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2009年12月28日(月)「しんぶん赤旗」

党首討論

志位委員長の発言

テレ朝系番組


 8月の総選挙後初の8党の党首クラスの討論となった27日のテレビ朝日系「サンデープロジェクト」。日本共産党の志位和夫委員長は、鳩山由紀夫首相の偽装献金、景気対策から外交・安全保障に至る問題で明快な立場を示しました。


鳩山首相の偽装献金

「知らなかった」は通用しない言い訳

 番組の冒頭、司会の田原総一朗氏は、鳩山内閣の支持率が50%を割り込んだことについて質問。菅直人副総理(民主党)は「もたもた感と政治献金の問題があった」と釈明。その一つの要因である鳩山首相の偽装献金問題について、「私は全く本当に承知しておりませんでした。親や周りの者とお金の話を直接することはほとんどございませんでした」との首相の発言(24日の会見)を田原氏がフリップで紹介しました。

 志位 まず、「知らなかった」という言い訳は通らないと思いますね。実母から12億6000万円もらっていた、それをわからなかったと、これはとうてい通用する言い訳ではない。それが第一点です。

12億円の使途不明金ふくめ説明を

 志位 パネルを見ますとね、12億6000万円が実母から流れている。鳩山さん個人から3億2000万円が流れている。合計すると15億8000万円ですから、鳩山事務所に大体16億円が入っているわけですよ。

 ところが、そのうち虚偽記載で使途がそれなりに出てきているのは4億円なんですよ。そうすると残り約12億円が使途不明なわけですよ。

 田原 あっ、どこに使ったかわからない。志位さんのところには来てないですか。

 志位 来てないですね(笑い)。要するに12億円を一体、何に使ったのか。鳩山さんが野党第一党の党首になり、そして総理になった。そのための「政治力」を得るための資金として使われたのではないかということも含めて、12億円もの使途不明金を説明する責任が総理にあると思いますね。

母親に一本電話で確かめればすむ問題

  菅氏は「(鳩山首相は24日の会見で)知っていることをすべて話されたと信じる」と擁護。社民党の福島瑞穂党首は首相発言の感想を求められ、絶句。あとでようやく「まったく知らなかったというのは、それは問題になる」と述べました。

 志位 この問題が発覚した後、(鳩山首相は)「そういうお金はないと信じる」と1回、国会で答弁しているわけですよ。その後、お母さんからのお金が出てきた。お母さんに電話を一本して、「そういうお金があるのか」と聞けばいいのに、そういうこともやらないで、説明責任も果たさない。問題が明るみに出た後の対応も悪いと思いますね。

 田原氏は、「こういう人に92兆円の予算をまかせられるのか」と提起。国民新党の亀井静香代表(金融相)は「政治家がいちいち金勘定をしながら、政治がやれますか」などと開き直りました。そこで志位氏が改めて問題を提起しました。

 志位 12億6000万円ものお金の税金の税逃れをしていたという問題が一つ。使途不明の膨大なお金がある。このお金がどういうふうに使われて、鳩山さんが総理になったことと、どういう関係があるのか、ないのか。これをきちんと明らかにすることが必要だと思います。

景気悪化をどうする

国民の賃金が下がり企業は巨額の内部留保をため込む――この「埋蔵金」こそ社会に還元させるべきだ

 赤字国債44兆円の大量発行という来年度の予算編成では、田原氏は「(景気の)二番底を回避できるのか」と提起。菅氏が「二番底は回避できる」と述べたのを受け、志位氏は次のように述べました。

 志位 今の景気の問題を大きな目でみると、10年間で雇用者報酬が280兆円だったものが、いま253兆円まで落ちている。27兆円、1割落ちている。OECD(経済協力開発機構)の国の中で、これだけ給料が減った国は日本だけなんですよ。

 田原 だから需要が伸びないんだ。

 志位 ですから需要がどんどん落ちている。

 一方で、たまったものがある。企業の内部留保が200兆円から400兆円になった。そのうち半分は大企業ですよ。大企業はどんどん正社員を非正規社員に置き換える、あるいは、リストラ、賃下げやってどんどん吸い上げてためこんだ。このためこんだお金が最大の「埋蔵金」ですから、これを社会のために使わせる根本的施策の転換が必要だと思いますね。

 それをやるためには、労働法制の規制緩和路線を抜本的に切り替えて、労働者派遣法の改正案をきちんと早く成立させて、派遣労働者を正社員にする、それから最低賃金を中小企業に対しては、きちんと手当てしながら、抜本的に引き上げることが必要です。

