2010年1月19日(火)「しんぶん赤旗」

日本共産党国会議員団総会での

志位委員長のあいさつ


 日本共産党の志位和夫委員長が18日、国会議員団総会でおこなったあいさつは以下の通りです。


写真

(写真)議員団総会であいさつする志位和夫委員長=18日、衆院第1議員会館

 通常国会の開会にあたりまして、ごあいさつ申し上げます。

「政治を変えたい」という国民の願いにこたえる国会に

 私はまず、この国会をたたかう私たち議員団の基本姿勢について、二つの点を心掛けてのぞみたいということをのべるものです。

 一つは、「政治を変えたい」という国民の願いにこたえる建設的論戦をおこないたいということです。この願いから出発して、国民要求の実現のために奮闘するとともに、どんな願いをとってみても、それを本格的に実現しようとすれば、私たちが「二つの異常」といっている「対米追随の異常」、「財界・大企業中心の異常」にぶつかってくる、ここを正す改革が必要だということが明らかになってくる論戦にとりくみたいと思います。

 いま一つは、新しい情勢のもとでのわが党の進路を全面的に示しているのが第25回党大会の決定です。この大会決議と中央委員会報告は、直面する熱い問題での解決の方策とともに、中期的展望に立ったわが党の政治的・組織的方針を全面的に明らかにしたものであります。この大会の成果を、議員団が深く身につけ、縦横に生かした国会論戦をおこないたいと思います。

深刻な経済危機から国民の暮らしをいかにして守るか

 そのうえで、この国会で問われる重要な課題について、4点ほどのべたいと思います。

 第一は、深刻な経済危機から国民の暮らしをいかにして守るかということです。

 経済危機と国民生活の実態は、きわめて深刻です。雇用・失業情勢も中小企業の倒産も史上最悪の状況が続いております。こういうときに政治がどういう責任を果たすべきか。私は、三つほど「要」があると思っています。

大企業に、暮らしと経済にたいする社会的責任を果たさせる

 一つは、大企業に国民生活と日本経済に対する社会的責任を果たさせるということであります。

 1997年から2009年までの10年あまりで、雇用者報酬は280兆円から253兆円へと、27兆円、約1割も落ち込みました。一方、10年間で企業の内部留保は約200兆円から400兆円へと2倍に急増しました。正社員の非正規社員への置き換え、リストラと賃下げ、中小企業いじめ――国民からの絞り上げによって、大企業は巨額の金をためこんだのであります。所得を奪い、家計・内需をやせ細らせたことが、日本経済全体を深刻な危機に突き落としました。

 私たちは、「埋蔵金」というなら、ここにこそ社会に還元すべき最大の「埋蔵金」があるではないかと主張してきました。大企業の過度の内部留保を社会に還元させるには、ルールをつくる必要があります。労働者派遣法の抜本改正をすみやかにおこない実施する、中小企業への手当てをやりながら最低賃金を抜本的に引き上げる、中小企業の下請け単価を適正なものにする、「ルールある経済社会」をつくることが、経済危機打開にとっても急務であるということを強調したいと思います。

 この点で私が興味深いと思ったのは、大企業に富が集中しているということは、政府自身も一定程度認めざるを得なくなっているということです。政府が昨年12月30日に「新成長戦略」なる文書を出しました。これを見ますと、「構造改革」の名による「成長戦略」によって、「選ばれた企業のみに富が集中」したが、格差社会は深刻になった、と書いています。これ自体は正しい分析が書かれている。しかし、それでは「富が集中」したというが、それをどうするのか。処方せんは何一つ書いていないのです。「診断が正しくても処方せんはなし」。これが政府の「新成長戦略」なるものです。

 そういう政府の対応にたいして、私たちは、「そういう診断をするなら、それにふさわしい処方せん」と、「ルールある経済社会」という改革の提案を堂々と示していく必要があります。

