すために、次の二つのことが大事だと考えています。一つは、2000年のNPT再検討会議で合意された「自国核兵器の完全廃絶を達成するという全核保有国の明確な約束」を、再確認すること、もう一つは、核兵器廃絶のための国際交渉を開始する合意をつくること、この二つの実現のために全力を尽くす決意であります。(拍手)

普天間基地は無条件撤去こそ解決の道

 さて、今年は、戦後65年、安保改定50年の歴史的節目の年です。

 きょうは、日本国憲法とは相いれない存在である日米軍事同盟の核心の一つ、米軍基地問題について、ご一緒に考えてみたいと思います。

 4月25日、米軍普天間基地の撤去・県内移設反対の旗を掲げた県民大会が、沖縄・読谷村(よみたんそん)で開かれました。仲井真知事をはじめ、代理を含む41市町村すべての首長が参加し、地元紙は「日米揺るがす県民総結集」(「沖縄タイムス」)と書きました。私も志位委員長や小池晃政策委員長とともにこの集会に参加しました。訓練の移設先とされた徳之島では、島民の実に6割が参加し、東京に置き換えれば720万人という空前の規模で移設反対の集会が行われました。

 もはやみなさん、沖縄県内はもとより、日本国内のどこにも、「地元合意」が得られる場所などありません(「そうだ」の声、拍手)。普天間の苦しみは、日本のどこに移しても同じ苦しみです。みなさん、際限のない「移設先」探しではなく、アメリカにもって帰ってもらって、アメリカのどこに置くかは、アメリカに決めてもらおうではありませんか。(「そうだ」の声、割れるような拍手)

 私は、沖縄の施政権返還の際の経緯を思い出します。1969年、日米両国政府は、沖縄の施政権返還で合意しました。これは、条約上から考えれば不可能の壁を越えたものでした。すなわち、日本政府は、サンフランシスコ条約第3条で沖縄の施政権を放棄しました。にもかかわらず、沖縄を日本に返還させました。これは、国際社会がかつて一度も経験したことのない画期的なできごとでした。

 なぜこんなことが可能になったのでしょうか。それは、抗しがたい沖縄県民と日本国民の運動の盛り上がりがあったからであります。

 68年、初の琉球政府主席公選で沖縄の「即時無条件全面返還」を掲げた屋良朝苗氏が当選しました。その直後に沖縄を訪問した米国務省日本担当のリチャード・スナイダー氏は、ラスク国務長官にあてて次のように報告しました。

 「返還問題で引き戻し不能の地点まで来てしまった」「日本でも沖縄でも圧力が嵩(こう)じて……返還をいつにするかを来年末以降にのらりくらり引き延ばすことはできなくなった」(68年12月24日の沖縄訪問報告)

 本土と連帯した島ぐるみの世論とたたかいが、いかに大きな力をもったかを、これ以上雄弁に物語るものはありません。(拍手)

 いま沖縄県民のたたかいは、たとえ安保条約という鎖はあったとしても、69年の沖縄施政権返還と同じように、あまりにも理不尽な事態は変更させる――すなわち普天間基地の無条件撤去という決断を、日米両政府に厳しく迫っているのです。

主権国家にあるまじき実態

 わが国には、戦争直後の全面占領の時期につくられたアメリカ軍事基地の大きな部分が、戦後65年を経ていまだに、133カ所にも置かれ続けています。米軍に提供している基地面積は、自衛隊との共同使用を合わせると、80年以降は減るどころか、1028平方キロへと2倍以上に増えました。これは、東京23区の総面積の1・7倍にあたります。

 世界的にみれば、ソ連が崩壊した90年に海外配備されていた米軍総数は半分以下になりました。ヨーロッパに駐留する米兵は3分の1以下に、アジアでも在韓米軍は4割が削減されています。にもかかわらず、日本に駐留する米兵はほとんど変わらない異常さです。(「カネを出すからだ」の声)

