2010年2月18日(木)「しんぶん赤旗」

労働者派遣法改正案

“抜け穴”許さぬ 抜本修正は急務


 労働政策審議会に政府が諮問した労働者派遣法改正案(法案要綱)は、規制緩和から規制強化・労働者保護へと転じる抜本改正とするには大きな“抜け穴”を抱えており、抜本修正が求められます。

禁止の例外

 一つは、仕事のあるときだけ雇用契約を結ぶ「登録型派遣」や「製造業派遣」で、「常用(常時)雇用」を禁止の例外としていることです。

 「雇用が安定している」というのが理由ですが、厚労省の調査では、派遣先が派遣会社との契約を解除すれば「常用雇用」の派遣でも76・7%の労働者が解雇されています。

 もともと厚労省「業務取扱要領」では、短期雇用の繰り返しでも1年を超えれば「常用雇用」とみなされます。「常用型派遣」を残せば労働者はワーキングプアからも、いつクビになるか分からない不安定な状態からも抜け出せません。これでは「原則禁止でなく原則容認」(日本共産党の志位和夫委員長)です。

 製造業派遣は「偽装請負」など違法行為がまん延し、派遣法の原則に背く「常用雇用の代替」となっていることが明らかであり、全面禁止すべきです。

 もう一つの“抜け穴”は、登録型派遣を原則禁止としながら、現行の26の「専門業務」を例外としていることです。専門業務は、直接雇用にしなければならない期間制限(原則1年、最大3年)がなく、いつまでも働かせることができます。

 しかも、専門業務のなかには「事務用機器操作」(パソコン操作)「ファイリング」(書類整理)など今では専門性が高いとはいえないものも多く、鳩山首相は「果たしてこのままにしていいのか、しっかり検討する必要がある」と表明しています。専門業務を抜本的に見直し、通訳など真に専門性の高い業務に限定することが必要です。

 派遣先が偽装請負など違法行為を行った場合、派遣労働者に直接雇用を申し込んだとみなす規定が盛り込まれましたが、短期で雇い止めされないよう「期間の定めのない雇用」とするべきです。

「均等待遇」

 派遣労働者と派遣先の労働者の待遇について「均衡を考慮」としていますが、欧州では当たり前になっている「均等待遇」を義務付けることも必要です。

 禁止されてきた「事前面接」の解禁など旧自公政権の改正案を引き継いだ改悪部分は全面削除すべきです。登録型派遣原則禁止の猶予期間を最大5年としていますが、派遣法の改正は急務であり、先送りは許されません。

 「公設派遣村」が示したように、「派遣切り」から1年余たっても生活の再建どころか雇用保険も切れ、命さえ脅かされる事態が広がっています。鳩山政権が「再び派遣村をつくらない」というのなら派遣法の抜本改正こそ最大の保証です。“抜け穴”づくりを許さず、抜本改正を実現するために世論と運動が焦点になっています。(深山直人)



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