社会保障――削減政策の数々の「傷跡」をすみやかに是正する

 二つ目は、自公政権の社会保障費削減政策がつくった数々の「傷跡」を、すみやかに是正することです。

 後期高齢者医療制度を即時撤廃する、障害者自立支援法による「応益負担」をすみやかに廃止する、生活保護は母子加算の復活とともに老齢加算も復活させる、高すぎる医療費の窓口負担も軽減に向けて踏み出す――これらはすべて自公政治による「傷跡」です。これをすみやかに是正する。社会保障の抜本的拡充に転換する。

 この点で新政権の立場は、どれも先送りだったり、中途半端だったり、きちんと是正するというものになっていません。先送りや中途半端ではなく、しっかり是正することを、ただちに政府の責任でやってこそ、「政治が国民の暮らしを支える」という強いメッセージが発信され、経済危機の打開にも役立つと思います。

財源政策の転換――消費税増税反対の論戦とたたかいを

 三つ目は財源問題で、従来の政策を転換し、国民の立場に立った責任ある方策を示すことであります。この点で新政権は深刻な弱点を抱えています。

 来年度政府予算案は、44・3兆円の借金と8兆円の一回限りの「埋蔵金」だのみのものになりました。先のない予算になりました。これは結局は、私たちが「二つの聖域」といってきた軍事費を削減どころか増額する。それから大企業と大資産家に対する優遇税制は温存する。たとえば大企業への研究開発減税は温存、証券優遇税制も温存です。(所得税などの)最高税率にも手をつけようとしません。イギリスでもアメリカでも株取引への課税を強化し、所得税の最高税率を引き上げるという動きになっているのに、日本は手をつけようとしない。

 財源問題は、この「二つの聖域」にメスを入れることでしか、解決の道はありません。ここにメスを入れなければ消費税増税ということにならざるを得ない。現にそういう議論は始まっているではないですか。「二つの聖域」にメスを入れよ、消費税増税反対の論戦とたたかいを大いにすすめようではありませんか。(拍手)

沖縄の米軍基地問題を解決していく道筋を明らかにする論戦を

 第二は、沖縄の基地問題を解決していく道筋を明らかにしていく論戦であります。

 この問題で政府は迷走しています。下地島といったり、伊江島といったり、無責任な案がつぎからつぎへと出てくる。根本的な問題は、「移設条件つき返還」に固執しているということです。普天間の苦しみは、県内はもとより日本のどこに移しても同じ苦しみです。このやり方では解決しないというのは歴史が証明しています。しかも沖縄の基地は、普天間基地をはじめ多くの基地が、戦時国際法にも反して米軍によって無法に強奪された土地であります。無法に強奪した基地について、別のものをよこさなかったら返さないというこんな無理無体なことはありません。

 「無条件返還」という立場で交渉してこそ解決するということを、明らかにしていく論戦が必要です。私たちがこれを主張しますと、必ず政府の側は「海兵隊は抑止力だ」「日米安保があるから」などの言い訳をしてきます。しかし、海兵隊は平和のための「抑止力」ではない、世界に「殴り込む」ための「侵略力」です。「日米安保があるから」は成り立たない。軍事同盟や軍事協定を結んでいる国でも、基地を返還させた例はいくらでもあるではないか。こういうことを明らかにしながら、同時に日米安保条約という元凶をなくし、対等・平等・友好の日米関係に切り替えていく、そういう大きな論陣を張っていきたいと思います。(拍手)

金権疑惑の解明――企業・団体献金の禁止、政党助成金撤廃を

 第三は、「政治とカネ」の問題です。

 鳩山首相の偽装献金問題につづいて、民主党の小沢一郎幹事長の資金管理団体「陸山会」による土地購入疑惑が重大な問題となっています。この疑惑の核心はなにか。政治資金収支報告書の虚偽記載という問題もありますが、土地購入の4億円の原資にゼネコンからのヤミ献金が入っていたのではないか。これこそ疑惑の核心です。

