2010年2月10日(水)「しんぶん赤旗」

主張

「政治とカネ」

企業献金の禁止をなぜ渋る


 鳩山由紀夫首相の虚偽献金疑惑や小沢一郎民主党幹事長の土地購入資金事件など、鳩山政権になっても「政治とカネ」の問題がいっこうに後を絶たない中で、政治腐敗の温床となる企業献金の全面禁止が大きな課題になっています。

 民主党は昨年、小沢氏の虚偽献金事件を機に禁止を言い出しましたが、具体化は遅らせています。自民党や与党の一部には、企業が「社会的存在」であることを理由に、禁止に反対する意見もあります。「政治とカネ」の問題がこれほど深刻化しているのに禁止を渋るのは、清潔な政治を求める国民の声に背を向けるだけです。

献金は主権者国民の権利

 企業は「社会的存在」として、どんなに大きな影響力を持っていても、政治のうえでは主権者ではなく、参政権を持ちません。選挙で一票を投じ、政党や政治家の活動を支えるための資金を提供するのは、主権者であり参政権を持つ国民の権利です。大きな経済力を持つ企業が政党や政治家に資金を提供し、影響力を行使するのは、文字通りカネの力で政治をゆがめ、主権者である国民の権利を妨げることになります。

 企業はもともと営利、つまり金もうけが目的です。企業の経営者が営利に役立たないのに政党や政治家に資金を提供すれば、株主から「背任」で訴えられます。逆に、営利のため見返りを求めて献金すれば、それは文字通り政治の「買収」であり、「贈賄」などの罪で逮捕されることにもなります。

 実際、企業献金が政治腐敗の温床になるからこそ、その禁止が繰り返し現実政治の課題となってきました。かつて選挙制度や政治資金制度について検討した政府の審議会などが何度も、企業・団体献金の全面禁止を答申しています。

 リクルート事件やゼネコン汚職が起きた後、政治家個人への企業献金は禁止の方向に向かいました。しかし、政党や政治資金団体への献金は禁止されていないため、政治家が支部長を務める政党支部への献金を装った迂回(うかい)献金や、政治団体を偽装した献金などが後を絶ちません。小沢氏の購入資金問題も、「西松建設」のダミーを使った偽装献金事件が発端でした。金権腐敗の根を絶つためには、企業献金を全面禁止することが不可欠です。

 だいたい、企業献金の規制を理由に、国民の税金でまかなう政党助成金を導入しながら、十数年たっても企業献金を全面禁止していないことが異常です。日本共産党以外の党は政党助成金を受け取り、多くの政党が政党助成金と企業献金の“二つの財布”を持つありさまです。政党や政治家の財政は、国民の浄財によってまかなわれるべきです。企業献金は直ちに禁止するのはもちろん、政党助成金についても廃止すべきです。

民主党の重大な責任

 いまとりわけ重大なのは民主党の責任です。民主党は、さきの総選挙では「マニフェスト」に、企業・団体献金の禁止を掲げました。その約束を実行することは、決して企業献金禁止を約束しなかった自民党と公明党の政権に終止符を打った、国民に対する責任です。

 疑惑の渦中にある民主党が「政治とカネ」の問題に自浄力を発揮できないうえ、自ら約束した企業献金禁止も実行できなければ、いよいよ国民のきびしい批判は免れることができなくなります。



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