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2009年12月3日(木)「しんぶん赤旗」

第25回党大会決議案の用語解説(下)


第3章(11)

一国覇権主義

 「覇権主義」とは、自国の影響力拡大のために、軍事的、経済的、政治的に強大な力にものをいわせて他国に介入し、他国の主権を侵害・支配することです。

 1992年9月の第7回中央委員会総会(第19回党大会)は「ソ連の崩壊によって、世界の情勢は、アメリカとソ連の二つの覇権主義が対抗し合う情勢から、世界がアメリカだけの覇権主義、アメリカの『一国覇権主義』の危険に直面する」情勢になったと指摘しました。

 一方、米ソ対決の重石がとれたことで、イラク戦争に米国の従来の同盟国の多くが反対したように、米国はその求心力を急速に失い、国際舞台で孤立するようになりました。

国連憲章にもとづく平和の国際秩序

 人類は、二つの世界大戦の悲惨な体験から1945年に国際連合を創設し、平和の国際秩序の建設を世界的な目標として提起しました。国連憲章は、武力の行使や威嚇(いかく)の原則禁止、紛争の平和解決をはじめ世界の平和秩序のルールを定めています。

 いま、軍事同盟に代わって、東南アジア諸国連合や南米諸国連合など、外部に敵を求めない平和の地域共同体が豊かな広がりをみせており、国連憲章にもとづく平和の国際秩序をめざす動きが大きく発展しつつあります。

第3章(13)

東南アジア諸国連合(ASEAN)憲章

 ASEANの憲法にあたるもの。加盟10カ国すべてが調印・批准したことで2008年12月に発効しました。

 憲章はASEANの目的として、平和・安全の維持、協力の促進、非核兵器地帯の維持、公正、民主、調和の保障、繁栄・経済統合と貧困の削減、格差の縮小、人々の福祉と暮らしの向上などを掲げ、主な原則として、主権尊重と内政不干渉、侵略・武力行使の拒否と紛争の平和解決、民主主義の原則支持と基本的人権の尊重、国連憲章と国際法支持、多様性の統一と異文化、異宗教の尊重などをうたっています。

 憲章の発効により、ASEANはEU(欧州連合)と同様に法人格をもつ地域機構に移行。意思決定はコンセンサス(全会一致)を基本原則としますが、コンセンサスが得られない場合、首脳会議で決定方式を決めます。

東南アジア友好協力条約(TAC)

 ASEANが1976年の第1回首脳会議で採択した条約。国連憲章、バンドン会議(1955年のアジア・アフリカ会議で採択)にのっとり、独立、主権、平等、領土保全の尊重、内政不干渉、紛争の平和解決と武力の不行使などを原則としています。

 1987年にASEAN域外の国々に開放され、ASEAN全加盟国の同意を得て、TACに加入できることになりました。ASEAN諸国と国境を接するすべての国、過去に同地域を侵略・支配した米国、中国、日本、フランスなどを含めTAC加入国は26カ国。EU(欧州連合)の加入も基本的に同意されており、EUの加入が実現すれば、TAC加入国はEU加盟諸国を含め52カ国になり、世界人口の68%を占めることになります。

 TACは武力の不行使、紛争の平和解決の精神で貫かれており、アジアに平和の流れを強める重要な役割を果たしてきました。TAC加入は東アジア首脳会議参加の条件の一つとなっています。

SCO、CICAなど何層にもなる多様な地域共同

 SCO(上海協力機構、2001年6月発足)には中国、ロシア、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、タジキスタンが加盟し、インド、イラン、パキスタン、モンゴルがオブザーバー参加。首脳会議のほか経済、文化、治安など各分野の閣僚会議を開き、この地域での協力を具体化しています。事務局は北京。

 CICA(アジア相互協力・信頼醸成措置会議、2002年6月に初の首脳会議)には上記の国々に加え、パレスチナやイスラエル、韓国、ベトナムなど計21カ国が加盟し、日本など6カ国がオブザーバー。アジア総人口の9割をカバーしています。事務局はカザフスタンのアスタナ。このほか、「中央アジア地域経済協力」(CAREC、8カ国加盟)など複数の地域共同のとりくみがすんでいます。

南米諸国連合(UNASUR)

 南米12カ国すべてが加盟し、平和と発展をめざす自主的な地域共同体のこと。2008年5月の設立条約で、貧困一層と格差克服、持続的成長などを掲げ、社会保障や保健、教育、地域横断インフラ、地球温暖化防止のとりくみ、中小企業育成、金融統合など、経済・社会面での多様な共同を目指しています。