 この問題では「しんぶん赤旗」が、独自の取材を昨年来続けてきて、中堅ゼネコン・水谷建設の関係者から重要な証言をえて、「しんぶん赤旗」の日曜版(1月10日号)では、詳しい証言が掲載されています。2回にわたって紙袋に5千万円ずついれて、水谷建設の幹部が、最初は逮捕された石川知裕議員、2回目はこれも逮捕された大久保隆規秘書に渡した。岩手県の胆沢ダムの入札にからんでのものだったという証言です。公共事業という国民の税金でやっている仕事にからんでお金が流れたということになりますと、国民の税金の一部が小沢氏のところに還流していたということになるわけです。そういう疑惑がいま問われているわけですから、この問題をきちんと解明しませんと、「税金の無駄遣いをなくす」といってもむなしいだけです。

 これはしっかりした真相解明が必要であります。小沢一郎幹事長には説明責任を強く求めます。民主党の中からこういう事態におよんでも、うんともすんとも批判の声が公然とあがらないのは異常です。民主党にも政党としての自浄能力の発揮を強く求めたいと思います。(拍手)

 国会も責任を果たす必要があります。国会としても、この問題の真相究明の責任を果たす必要があります。必要な招致もおこなうべきです。

 もう一ついいたいのは、この問題について、根っこをたどれば、自民党政治が根っこだということです。自民党の田中金脈、金丸金脈がいまにひきつがれているという疑惑なのです。自民党がこれまで金権政治が繰り返されながら、それに対してまともな対応をしてこなかった、根を絶ってこなかった、その責任が問われているわけです。もっとも悪い温存されてきた金権政治の元凶はなにかというと、企業・団体献金です。企業・団体献金の禁止こそ、いま待ったなしの急務の課題になっていることを大いに訴えていきたい。あわせて、政党助成金をめぐる疑惑も問題になっていますから、これを撤廃するということもわが党として強く要求していきます。(拍手)

解釈改憲と比例定数削減――「強権的国家づくり」を許さない

 第四に、「政治主導」の名で官僚答弁を禁止する「国会法改定案」が、通されようとしているという問題であります。

 その真のねらいの一つが、内閣法制局長官の答弁を封じてしまうというところにあるということを、私たちはかねがねいってまいりましたけれども、事実そういう動きになってきております。そして内閣法制局長官の答弁を封じる狙いは、憲法9条の解釈を、「政治主導」の名で、好き勝手に改変することにある。解釈改憲への歯止めをとりはずし、「海外で戦争ができる国」にしてしまおうという動きにほかなりません。

 私たちは、こういう動きには、憲法9条を守り抜く立場から、断固として反対という立場でのぞみます。(拍手)

 この問題は、大会決議が批判した「強権的国家づくり」の最初のあらわれとしても、それを許さない論戦とたたかいをよびかけたいと思います。

 そして衆議院の比例代表定数削減について、民主党はマニフェストの中で4年間にやるといっているわけです。ですから、これは相手が具体的に動き出してきてから対応するというのではなくて、その具体化いかんにかかわらず、これは絶対許さないたたかいと論戦をやっていく必要があります。

 政治の反動的逆行を許さないという仕事は、日本共産党が先頭にたって担わねばならない仕事ですから、大いに頑張ろうではありませんか。(拍手)

参議院選挙躍進への道を開いたといえる国会に

 四つの点を申しましたけれども、どんな問題でも、「政治を変えたい」という国民の気持ちにそった論戦が必要であります。自公政権退場という結果をうけて、「政治を変えたい」という国民の期待はたいへん大きいものがあります。その期待に正面からこたえる論戦が必要であります。

 どんな問題でも、国民の願いを実現する建設的な提案を前面に押し出しながら、新政権の問題点をただすという「建設的野党」の立場を堅持してこそ、広い国民のみなさんの共感をえられるし、私たち日本共産党の真価も広く伝わっていくと思います。

 そうした立場で大いに奮闘し、この通常国会を参議院選挙躍進に道を開いたといえる国会にしていこうではありませんか。(拍手)



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