2010年4月24日(土)「しんぶん赤旗」

主張

水俣病「政府方針」

被害者すべてをなぜ救わない


 政府が水俣病未認定被害者に対して、一時金210万円を支給するなどを内容とする「救済方針」を決めました。

 「政府方針」は水俣病特措法にもとづく措置であり、「ノーモア・ミナマタ訴訟」で熊本地裁が示した所見を反映しています。原告団と弁護団、被害者、国民世論が力になりました。しかし同時に、今回の措置は被害者全員を救済するものとはなっていません。とても「最終解決」とはいえません。被害者全員の救済のために力をつくすことがいよいよ重要です。

「特措法」の枠組みでは

 水俣病の潜在的な被害者は10万人といわれます。1956年に水俣病が公式に確認されてから54年もたつというのに被害者の多くが置き去りにされてきました。

 これまで公害健康被害補償法(公健法)による認定を受け救済された被害者は、約3千人にすぎません。95年の「政治決着」でも対象は1万4千人でした。

 民主党政権が決めた今回の方針でも、約4万人が救済の対象になるだけです。それは「政府方針」が被害者の多くを切り捨てる水俣病特措法の枠内にとどまっているからです。昨年、日本共産党などの反対を押し切って特措法を強行した自民、公明、民主各党の責任が問われています。

 水俣病被害者の救済にとってまず不可欠なのは、熊本県と鹿児島県にまたがる不知火海の沿岸で生活した経験をもつ人全体の健康調査の実施です。民間医療従事者らによる昨年9月の大検診では公害健康被害補償法の指定区域以外の住民の多くが水俣病と診断されました。今年2月の「関東水俣病検診」でも水俣病と診断される人が続出しました。健康調査の実施に背を向けている政府の態度は救済対象をせばめるためだといわれても仕方がありません。

 政府の「方針」は救済対象を、加害企業のチッソが有機水銀の排水をやめた68年12月以前に公害健康被害補償法の指定区域に1年以上居住した人に限るとともに、69年12月以降に生まれた人を基本的に救済対象からはずしています。3年以内に救済の対象者を確定することから、それ以降に声をあげる人を救済する保証すらありません。被害者全員救済の道を閉ざすやり方は到底認められません。

 重大なのは、水俣病の加害企業であるチッソが、被害者補償にあたる親会社と液晶関連でもうけをあげる事業会社に分かれる分社化です。チッソの後藤舜吉会長は分社化で「水俣病からの桎梏(しっこく)から解放される」といいました。分社化は親会社をいずれ消滅させ、事業会社のもうけだけはしっかりと確保するという大企業の身勝手さを示すものです。被害者は生きている限り苦しむというのに、加害企業が責任を逃れるのは本末転倒です。チッソは最後まで責任を果たすべきで、分社化は許されません。

全被害者救済してこそ

 被害者がいまなお苦しんでいるのは、水俣病の発生・拡大を野放しにした国などの責任を認めた最高裁判決を、国が正面から受け止めていないからです。対応を遅らせた国に責任があるのは明白です。

 鳩山由紀夫首相は、5月1日の「水俣病犠牲者慰霊式」(水俣市)に出席するといいます。それなら被害者全員の救済のために力をつくすことが重要です。





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