 また、核兵器や大量破壊兵器のない「多極的で均整のとれた公正な世界」の実現、主権の尊重と民族自決、民主主義と人権の尊重を共通理念として、対話による問題の解決を強調し、すでにコロンビアとエクアドルの紛争などの諸問題で、地域の自主的・外交的解決に力を発揮しています。

第3章(14)

G8、G20

 Gは「グループ、集団」を意味します。G8はアメリカ、イギリス、イタリア、カナダ、ドイツ、日本、フランス、ロシアの8カ国です。この8カ国が毎年、サミット(主要国首脳会議)を開催してきました。世界経済危機でG8の限界がいっそう明らかとなり、中国、インドなどの新興国も加えた枠組みづくりが始まりました。

 昨年11月、ワシントンでの金融サミットで新興国も参加したG20の枠組みができました。それは、G8にアルゼンチン、インド、インドネシア、オーストラリア、韓国、サウジアラビア、中国、トルコ、ブラジル、南アフリカ、メキシコの11カ国と欧州連合(EU)を加えたものです。

ワシントン・ コンセンサス

 コンセンサスはもともと「合意、意見の一致」という意味です。ワシントン・コンセンサスとは、アメリカ政府がワシントンにある国際通貨基金(IMF)と世界銀行と一緒になって、世界各国に「新自由主義」にもとづく政策をとるよう押しつけてきたことを指します。

 IMF、世銀から融資や支援を受ける国は、国民に痛みを与える財政政策や規制緩和、貿易自由化など、アメリカ好みの「新自由主義」の政策が押しつけられ、その結果、著しい経済混乱がおきるなどの弊害が生まれました。いまでは、世銀も一定の手直しを行っています。

第3章(15)

核不拡散条約(NPT)、2010年再検討会議

 米ロ英仏中の5カ国だけに核兵器の保有を認め、その他の国への核兵器の拡散を禁止している不平等条約。しかし、前文と第6条で核兵器廃絶に向けた真剣な交渉を義務づけており、条約の運用を再検討する国際会議が5年ごとに開かれることになっています。

 2000年の再検討会議では、「自国の核兵器廃絶を達成するという全核保有国の明確な約束」が合意されるという画期的な前進がありました。来年5月に開催される2010年の再検討会議では、この合意を再確認して、すべての核保有国が核兵器廃絶への現実的プロセスに参加することが求められます。

第3章(16)

アジア政党  国際会議

 アジアで活動する合法政党が与野党の区別なく参加する国際会議として、2000年にフィリピンのマニラで第1回が開かれました。その後、戦争、侵略、覇権に反対し、アジアと世界の平和を探り、協力・交流をすすめる場として発展しています。

 ほぼ2年ごとにおこなわれ、日本共産党の代表は、第2回のタイ・バンコクでの会議(02年)から参加。04年の中国・北京では日本共産党の不破哲三議長(当時)が「戦争のないアジア、戦争のない世界をめざして」とのテーマで、06年の韓国・ソウルの会議では志位和夫委員長が「平和のアジア共同体をめざして」とのテーマで、それぞれ発言しました。

第4章(18)

「四つの原点」にもとづく活動

 選挙活動の「四つの原点」は、選挙勝利をめざして有権者との結びつきを広げ、強める法則的な活動方向を示したものです。

 (1)国民の切実な要求にもとづき、日常不断に国民のなかで活動し、その利益を守るとともに、党の影響力を拡大する。

 (2)大量政治宣伝、対話と支持拡大を日常的におこない、日本共産党の政策とともに、歴史や路線を含む党の全体像を語り、反共攻撃にはかならず反撃する。

 (3)「しんぶん赤旗」の役割と魅力を大いに語り、機関紙誌の読者拡大をすすめ、読者との結びつきを強め、党を支持する人びとを広く党に迎え入れる。 

 (4)さまざまな運動組織・団体のなかでの活動を強め、協力・共同関係を発展させる。日本共産党後援会を拡大・強化する。

「政策と計画」

 支部が責任を負う職場、地域、学園を“どう変えるのか”を示した政治目標や、その実現に向けた活動の計画のことです。次の全国選挙での得票目標を決めることも大切な内容の一つです。

 「政策」をもつとは、責任を負っている職場、地域、学園で、国民がどんな切実な要求をもっているかをつかみ、その実現のためにどういう行動をおこすかを明らかにし、実践することです。

 「計画」をもつとは、政治目標や国民要求を実現するうえで、どういう力をもった党が必要かを目的意識的に明らかにし、党を質的に強め、党員と読者を増やすとりくみをすすめることです。

