2010年3月6日(土)「しんぶん赤旗」

主張

国民健康保険

いまもどこかで悲惨な事件が


 公的医療保険の保険料が高すぎて払えず、無理やり保険証を取り上げられ、病院にもかかれなくなって命を落とす―。あってはならない悲惨な事件が、いまも日本のどこかで起きています。

 国民の4割が加入する国民健康保険の問題です。

 支払い能力をはるかに超える国保料(税)、滞納者からの保険証取り上げが、命を脅かす深刻な事態を広げています。「直ちに手だてを取るべきだ」と、日本共産党の小池晃政策委員長が4日の参院予算委員会で求めました。

国庫負担率引き上げを

 札幌、京都、大阪、福岡などでは、所得300万円の4人家族(夫婦と子ども2人)の国保料は40万円を超えます。これまで保険料を抑えてきた自治体でも、この春から値上げの動きがあります。

 鳩山由紀夫首相も「(保険料の水準は)相当高いという実感を持っている」と答えました。

 自治体だけの責任ではありません。保険料高騰の最大の原因は国が国庫負担を引き下げ続けてきたことにあります。1984年度に50%だった国庫負担率が2007年度には25%に半減しています。この間、1人当たりの国保料は2倍以上に値上がりしました。

 労働法制の規制緩和によって大幅に増加した非正規の労働者や、リストラによる失業者が国保に加わっています。もともと加入していた自営業者らの廃業も加速するなど、国保財政には「構造改革」の被害が集中しています。政治の責任で直ちに国庫負担率を引き上げて国保財政の立て直しを図り、保険料引き下げの手だてを取ることが切実に求められます。

 08年の国会で後期高齢者医療制度を廃止する法案の審議のとき、民主党は次のように表明していました。「財政的な措置をこの市町村国保赤字問題に対して講じていくのが、まずは緊急的、短期の措置としては非常に重要だ」「9千億弱の予算措置を我が党が政権を取った暁にはさせていただく」(現文科副大臣の鈴木寛参院議員)

 ところが、政権についたら後期高齢者医療制度の廃止は先送り、市町村国保への財政措置もわずか40億円にとどまっています。

 日本共産党は緊急策として国の責任で国保料を1人1万円引き下げることを提案しています。必要な財源は4千億円です。年間1兆円を超える株取引・配当減税(07年実績)を正せば優にまかなえる規模です。

 小池議員の追及に首相は「この問題は看過できない。財源確保に努力したい」と答弁しました。発言を守り、国庫負担率の引き上げに手だてを講じるよう求めます。

保険証を取り上げるな

 同時に、保険料を払えない人から保険証を取り上げる非道なやり方、人権無視の取り立てを直ちにやめさせる必要があります。

 小池議員が示したように、保険証取り上げや資格証発行が増える一方で、保険料の収納率はどんどん落ちています。滞納のほとんどが「払いたくても払えない」ために起きています。懲罰的なやり方は滞納対策として的外れであり、貧困をますますひどくし、悲劇を生むだけです。

 鳩山政権が「いのちを守る」と言うなら、国民の生存権を守る義務を政府に課した憲法25条を踏みにじる実態の是正に、直ちに踏み出すべきです。



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