2010年4月2日(金)「しんぶん赤旗」

母子加算 守った

原告と国が合意


 生活保護の母子加算の復活を求めてたたかっている生存権裁判(2高裁・3地裁)の原告・弁護団は1日、厚生労働省と基本合意書を取り交わしました。原告らは2日に訴えを取り下げ、訴訟は終結します。


国「最低限の生活確保」

 基本合意書は、(1)国が今後十分な調査を経ることなく、あるいは合理的な根拠もないままに母子加算を廃止しないことを約束する、(2)母子世帯や高齢者世帯を含め国民の最低生活水準に関して検証を行い、憲法25条の理念に基づき、国民の最低限度の生活の確保に努める―としています。

 合意の調印式後、札幌市の女性(47)は「これからみんなで笑って生活していけます」と笑顔を見せました。

 長妻昭厚生労働相は「原告のみなさんは、全国で苦しんでいる人たちのためにたたかってきたと考えている。基本合意に基づき、憲法25条のもとでのナショナルミニマム(国民の最低生活水準)の保障をしていきたい」と述べました。

 弁護団長の竹下義樹弁護士は「母子加算の復活は、訴訟をはじめとする運動で母子世帯の生活窮状が社会に注目され、新政権を動かした。今後は高齢者の生活実態を訴えて、老齢加算の復活を目指したい」と話しました。

 母子加算は小泉「構造改革」の社会保障削減路線のもと、2005年度から段階的に廃止され、昨年3月で打ち切られました。母子家庭の母親らが不服審査請求や裁判などの運動で国を動かし、昨年12月1日に復活。4月以降も継続することになりました。

 全国生存権裁判弁護団は声明文を発表し、「基本合意を新たな出発点として、憲法25条の理念に基づくナショナルミニマムの確立と老齢加算の復活を目指す」決意を表明しました。

次は老齢加算復活

原告決意

 生活保護の老齢加算を元に戻して―。「生存権裁判を支援する全国連絡会」は1日、母子加算の復活に関する国との合意を受けて、厚生労働省前で宣伝を行いました。同日、開かれた記者会見では、引き続き老齢加算の復活に向けた運動を粘り強くすすめる決意が述べられました。

 老齢加算の廃止取り消しを求め裁判をたたかっている東京の原告の女性(78)は「子どもは国の宝。母子加算の復活はうれしい」といいます。鈴木さん自身は、灯油や風呂の回数を減らすなど倹約。「最近は目も耳も悪くなりました。めがねは100円均一で買えるけど、補聴器は高くて手が出ません。老齢加算を早く元に戻してほしい」と訴えました。

 調印式でサインした京都市の女性(47)は「母子加算の復活はうれしいが、老齢加算の復活もセットで求めてきたので、手放しでは喜べない」と話します。「憲法25条で保障する『最低限度の生活』は、『健康で』と『文化的』のどちらが欠けてもいけないものだと訴えて、これからもたたかっていきたい」と述べました。

 記者会見に同席した日本社会事業大学の小川政亮名誉教授(90)は「母子加算の復活は、当事者自らが立ち上がり、国を動かしたという大きな意味を持っている。憲法25条が元の形を取り戻す一歩になった。一方、老後の生活が保障されなければ若い人も希望が持てない。老齢加算の一日も早い復活が必要だ」と語りました。


 母子加算 18歳以下の子どもを養育するひとり親世帯に、通常の支給額に加えて支給されていた生活保護費。最大月2万3260円を支給していました。05年度から段階的に縮小し、09年度に全廃されました。

 老齢加算 70歳以上の高齢者などに通常の支給額に加えて支給されていた生活保護費。最大月1万7930円が支給されていました。04年度から段階的に縮小し、06年度に全廃されました。





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