 在日米軍基地の実態は、数量的な面だけではありません。質的にもきわめて異常で、日本国民に耐え難い重圧と負担をもたらしています。(1)世界でも例がない、首都圏に広大な面積を占有する横田基地や横須賀基地、(2)人口密集地での米空母艦載機の夜間離着陸訓練などによって耐え難い騒音公害が続く嘉手納基地・厚木基地・三沢基地・岩国基地、(3)宜野湾市のど真ん中を占拠し、交通や上下水道などを分断し、騒音や墜落事故の被害が絶えない普天間基地、(4)港湾水域の8割の使用が制限され、造船業や漁業に甚大な被害を与えている佐世保基地、(5)沖縄では、市町村面積の3割以上を基地に奪われ、住民の生活と安全に重大な影響を与えている自治体が、嘉手納町をはじめ十指にのぼるなど、どれ一つとっても主権国家にあるまじき異常な実態です。

いま安保の是非問う声が起きている

 米軍基地が町面積の83%を占める、日本でもっとも米軍基地の重圧に苦しめられている嘉手納町で、5期20年にわたって町長をつとめてきた宮城篤実(みやぎとくじつ)氏は、こう語られました。

 「いくら何んでも基地の存在がこんなに長く続くとは思わなかった。戦後65年、あと35年で100年」「新たな外交展開で、アメリカの質的な軍事支配から脱却することは主権国家として当然の義務だ」(「沖縄タイムス」4月17日付インタビュー)。(「そうだ」の声、大きな拍手)

 沖縄県民のなかで、この苦難に満ちた現状を変えるためには、日米安保条約の是非そのものを問う必要があるという動きがおこっていることは重要です。

 さらに、98歳になる聖路加病院の日野原重明さんは「半世紀前に結んだ日米安保条約を考え直す時期」「いまから10年先を目標にした安保条約の解消を、意を決して提案します」と述べられています(「朝日」1日付)。(拍手)

 さらに、注目すべきは、長く日米関係にたずさわってきた米側関係者のなかでも、日米同盟の包括的見直しが必要だという声がおこっていることです。ライシャワー元駐日大使の特別補佐官だった人が、最近発売されたアメリカの外交専門誌『フォーリン・アフェアーズ』で、「日米同盟の将来を決めるのは最終的に日本の有権者である」とのべ、多くの米軍基地が居座っている異常さを次のように指摘しています。

 「駐留米軍の75%近くが沖縄に駐留している。こうした米軍の存在は沖縄の住民にとって頭痛の種であり続けている」「専門家の中には、そもそもなぜ沖縄に海兵隊が必要なのかと鋭い質問を投げかけるものもいる」

 かつて米政権の近くにいた人でさえ、戦後65年たってなお多くの米軍基地が居座っている日本の現実は異常であり、「同盟全体の再検討が必要」だと認識しているのです。(拍手)

 政府は、日本の安全保障の観点から、「抑止力としての米軍は必要だ」という立場にたっています。しかし在日米軍は、海兵遠征軍・空母打撃群・航空宇宙遠征軍という、その名が示すとおり、そもそも「日本を守る」という任務をもたない、“殴り込み部隊”ばかりであり、「抑止力」どころか、「戦争力・侵略力」そのものではありませんか。(拍手)

安保半世紀、節目の年に

 日米安保条約改定から半世紀。この、世界でも突出した従属的で危険な体制を、これから先、未来永劫(えいごう)続けようという勢力には、日本の独立も平和も語る資格はありません。(「そうだ」の声、拍手)

 安保改定半世紀の節目の年にあたって、日本国憲法に根本からそむく日米軍事同盟の実態を広く明らかにしつつ、東アジアに平和的環境をつくりあげていく平和外交と一体に、日米安保条約廃棄の国民的合意をつくりあげていくために、あらゆる知恵と力を発揮しようではありませんか(大きな拍手)。日本共産党もみなさんとごいっしょに、全力をあげることを表明して私のスピーチを終わります。(大きな拍手)





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