派遣法の抜本改正

与党案は一歩前進だが、実施時期3〜5年後では問題

 田原氏が、与党3党が通常国会に提出するとしている派遣法改正案の中身に話を進めたのを受け、志位氏は次のように発言しました。

 志位 派遣法の問題で与党3党が出している案は、一歩前進だとは思っているんですよ。不十分な点はあるけれども。

 しかし、私がいま一番心配しているのは実施の時期です。(与党案は)製造業の派遣や登録型の派遣、一番不安定な派遣を原則禁止すると(しています)。しかし、その実施時期は3年先、あるいは5年先だと。それでは話にならないですよ。

 田原氏が「そんなに先なの?」と驚いて福島氏にただすと、福島氏は「いや、5年先とかそういうのはまったくダメです」と述べました。田原氏に「それじゃ何年先?」ときかれると、福島氏は数秒間絶句したのち「5年先とかではダメ」と繰り返すことしかできず、横から亀井氏が「今後与党3党で調整します」と述べました。

予算案への国民の不安

後期医療制度撤廃などを先送りにし、借金と「埋蔵金」だのみ

 景気対策のあり方については、菅氏が「公共事業に頼った景気刺激策でも『小泉・竹中路線』でもない『第3の道』」を主張。亀井氏は「アメリカでもヨーロッパでも公共事業で景気対策をやっている」と述べるなど、与党内でもちぐはぐさが目立ちました。また、谷垣氏は「CO2の25%削減で本当に日本の産業、競争力は大丈夫か。製造業の派遣禁止をあまりきつくやると、日本の工場はみんな海外に出て行ってしまう」など、国民の要求に背を向けた財界の意見の代弁に終始しました。

 予算案の評価について、志位氏は次のように述べました。

 志位 今度の予算全体をみて、私はやはり、自公政権を退場に追い込んだ、「政治を変えてほしい」という国民の圧力が働いていますから、たとえば高校授業料の無償化は、私学の問題は残っていますが前進だと思いますし、生活保護の母子加算の復活も、老齢加算の問題は残っていますが前進だと思っています。

 ただ、二つ、国民は不安、問題点だと思っていることがある。一つは、転換すべき「要」になる問題での先送りです。たとえば、後期高齢者医療制度はすぐに撤廃だと思っていたが、これは4年後に先送りされています。

 田原 これも先送りね。

 志位 もう一つは、歳入のうち国債が44・3兆円、税外収入が10・6兆円(だということです)。税外収入のうち8兆円はいわゆる「埋蔵金」で、何回も使えないお金でしょう。そうしますとね、今回はともかく組んだとしても、来年はどうするんだと(いう不安があります)。

 志位氏のこの指摘に対し、与党からの答えはありませんでした。谷垣氏は「財政の苦しさの原因は、すべて社会保障費が増えていくことにある。消費税を4年間上げないということでは解決できない」と、消費税増税をあおりました。

天皇の“特例会見”、憲法について

政府の対応は憲法をたがえたもの――天皇の公的な行為に政治的性格を与えた

 民主党政権が“外国要人と天皇との会見は1カ月前までに申請する”というルールを踏み越え、中国の国家副主席との会見を実現させたことが議論になりました。見解を求められ、志位氏は次のように発言しました。

 志位 >これは、憲法から、土台から考えてみる必要があるんですけれども、憲法の4条には、天皇は政治的権能は一切有さないとあるんですね。そして、天皇の行為としては7条に、10項目にわたって国事行為が規定されているんですけれども、その国事行為の中身は、たとえば国会を解散するとか、法律を公布するとか、天皇の行為自身としては、政治的性格を有さない行為なんですね。これは全部、「内閣の助言と承認」によって行われると(あります)。ですから国事行為自身は、天皇の行為としては政治的性格を持たないわけですよ。

 それで、外国の賓客と会うというのは、国事行為ではない、いわゆる「公的な行為」というふうにくくられている行為で、この行為にあたっても、もちろん政治的性格を持たせちゃいけないわけですよ。

 ところが、今度の件は、内閣が関与することによって、政治的性格を持たせてしまった。憲法をそこでたがえたものだと思います。

 もしこういうことが許されたら、たとえば国会の開会式で天皇が発言する。それをどんな中身にするか、それを全部内閣がやれるようになってしまいます。大変なことになります。

 田原氏が「宮内庁長官と民主党の小沢幹事長との対立を見ていると、天皇を宮内庁と内閣とが奪い合っているように見える」と述べたのを受け、志位氏は次のように述べました。

 志位 先ほど「奪い合いなのでは」という話がありましたが、私はさっきいったように、国事行為はもとよりですけれども、国事行為以外の行為についても政治的性格を与えちゃいけないというのが、憲法の定めるところだと(思います)。私は「1カ月ルール」というのは、そのためのそれなりのルールだったと思うんですよ。それなのに今回、内閣が関与することによって政治的性格を与えてしまった。そこに問題があります。

