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2010年1月11日(月)「しんぶん赤旗」

2010年 政治は何をすべきか

NHK番組 志位委員長の発言


 日本共産党の志位和夫委員長は10日、NHK「日曜討論」の「2010年 政治は何をすべきか」に出演し、インタビューに答えました。聞き手は影山日出夫解説委員。


情勢の大きな変化

保守や無党派の方々とも対話と共同を

 影山 おはようございます。

 志位 よろしくお願いします。

 影山 共産党の立ち位置の話から聞きたいと思います。4年ぶりに党大会を開くそうですが、決議案をみて1カ所おやっと思ったのは、農協とか医師会とかの保守の基盤を支えてきた勢力とも連携していきたいということですが、保守勢力とも一緒にということは、「マルクス・レーニン主義」の政党という位置づけは、一時棚上げするということですか。

 志位 いや、そういうことではないんですね。「マルクス・レーニン主義」という言葉もいまは使っておりませんし。

 影山 科学的社会主義ですね。

 志位 ええ。科学的社会主義といっているんですが。

 いま起こっている変化というのは、非常に大きなものがありまして、たとえばJAの全国大会に私も初めて参加してあいさつする機会がありました。あるいは(全国)森林組合の大会にも参加してあいさつする機会がありました。

 いままで、自民党一党支持だった、そういう保守の団体のなかにも大きな変化が起こって、いまやああいう事態(自公政権退場の審判)が起こったからには、「全方位」で各政党の意見を聞いてみようじゃないかということになっています。そして、そこにいってみますと、農業の問題でも林業の問題でも、私たちの考えが、実は一番近いじゃないかということで、いろんな連携が広がっているという状況があります。

 医師会ともいろいろとそういう対話や共同がずうっと広がっている。いま自民党の支持が崩れるなかで、これまで保守といわれていた方々、無党派の方々のなかにも、すごく大きな変化が起こっているので、私たちは、ぜひそういう声を聞いて、いろいろな対話や共同で、連携をはかっていきたいと思います。

「二つの異常」と新政権

一定の変化あるが、肝心要の問題では変化なし

 影山 共産党は「二つの異常」――アメリカへの追随、大企業優先政治を正すといっていますが、これは民主党政権になっても、まったく変わっていないということですか。

 志位 これは変わらないんですね。たしかに民主党政権になりまして、国民から「政治を変えたい」という圧力がかかっていますから、そのもとでたとえば高校の授業料の無償化、これは私学の問題が残っていますが、一歩前進です。あるいは肝炎(対策)の基本法ができるとか、そういう前向きの変化が起こっています。

 しかし肝心要の問題では、たとえば後期高齢者医療制度の撤廃はすぐにやるのかと思ったら、4年先に先送りと。それから、労働者派遣法の問題でも、肝心の製造業の禁止について大きな抜け穴ができたうえに、実施は3年、5年(後)に先送りと。あるいは普天間基地の問題でも迷走を繰り返すと。

 肝心要の問題は変わっていないんですね。変わっていない根っこには、いまいわれた、私たちが「二つの異常」といっている、外交ではアメリカ追随、内政では財界中心という、ここから抜け出せていないという問題点がある。私たちはこれを転換すべきだということを訴えています。

予算案をどうみる

社会保障、財源――二つの問題点を問う 

 影山 鳩山政権の予算は命を大事にする予算だということで、公共事業を削って社会保障予算を増やすと。これまでの政権とはやや現実には違うところもあると思うんですが、よりベターな方と連携するという選択はないのか。

 志位 たしかに、先ほどいったような一定の改善点はあると思うんですよ。やはり国民の「(政治を)変えてくれ」っていう力が働いていますからね。

 しかし、予算についていいますと、私は二つの問題点を率直に言いたいと思います。

 一つは、自公政権のもとで、毎年2200億円ずつ社会保障費の削減がずうっと続いてきたわけですね。それがいろんな「傷跡」をたくさんつくっているわけですよ。これはすぐに治す必要があるのに、さっきいったように、後期高齢者医療については4年後に廃止を先送りすると。ところが、今年4月には(全国平均で)14%も保険料の値上げになって悲鳴が上がっているわけですね。あるいは障害者自立支援法については、民主党自身が300億円あれば応益負担が大部分は撤廃できるといっていたのに、3分の1しか予算をつけないで、応益負担を中途半端な形で残す。先送りと中途半端でなく、本格的な社会保障の充実に踏み出すべきだというのが、一つなんです。

