2010年3月4日(木)「しんぶん赤旗」

党派超え 森守ろう 高知 「林業再生」共産党シンポ

森林組合長も市長も 思い熱く

環境保全・水資源・生物多様性・CO2吸収…


 日本共産党高知県委員会などが同県香美(かみ)市で開いた「森林と林業の再生を考える」シンポジウム(2月27日)は、国産材の価値と森の役割を見直し、山と地域を守ろうと連帯感に満ちたものになりました。(高知県・窪田和教、富樫勝彦)


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(写真)発言する戸田氏(立っている人)、紙氏(その左)らパネリスト=2月27日、高知県香美市

 このシンポジウムは、県森林組合連合会(県森連)が全組合に参加を呼びかけ、戸田文友県森連会長など5氏がパネリストを引き受けました。会場は250人でいっぱいに。

 シンポ終了後、パネリストを務めた香美森林組合の野島常稔組合長は感慨深げに語ります。「共産党の政策をよく分かっていなかったが、紙さん(党農林・漁民局長)の話を聞き、われわれがめざす方向と一緒だと勇気づけられた」

 同組合では、山林所有者がバラバラに所有している森を「団地化」(ブロック分け)し、効率的な山の管理や人材育成に力を入れています。

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 「いま中央で、組合と森林作業班を引き離す議論が出ているが、30年余も実績を積んできた作業班の役割は大きいと紙さんにおっしゃっていただき、非常に励まされました」

 パネリストのひとり、梼原(ゆすはら)町森林組合・中越利茂組合長は「自分たちがやっていること、林業の現状などは、どこに出て行っても伝えたいこと。(シンポで)山の現状を知っていただいたことは本当にありがたかった」と話します。

 梼原町は高知市から西へ車で約2時間、四万十川源流域にある愛媛県境の町。森林面積が91%を占め、良質なスギや加工品を生産しています。

 同町では、水源地域の保護や環境に配慮し、間伐を実施した森林所有者に1ヘクタール10万円を交付。森林組合は、森林にかんする国際的審査機関・森林管理協議会(FSC=本部ドイツ)の認証を国内で初めて受けました。また細い間伐材や端材(はざい)を有効活用する木質ペレット工場を設置するなど、林業振興に力を入れています。

国民共同で

 中越さんが力を込めます。「林業は、食料を生産する農業や漁業と違い、消費者・国民と距離がある。そこをもっと近づけることが大事です。山は木材の生産だけでなく、CO2の吸収や木質ペレットを生み出すなど多くの価値を持っていることを知ってもらい、安心・安全の木材、環境に大事な森づくりを国民と共同で進めたい」

 森を守るには密集した木を間引く「間伐」が欠かせませんが、間伐への国などからの補助は68%、32%は林家負担です。輸入自由化で安い外材に押され、国産材は大幅な価格下落に直面しているため、間伐をやれずに放置する所有者が多いのが実態です。

 「このまま放置すれば木々がモヤシのようになり、山がもっと荒れてしまう。戦後、国策として人工林を増やしてきたのだから、国の責任で山林整備の間伐負担金をゼロにすべきです」と中越さんは語ります。

拍手喝さい

 シンポジウムは、熱気と感動にあふれました。門脇槇夫香美市長のあいさつには、大きな拍手がおきました。

 「ここは88%が森林。木を出したら(出荷したら)赤字になる状態にあり、このシンポは非常に時宜を得たものです。いまは国が山にどれだけ責任を持つかが重大問題。私は共産党ではないが、いまやどの党という時代ではない。超党派で山を守っていこう」

 戸田県森連会長は、全国森林組合大会(昨年11月25日)での志位和夫・共産党委員長のあいさつについて、こんなエピソードを紹介しました。

 「きびしい話が続き重苦しいムードだったが、志位さんの力強いエールに会場のムードが一変するくらいの拍手がわきました。私は帰るとすぐ、そのことを伝えようとすべての組合に当日の『しんぶん赤旗』記事をカラーコピーして送りました」