第4章(21)

居場所づくり

 いま、若い世代は雇用破壊や高い学費、競争とふるい落としの教育などにより、苦しみを「自己責任」と思わされ、生きづらさを抱えています。民青同盟は、若い世代の悩みをなんでも語り合え、一人ひとりの声にこたえて学び、行動する「居場所」をつくることを大切にしています。

 民青同盟は第34回全国大会(11月)で、この間の何よりの確信は「居場所を力に、青年の願い実現へ」をつかんだことだとしました。「居場所」づくりが「青年の連帯をきずき、成長を支えあい、行動へふみだす確かな力」(大会決議)となり、要求運動や学ぶ活動、組織づくりなどの活動を豊かに発展させ、前進への芽が生まれています。

補助指導機関

  地区委員会および都道府県委員会が、経営や地域(区・市・町村)、学園に複数の支部がある場合にもうける補助的な指導機関です(党規約第18条)。第24回党大会では、自治体活動に的確に対応するとともに、党活動、党建設を前進させるために、補助機関をつくり、地区機関の体制強化をはかることを探求していくことが提起されました。その構成員は、地区委員会が招集する支部の「代表者会議」で選挙・選出します。

 補助指導機関は、全国的な課題だけではなく、職場労働者や地域住民の要求実現をするための努力をしています。また、日常的に支部を基礎に、「綱領を語る集い」の開催、党勢拡大、「党生活確立の三原則」(支部会議に参加する、「しんぶん赤旗」日刊紙を読む、党費を納める)の確立、などをすすめる援助をしています。

財政活動の「四つの原則」

 (1)党費(2)機関紙誌等の事業収入(3)個人からの寄付(4)節約・支出改善の努力――を財政活動の「四つの原則」といいます。党員が納める党費、「しんぶん赤旗」をはじめとする機関紙誌の購読料、支持者からの個人寄付という浄財のみによって党の活動資金をまかなうという、清潔で国民に依拠した党財政のあり方を示すものです。三つの収入と節約・支出改善という収支両面からの努力によって党財政の確立・強化をはかるという財政活動の方針の基本が示されています。

 この原則は、第7回党大会(1958年)以来、半世紀にわたる全国の党組織の実践のなかからくみだされた教訓を定式化したもので、日々の活動のなかで貫くことが大切です。

第5章(22)

利潤第一主義

 資本家は、もっている金額を増やし、労働者を働かせてしぼりとるもうけ(剰余価値)を最大限に手に入れる目的で投資します。そのために、賃金を安くし、労働時間を長くし、労働強度を引き上げようとします。

 こうして得られる、より大きなもうけが積みあがって、資本は増殖していきます。それがうまくいかないと破産したり、他の資本に飲み込まれたりするため、資本家・経営者は、いや応なく競争に駆り立てられ、人間や自然を犠牲にしてでも、利潤獲得・資本増殖を最優先するようになります。これが「利潤第一主義」であり、それは社会発展の歴史のなかで資本主義の段階だけがもつ特徴です。

金融危機と過剰生産恐慌

 資本は剰余価値を求めて生産拡大に突進し、同時に労働者の賃金を抑えようとする本性をもっています。そのため、労働者階級の賃金が低いと商品を買う社会の力も大きくならず、商品は売れにくくなります。

 それを「解決」しようと、消費者に返済能力を超える借金をさせて住宅などを売りつけ、その貸付金債権を組み込んだ金融商品を世界中に売りさばく仕組みがアメリカで発展しました。その結果、住宅ローンの返済行き詰まりが多発し、金融商品の決済が連鎖的に破綻(はたん)する金融危機が起こりました。その土台には、消費者の支払い能力を超えて生産を続けるため、景気過熱から突如、販売不振に陥る過剰生産恐慌があります。

ソ連崩壊

 ソ連はレーニン死後、スターリンの指導下で人民を抑圧する官僚主義・専制主義の社会に変質し、他民族への侵略と抑圧という覇権主義の道にすすみ、バルト三国を併合したり、東ヨーロッパ諸国を従属下におき、アフガニスタンなどを侵略しました。これらの矛盾が激しくなって、ソ連は1991年に崩壊しました。

 それは、社会主義の失敗ではなく、社会主義の道から離れ去った覇権主義と官僚主義・専制主義の破産でした。これは、“米ソ対立”の構造にしばられてきた各国の自主性を促し、世界の革命運動が健全に発展する新しい可能性を開く意義をもちました。



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