2010年3月14日(日)「しんぶん赤旗」

名古屋 河村市長の議員半減案

議会の役割否定 専制政治狙う

憲法の「二元代表制」を否定


 名古屋市の河村たかし市長(元民主党衆院議員)は9日、名古屋市議会の定数を半減(75人から38人に)し、半分以上(16区のうち9区)を1〜2人区にする条例改定案を提出しました。その危険なねらいをみてみます。(深山直人)

議会を市長の翼賛機関に

 条例案は、政務調査費の廃止や議員報酬半減も盛り込んでいますが、中心は議員半減案です。これは議会の権能を否定し、議会を無力なものにして、市長の翼賛機関に変えることを狙ったものです。

 しかも、河村市長は提案理由説明のなかで、「議員個人個人が、ノンパーティー、つまり党派の拘束から離れ、自らの信念や理念に基づき、独立して議決権を行使すること」を求めています。明らかな政党否定の立場です。名古屋市では、「河村サポーターズ」という市長応援団が組織されています。政党を否定し、「河村サポーターズ」のような市長支持派の議員だけで議会を構成することをもくろんでいるのです。市長の専制政治をつくろうとする狙いです。

憲法と民主主義破壊する暴挙

 だいたい、住民から直接選挙されている議会を、首長がつくりかえることが許されるのでしょうか。

 憲法や地方自治法は、住民が首長と議員を直接選ぶ「二元代表制」をとっています。これには訳があります。

 一つは、戦前の反省です。明治憲法のもとで、都道府県知事は天皇の任命で、市町村長は議会選出でしたが、事実上国の意思が反映していました。こうした中央集権体制が戦争翼賛の道具になったのです。

 もう一つは、首長と議員がそれぞれに住民を代表し、互いにチェックしあって住民福祉を実現することをめざしたのです。「相互の抑制と均衡によっていずれかの独善と専行を防止する体制」(町村議会議長会編『議員必携』)とされます。

 河村提案は、この「抑制と均衡」の考えに立った「二元代表制」を否定し、市長の専制政治を狙う民主主義破壊の暴挙といわなければなりません。河村市長自身、「二元代表制」を「立法ミス」と敵視しています。

市民いじめを強行するために

 なぜ、河村市長は、こうした議会否定の暴挙をおこなおうとするのでしょうか。

 もともと「議会改革」は、「市民税減税」と「地域委員会」と並ぶ河村氏の公約の柱でした。しかし、「市民税減税」と「地域委員会」では、福祉切り捨てと大企業応援の仕組みがすすめられました。

 「市民税減税」では、大企業や大資産家にも一律に10%減税するもので、中小企業や低所得者にはほとんど恩恵がありませんでした。

 しかも、その財源をつくるために、2010年度予算案では、保育料の大幅値上げや市立病院と保育園の廃止・民営化、自動車図書館廃止など市民いじめが強行されようとしています。マスメディアも「子育て支援に逆行」「自動車図書館『存続を』 (廃止)反対署名4千人」(「朝日」)と報じています。

 「地域委員会」は、“ボランティアの委員”が予算の一部の使途を決めるものですが、市長自ら「保育園の入所待機児はアパートの空き部屋でみてもらいたい」と発言しているように、待機児対策や不登校対策を住民組織に丸投げし、公的責任を放棄しようとするものです。いわば福祉切り捨ての「受け皿」づくりが狙いです。

 こうした市政を推進するために、議会が邪魔とばかりに出してきたのが議員定数半減の条例改定案なのです。

 いま名古屋市では、議会を否定し、市長の専制体制づくりを狙った条例改定案にたいし、議会内外で反対の声が広がっています。


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