 それから、もう一つは、財源問題なんです。予算案を見ますと、軍事費は4兆8000億円と増額なんですよ。とくに、米軍への「思いやり予算」と、「米軍再編」経費については、3270億円と、史上最大なんですね。それから、大企業や大資産家に対する特権的な優遇税制は温存です。ですから、結局44・3兆円の借金と、それから一時的な8兆円の「埋蔵金」だのみの予算になって、結局、これでは庶民増税に付けが回るんじゃないかという、この不安が出てきているわけですね。この二つを正す必要があります。

 影山 事業仕分けといいながら、本来削るべきところを削っていないと。

 志位 そうですね。たとえば事業仕分けの問題でも、本来削るべき一番のところ、スーパー中枢港湾とか、都市の大きな環状道路とか、こういうところは「聖域」とされて、軍事費も「聖域」とされて、そして本来削るべきじゃない社会保障とか教育とか科学とか、こういうところに乱暴なナタを振るおうとしたという問題点があると思いますね。

どうする景気対策

大企業の「埋蔵金」を社会に還元する政策を

 影山 共産党が必要だという景気対策の一番のポイントはどこですか。

 志位 いま景気対策ということを考える場合に、なぜ景気がここまで悪くなったかの原因を踏まえた対策がいると思うんですよ。それは、雇用者報酬、つまり働く人の報酬ですね、これが約10年間で、280兆円あったものが、いまでは253兆円まで減っている。27兆円、約1割も所得が減ったんです。これは、労働法制の規制緩和ということで、正社員を非正規(雇用労働者)に置き換える、あるいはリストラと賃下げをやる、これでどんどん減らしてきたわけですね。

 一方、企業の内部留保は、この10年間で、約200兆円から400兆円へと急増したわけです。その半分は大企業なんですよ。よく「埋蔵金」といいますけれど、私は、最大の「埋蔵金」は大企業がため込んだ約200兆円という内部留保にあると(思います)。これを社会に還元する政策をとるべきです。

 そのために、たとえば労働者派遣法については、抜本改正をすぐにやって、非正規から正規への置き換えをやる。そして最低賃金ですね。これは、中小企業については手当てをしながら底上げをする。そして中小企業に対する(下請け)単価は抜本的に改善する。こういう「ルールある経済社会」をつくるという方向に切り替えるのが、一番の経済対策になると思います。

「米国追随」と普天間問題

「移設条件付き」をやめ、「無条件返還」を求めよ

 影山 もう一つの異常のアメリカ追随ですが、アメリカの中にはむしろ鳩山政権は反米じゃないかという声もありますが、駐留なき安保や密約問題への対応では、従来の政権と変わっているんじゃないですか。

 志位 一定の変化が生まれていると思いますね。ただ、今度の普天間問題についていいますと、私は、(新政権の)最大の問題は、結局「移設条件付き返還」という、これまでの自公政権がとってきた同じ路線に固執していると。そういう立場から当てのない「移設先探し」をやっていると(いうところにある)。しかし、こういうやり方では解決しないということは、もうはっきりしているわけですね。

 普天間基地の苦しみというのは、沖縄県内はもとより、本土のどこに移しても、苦しみも同じ苦しみですよ。そして、SACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)以来ですね、13年間、「移設条件付き」というやり方をやってきたけれども、基地は動かなかった。やはり、ここは切り替えてですね、無条件撤去、移設条件なしの撤去というところに踏み切らないと、問題は解決しないということを強く言いたいですね。

政治とカネ

民主は党として自浄作用を――企業・団体献金禁止を求める

 影山 「政治とカネ」の問題で、民主党トップの2人が追及を受ける立場になっていますが、これはどう見ていますか。

 志位 これは、鳩山さんの場合は、実母からの巨額の献金が、いったい何に使われていたのか。これを説明する必要があります。

 それから、小沢さんの場合は、いくつかの疑惑が、重層的にあるわけですね。一つは、西松マネーの偽装献金疑惑、それから、陸山会の土地購入疑惑。そして、新生党、自由党の解散時のお金の問題ですね。ここには政党助成金が絡んでいる。この三つぐらいのかたまりの疑惑があって、どれも説明していないわけですから、しっかりとした国民に対する説明責任が必要です。

 それから民主党にいいたいのは、これを個人の問題にしないで、民主党のトップの2人が問題になっているわけですから、党としての自浄作用を発揮して、国民に真相を明らかにする責任が民主党にあると(いうことです)。そして、企業・団体献金を禁止すると、ともかくマニフェストでいったわけですから、そのことをきちんとやるべきだし、そして私たちとしては政党助成金の撤廃というところに、この際踏み切るべきだと思います。

 影山 そのへんは国会でも強く追及されていく点ですか。

 志位 その一つの点です。

 影山 どうもありがとうございました。



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