2010年2月5日(金)「しんぶん赤旗」

サイバー攻撃の脅威警告

「ミサイルよりも破壊力」

英国際戦略研


 インターネットなどを通じて政府機関や企業のコンピューターに侵入し、機能不全に陥らせる「サイバー攻撃」が、「新たな脅威」として各国の安全保障関係者の関心を集めています。英国際戦略研究所(IISS)は3日、発表した軍事年鑑「ミリタリー・バランス」で、サイバー攻撃対策の重要性を指摘。米国も、自国民を標的にした「サイバー攻撃の脅威」に警告を発しています。(中村圭吾)


 IISSが発表した2010年版の「ミリタリー・バランス」は、軍事施設や情報通信システム、金融市場などに対するサイバー攻撃が増加していると指摘。しかし、国際社会にはその脅威に対する理解が乏しく、将来の紛争においてサイバー攻撃が決定的な兵器になるかもしれないと警告しました。

 「将来は、通信ケーブルを通じてデータを送り込む方が、離れた基地からミサイルを撃ち込むよりも、より破壊力を持つだろう」。英民間テレビ局チャンネル4は3日のニュースでこう指摘しました。

 IISSのジョン・チップマン所長は、「サイバー戦争が起きた場合、国家インフラが使用不能になるほか、軍事データの改ざん、金融取引の混乱などの事態が予想される」と警告。「サイバー攻撃の証拠があるにもかかわらず、それをどのように評価するのかについて国際的にほとんど理解されていない」と述べ、サイバー攻撃を規制する国際合意が必要だと訴えました。

 サイバー攻撃をめぐっては、外国政府の関与が指摘される事例が近年、相次いでいます。

 米インターネット検索最大手のグーグル社は1月、中国の人権活動家の電子メールアカウントを標的にした「非常に洗練された中国からの攻撃」を受けたと発表。一方、中国も「ハッカーの最大の被害国はわれわれだ」(中国工業情報化省スポークスマン)と主張しています。

 韓国政府は昨年7月に、政府主要機関や報道機関などが受けた大規模な攻撃について、北朝鮮のハッカーによる攻撃だったと発表。北朝鮮も、韓国が「サイバー司令部」を設置し、北朝鮮に対する「サイバー戦争」を準備していると主張しています。


「空前の規模で発生」

米国

 【ワシントン=小林俊哉】デニス・ブレア米国家情報長官は3日、米下院情報特別委員会で証言し、米情報機関による「脅威に関する評価」について、年次報告を行いました。同長官は米中央情報局(CIA)をはじめ、米国のすべての情報機関を統括しています。昨年は安全保障上の最優先課題に「経済危機」への対処を挙げましたが、今年はサイバー攻撃による脅威を強調しています。

 同委員会に提出した文書証言でブレア氏は「悪意あるサイバー活動が、空前の規模で発生している」と主張。「機密にかかわる情報が、政府、民間を問わず、ネットワーク上で日々、盗まれている」として、米国民を標的としたサイバー攻撃に警告を発しています。

 攻撃の実行者については「未知の敵対者」として、特定の国や組織を名指しはしていません。一方で、1日に発表された「4年ごとの国防計画見直し」(QDR)は、中国が、電子戦やサイバー攻撃の能力を上げているとして、脅威視しています。

 地域別の分析でブレア長官は、アフガニスタン、パキスタンなどでのテロリストや武装集団による不安定要因を指摘する一方、中南米について「ベネズエラ、ボリビア、ニカラグアは、権威主義的で国家統制的な政治、経済モデルにすすんでいる」などと指摘。とくにベネズエラを「反米勢力の地域的リーダー」と位置付け、「イラン、中国、ロシアと政治、経済、安全保障上の結びつきを強めている」と警戒しています。

 安全保障上の不安定要因として重視された「経済危機」については、「暗雲は部分的に取り払われた」として、改善の方向との認識を示しました。


 サイバー攻撃 インターネットを経由して、他のコンピューター・システムに不正にアクセスし、特定国や企業に被害を与える行動。特定企業や官庁を対象とするものから、大規模攻撃によって社会全体を混乱させようとするものまで想定されます。電力や通信手段の遮断などで都市機能がマヒすることも予想されることから、人命にかかわる大きな被害への懸念も出ています。


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