2010年3月23日(火)「しんぶん赤旗」

主張

富士演習場

米軍優先使用の「密約」解明を


 陸上自衛隊東富士演習場(静岡県)と北富士演習場(山梨県)を米軍が「毎年最大270日、優先使用する」との「富士演習場解放協定」の存在を北沢俊美防衛相が認めました。政府として初めてのことです。日本共産党の紙智子参議院議員に答えました。

 自衛隊基地を米軍と共同使用する場合、米軍が1年の半分以上を使用するのでは「主客転倒になる」というのが政府の統一見解です(1971年)。「最大270日」の米軍優先使用を認めたとするとこの政府統一見解にも反します。「古い話だ」といって全容解明の要求を拒否するのは許されません。

米案受け入れを伝えた

 東富士演習場と北富士演習場は60年代に米軍から日本に返還されたあと、日本政府が住民に引き渡さず、自衛隊と米軍が共同使用する基地にしました。「富士演習場解放協定」とその「了解合意覚書」は、富士演習場を日本に返還する日米交渉のさい作成されたものです。「年間最大270日」の優先使用権を米軍に認めたのは、「米軍が主人公」という異常な日米の従属関係を示すものです。

 「富士演習場解放協定案」と付属の「了解合意覚書」の存在そのものは、すでに63年3月までの米政府内部文書で明らかになっていました。紙議員が示したのは、在日米軍司令部の活動報告書「コマンド・ヒストリー」の65年版、66年版です。米政府内部文書を裏付けています。

 65年版は、「年間270日の野外演習を行う権利のための協定案が62年以来存在している」とのべています。とりわけ重大なのは、66年版が、「防衛庁長官は66年2月25日、北富士と東富士の同時解放に向けて作業するとの米側の提案を受け入れるとの内閣の決定を在日米軍に伝えた」とのべていることです。

 「米側の提案」が270日の優先使用権を認めた「協定」を指しているのは明白です。政府がその受け入れを決定し、国民には知らせることなく「協定案」を認めたとなれば、それこそ「密約」です。在日米軍に伝えた政府決定の過程と内容をすべて公表することが不可欠です。北沢防衛相が「270日は米側の権利という議論はあったが結論に達しなかった」というだけで、過去の記録を調べもせずに「協定案」の存在がないかのようにいうのは責任ある態度とはいえません。

 北沢防衛相は、「40年という歳月がたっている。資料がととのわない」といって交渉記録の提出を拒みました。「歳月がたっている」という言い分は通用しません。外務省はどんな問題であれ、外国政府との交渉記録を残しています。核持ち込みなどの「日米密約」調査でも、50年前の安保改定時の記録を、一部とはいえ残していることは否定できませんでした。

 過去の遺物を一掃するという意思があれば、40年前の記録も調べることができます。政府は調査にふみきるべきです。

「協定」を破棄せよ

 富士演習場は住民が訴訟をおこしてまで全面返還を求めてきた歴史があります。それにもかかわらず既得権益を手放さないのが米軍の特性です。優先使用を認めるなら富士演習場の全面返還を困難にするだけです。政府は全容を公表し、「協定」を破棄すべきです。



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