 大豊町の林業家(53)や県の臼井裕昭林業振興・環境部長も報告しました。

 林業家は「25年間間伐作業をやり、いまは家族4人、木材を売っても生活できない」と訴えます。

 「トラックにスギを7〜8立方メートル積んだら以前は、1立方メートル2万円弱で売れたが、いまは1万円弱、ひどいときは6千円のときもある。木材をどれだけ出したらいくら保障するという制度がどうしても必要です。そうなれば、みんなが安定して山仕事ができる」

 参加者からもシンポジウムを歓迎する声があがっています。高知市の森林ボランティア(72)は「この時期に共産党が林業を取り上げ、真剣に論議したことは本当によかった。実際に山仕事ができる若いリーダーを育てるにはどうするか、もっともっと続けて議論を深めてほしい」と期待を語りました。


地域づくりと一体で
生活し家庭持てる支援を

共産党農林・漁民局長 紙智子さんの提案

 「森林と林業の再生を考える」シンポジウム(2月27日)で紙智子党農林・漁民局長が話した林業再生への提案の要旨を紹介します。

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(写真)発言する紙智子さん

 森林は、木材資源の供給とともに、国土や環境の保全、水資源の涵養(かんよう)、生物多様性の保全など、国民生活にとって欠かせないものです。地球温暖化の要因とされるCO2を吸収・固定し、伐採後も固定しており、木材利用を拡大することは化石燃料の使用を削減することになります。

 木材は国内で再生産が可能な資源ですから、林業の停滞を打開し、林業・木材産業の再生のとりくみを強めることは、大きな意味があります。

利用する時代

 日本の森林は、戦後植林してから50〜60年たち、「育てる時代から利用する時代」に入ったといわれます。乱伐による資源不足もありましたが、1960年代には大商社や大手住宅メーカーの利益を最優先にした林産物輸入自由化がおこなわれました。現在、関税は丸太やチップ・パルプは無税、製材、合板などでも6%前後です。日本は約8割を外材に依存しています。

 わが国の資源は増大しており、総蓄積量は70年代の2倍の44億立方メートルを超えています(2007年3月現在)。森林全体の年間成長量は消費量に匹敵する8千万立方メートルで、森林資源を持続的に利用できる時代を迎えています。

 森林の整備や木材生産をすすめていくためには林道・作業道など生産基盤整備が非常に重要です。日本では林道・作業道の整備状況が1ヘクタールあたり17メートルですが、日本と同様に急峻(きゅうしゅん)地が多いオーストリアは87メートル整備され、日本の2倍の生産性をあげています。

 政府は、20年までに木材自給率50%をかかげています。公共建築物だけでなく、土木事業などへも需要拡大の数値目標をかかげて推進していくことなどが必要です。

役割担う組合

 林業就業者は97年の9万人から5万人に減少し、高齢化もすすみ、林業就業者の育成は緊急課題です。

 国の「緑の雇用」制度があります。これは、技術を身につけるための研修に対する助成制度ですが、作業員が正社員として長く働き続けられ、生活し家庭を持てる見通しが立つようにするところまで充実する必要があります。

 森林の小規模所有者が多い日本では、森林組合は、その所有者の意向を反映して林業経営に取り組んでいく組織として非常に重要な役割を担っています。

 新政権の一部に、森林組合から作業班を切り離し、森林組合は管理業務に徹し、他の事業体に委託をする形態が議論されていると聞きますが、受け皿になる事業体がどれほどあるでしょう。収益部門の切り離しとなり、小規模所有者支援などの役割が果たせなくなるおそれがあります。

 林業振興は、地域づくりと一体で取り組まなければなりません。全国一律の大型産地づくり一辺倒では、中小林家や地域の木材産業が取り残されるだけでなく、原料確保のため大面積の木がすべて伐採されるなどの懸念があります。

 国土、環境を守り地域経済を発展させるためには、地域の森林資源に即した木材産業の育成が必要です。林業木材産業の再生のために、みなさんとご一緒に全力を尽くします。



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