自民党政権時代をふくめ、“政治利用”の問題を吟味する必要がある

 谷垣氏が「この点は志位さんに同感だ。ルールをあいまいにすると、天皇の政治的利用がなし崩し的に始まる」と述べたのに対し、志位氏は次のように述べました。

 志位 谷垣さんが「(志位さんと)一緒だ」といわれましたが、これまでの自民党政府だって、いろいろな政治的関与や政治的利用をやってきたケースがあるだろうと思います。「1カ月ルール」の問題でも、それがきちんと本当に厳格に守られていたのか。そこは吟味してみる必要があると思います。

多数の日本国民は恒久平和などを希求した

 さらに、亀井氏は、「規定はないけど元首だ」と発言。これについて志位氏は次のようにのべました。

 志位 日本国憲法では、天皇を元首とは認めていません。絶対に無理です。政治的権能をもたない元首などありえないです。あえて元首というなら内閣総理大臣が元首の役割を果たしているわけですから。

 議論が憲法問題に移り、田原氏は、憲法を起草したのも自衛隊をつくったのも米国だと指摘し、「日本の主体性は何もないのではないか。志位さんにききたい」と質問。

 志位 日本国憲法を起草したのは確かにGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)だったという事実はあるでしょう。しかし、あの時、民主主義や恒久平和、基本的人権というのは、やはり日本国民の圧倒的多数の希求であったのです。

 田原 かつてはそういったけど、共産党は自衛隊を認めているでしょ。

 志位 自衛隊を認めてはいないですよ。自衛隊は違憲の軍隊だということには変わらない。ただ、すぐになくせない、段階的に国民の合意のもとでなくしていくというのが私たちの方針です。

 谷垣総裁は、「新しい憲法を考えなければいけない時期にきている」と改憲を主張しました。

沖縄・普天間基地問題

「移設条件つき返還」から抜け出し、「無条件撤去」の立場で交渉を

 番組は最後に、沖縄県の米軍普天間基地問題を取り上げ、谷垣氏が、同県名護市辺野古の新基地建設、海兵隊8千人のグアム移転、という従来の自公政権の立場を改めて表明。「抑止力を維持するのが日米間の合意だ」と発言しました。

 田原氏が、「普天間基地は多分グアムに移転すると思っていたが、鳩山首相はグアムじゃないと言った」と質問。福島氏が、「グアムは非常に有力。明日から基本政策閣僚委員会のもとで3党でしっかりと議論する」と答えると、田原氏が、「ものすごく無責任だ」と非難する一幕がありました。

 菅氏は、普天間の問題は、「日本、米国、沖縄、そして3党の4元方程式だ。もう一回、多少時間をかけ合意を形成していかなければ」と発言。志位氏は問題の根源がどこにあるか解明しました。

 志位 これには二つの問題があります。(一つは)結局、“移設条件付きの返還”という路線から新政権がまだ抜け出せないということです。“移設先がなければ返還はない”というセットになっています。しかしもともと、(沖縄県民は)普天間基地というのは“無条件返還”をずっと求めてきたのです。それが1996年のSACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)合意で、「県内移設」というやり方を持ちこんだため、13年間基地が動かなかった。

 田原 もともと、普天間は無条件撤去ということ?

 志位 そうです。“移設条件付き”という立場から抜け出し、無条件撤去というところにいかないと問題は解決しません。

米海兵隊は「抑止力」ではなく「侵略力」

 さらに志位氏は問題の二つ目を説明しました。

 志位 (普天間問題に)なぜ結論が出せないのかというと、鳩山さんが「抑止力を考えると」ということを言っています。これが最初にでてくるのです。つまり海兵隊は、日本の平和と安全のための「抑止力」になっている、という“呪縛(じゅばく)”があるのですよ。

 しかし、沖縄の海兵隊はそういう役割を果たしているのでしょうか。ベトナム戦争、アフガニスタン戦争、イラク戦争、ファルージャの虐殺に真っ先に殴りこんでいる部隊が海兵隊じゃないですか。これは「抑止力」ではなく「侵略力」です。

 田原 だから海兵隊は撤退しろと?

 志位 「抑止力」の“呪縛”から解放され、普天間基地の無条件撤去の立場にたたないと問題は解決しません。

 谷垣氏は、「志位さんがおっしゃったように、抑止力をどうみるかがポイント」とのべたのにたいし、志位氏は「一体、何を抑止しているのか」と提起。 福島氏が、「抑止力、抑止力といって、沖縄に75%もの基地を押し付けてきた」とのべたのに対しても、志位氏は「それ(抑止力)は鳩山さんもいっていることではないか」と批判しました。



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