2010年2月16日(火)「しんぶん赤旗」

GDP 09年 下げ幅最悪 なぜ


 内閣府が15日発表した2009年10〜12月期の国内総生産(GDP)は、実質、名目ともにプラス成長となりましたが、09年を通して見ると名目、実質ともに過去最大の下げ幅となりました。GDPの指標からは、日本経済の異常なゆがみが見えてきます。(山田英明)


26兆円も雇用者報酬が下落

 09年の雇用者報酬は前年より約10兆6320億円のマイナスの253兆3300億円に落ち込みました。雇用者報酬が最も高かった1997年と比べると、約26兆円も落ち込んでいます。

 家計収入の落ち込みを背景に、個人消費の低迷が続いています。09年の個人消費(名目民間最終消費支出)は約283兆円と前年を約9兆円も下回りました。

 消費の冷え込みは、大企業間の「価格競争」を激化させます。大企業によるコスト削減は、安定した雇用を破壊し、賃金を引き下げ、消費を押し下げるという悪循環をつくり出しています。日本銀行の白川方明総裁は、「『デフレ』の根本原因は需要不足」と指摘しています。

 雇用者報酬がピークだった97年、自民党政府は消費税を引き上げるなど、未曽有の国民負担増を押し付けました。さらに、政府は大企業・財界の要求に基づき、派遣労働の「原則自由化」(99年)や製造現場への派遣労働解禁(04年)を実施し、雇用破壊を進めてきました。


賃金と単価減らし大企業だけに利益

 もうけ最優先の大企業は、正社員を賃金の安い非正規労働者に転換、不安定労働を拡大していきました。下請け中小零細企業に対しては、経営が成り立たない過酷な単価を押し付けてきました。持続的に物価が下落する「デフレ」も、大企業の身勝手な行動に原因があります。

 国民生活の基盤が弱まっている一方、大企業に内部留保という形で利益がたまってしまう経済構造が出来上がってしまいました。


外需頼みの「回復」基調

エコノミスト「内需は厳しい」

 菅直人副総理兼経済財政担当相は、GDPの発表を受け、「雲の間から明るさが見える」といいます。

 09年10〜12月期の個人消費は実質では0・7%増でした。ただこの間、個人消費を下支えしてきたのは、「政府の経済対策の効果」(内閣府)。自動車や電機など一部大企業のもうけにつながっているものの、経済対策は時限措置にすぎません。

 エコノミストからは、「(10〜12月期に)プラス基調を維持した個人消費は、エコポイントなどの政策による押し上げ効果が今後剥落(はくらく)していく。今後、内需のプラス効果を期待するのは非常に厳しい」(宇野大介三井住友銀行チーフストラテジスト)との指摘も出されています。

 09年10〜12月期の企業の設備投資は、アジア地域を中心とした輸出の増加を背景に、7四半期ぶりにプラスに転じました。結局、09年10〜12月期のGDPから見えるのは、政府による一時の「経済対策」と外需だのみの「景気回復」にほかなりません。

グラフ

大企業の蓄え 家計に回せ

 経済危機から国民生活を守るためには、一握りの大企業だけが「成長」する経済のシステムを改め、内需の中心である家計を応援する政策に根本的に切り替える必要があります。そのためには、大企業の内部に蓄積された過剰な内部留保を還元させることが必要です。

 なによりも、大企業に「安定した雇用」を保障する社会的責任を果たさせることが求められます。非正規雇用から正社員への雇用転換を進めるルールづくりは緊急の課題です。また、大企業と中小企業との公正な取引ルールをつくり、下請け中小企業の営業を安定的に発展させることです。

グラフ

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