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2009年12月21日(月)「しんぶん赤旗」

パチンコ店ATM

金融規制緩和の陰で

利用者保護のルール必要


 客に過大な資金を使わせる危険があると指摘されるパチンコ店内銀行ATM(現金自動預払機)設置事業。この危うい事業がすすめられた背景には、金融規制緩和の陰があります。

「ニッチ」をねらう

 「ニッチ(すき間)な部分をねらったんです」―パチンコ店内ATM設置事業をすすめるトラストネットワークス(東京・中央区、竹内理社長)の広報担当者は、得意げに話しました。

 コンビニエンスストアやショッピングセンターなどへのATM設置がすでに飽和状態にあるなか、あえてパチンコ店内という市場で、新しいATM事業を起こそうとしたのです。

 本紙報道などで批判が強まっていますが、同社や親会社のインターネットイニシアティブ(IIJ、東証1部上場)は、「むしろパチンコ業界の健全化に資する」と反論してきました。

 「パチンコホールの周辺にあるサラ金の無人機で借金をするよりは、『制御』された店内ATM(引き出し限度は1人1日3万円まで、貸し越し機能なしなどの制限があることを指す)で現金を下ろしたほうが健全だ」(トラスト社広報)という理屈です。

 本紙は、トラスト社の提携銀行に、これと同じ見解に立っているのかを問い合わせました。同行は「パチンコ店内ATMは当初のイメージとは違うものだった」としたうえ、撤退の意思を表明しました。

すべての機関黙認

 パチンコ店内ATMについて金融庁監督局は「ATM設置場所について届け出などは必要ない」といいます。「全国キャッシュサービス」(MICS=ミックス)を通じ、パチンコ店内ATMと日本中の金融機関を結んだ全国銀行協会は、「設置場所は個別の銀行の経営判断で、指導する立場にない」としました。

 さらに警察は、風営法にもとづき、パチンコ店からATM設置の届け出を受けながら、なんの指導もしていません。

 関係する機関はすべて、規制ではなく黙認の態度をとっていました。

 日本では1980年代まで「銀行行政とは店舗行政である」といわれました。大蔵省が銀行店舗の設置場所、設置数、営業時間などまで厳しく規制することが当たり前でした。

 その後、累次の規制緩和で、こうした規制は取り払われ、銀行の経営判断にすべてが委ねられるようになりました。

 金融庁の金融審議会では昨年5月から今年1月にかけて、ある議論が重ねられました。IT関連の新興企業が新技術を使って開発した新しい金融決済サービスと「利用者保護」のかねあいをどうするか―についてです。議論の方向はもっぱら、いかに規制を無くすかというもので、「当然払うべき注意も払わない人まで全部保護するのか。一定の健全な市民としての注意力や責任を前提とした上での利用者保護をいうのか」という学者の委員の発言で、報告書から「利用者保護等を重視し」という文言が削られました。

 この論理でいけば、パチンコ店でATMを使い「のめりこみ」に陥る客など、保護に値しないということになります。「自己責任」論で、もうけ第一の企業の行動を許すだけです。

 すでに、労働分野では「規制緩和万能」論の破たんが明白です。金融の分野でも、銀行や事業者のモラルまかせにするのではなく、必要な法的、社会的ルールをつくることが求められています。


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