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2009年12月1日(火)「しんぶん赤旗」

第25回党大会決議案の用語解説(上)


第1章(2)

「靖国」派

 日本の侵略戦争を「自存自衛の戦争」と正当化し、戦前の天皇中心の国家体制の復活をめざす政治潮流。「靖国神社」とその付属施設「遊就館」が、その宣伝普及センターとなっていることから、こう呼ばれます。日本会議(会長・三好達元最高裁長官)と、これに連携する日本会議国会議員懇談会(会長・平沼赳夫衆院議員)がその中心です。

 小泉純一郎元首相は2001年から6年連続で「靖国神社」参拝しました。06年、安倍晋三元首相は「戦後レジームからの脱却」「任期中の改憲」を掲げましたが、07年の参院選で安倍自民党は惨敗し、政権を投げ出しました。09年の総選挙では、改憲・靖国派といわれる政治家が大量に落選し、国民の厳しい審判を受けました。

歴史教科書問題

 「新しい歴史教科書をつくる会」のメンバーが執筆編集した中学校の歴史教科書は、日本の侵略戦争を「自存自衛のための戦争」「アジア解放の戦争」と正当化して描いています。2001年に初めて文部科学省の検定に合格。国内からもアジア諸国からも批判の声が上がり、各地で採択反対の運動が広がりました。「つくる会」の分裂に伴い来年度用から扶桑社版と自由社版の2冊が発行されます。来年度の使用見込み冊数は扶桑社版と自由社版合計で2万1269冊。中学歴史教科書全体に占める割合は約1・7%となり、4年前(前回採択時)の約0・4%から大幅に増えています。

第1章(4)

新自由主義

 市場を万能とみなす経済思想。「市場競争」の中で、効率的に利益を上げることができるかどうかで、人々の活動を評価するため、社会保障分野など国民生活に関連する政府機能の縮小や規制緩和万能路線を特徴としています。

 新自由主義が世界的な潮流となっていったのは、多国籍企業の世界的展開が背景にあります。新自由主義の下では、資本主義の本性と害悪がむき出しになります。アメリカ発の世界的な経済・金融危機の元凶となった投機マネーの暴走を野放しにしました。貧富の格差が拡大し、途上国の貧困が悪化。世界的な批判を浴びています。

第2章(6)

受益者負担主義

 「受益者負担主義」とは、社会保障の給付などは「サービス」であり、「利益」を受ける国民が費用を負担すべきであるという考えです。国や大企業の社会保障負担を軽減するために持ち出されてきました。国民年金、国民健康保険や介護保険などの高い保険料や、医療、介護、障害者福祉などの重い「利用料」などを正当化します。

 しかし、憲法25条はすべての国民に「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利(生存権)」を保障し、その拡充にむけた国の責任も明記しています。国民の権利をまもるべき社会保障制度の利用を「受益」ととらえて重い負担を求める考えは、社会保障史の到達点に反するものです。

信用保証制度

 中小企業は、大企業に比べ担保力などが乏しいため、銀行がなかなか貸してくれないのが実態です。信用保証制度は、この状態を改善するために、公的機関である信用保証協会が保証を行うことで中小企業貸出の円滑化を図る制度です。現在、中小企業の4割が保証付き融資を受けています。2007年10月から、部分保証(責任共有)制度が導入され、一部の例外(緊急保証制度)を除いて、保証協会による保証割合が100%から80%に下げられました。直ちに100%保証に戻すともに、緊急保証制度の要件緩和など信用保証制度の抜本的拡充が必要です。

ミニマム・アクセス米の「義務的」輸入

 1995年発足のWTO(世界貿易機関)の農業協定は、輸入実績がほとんどない農産品について、低関税による輸入枠を設定するよう各国に求めました。これが、ミニマム・アクセスと呼ばれる制度で、わが国では米が該当します。

 日本政府は、この枠の全量輸入が「義務」として、年間消費量の1割近い77万トンもの米を輸入し続け、国内米生産を脅かしてきました。しかし、日本共産党の国会質問で政府も認めたように、協定上は「義務」ではなく、輸入機会の提供を意味するにすぎません。実際、欧米諸国では「義務」輸入とはされず、輸入量がその枠に達しない品目があります。

日米FTA

 FTAとは、Free Trade Agreement(自由貿易協定)の略語で、日米FTAは、日米間で貿易を原則自由化=関税を相互に撤廃する協定のこと。

 農産物輸出大国であるアメリカとの間でわが国がFTAを締結すれば、アメリカから農産物が大量になだれ込み、農業が壊滅的な打撃を受けるのは必至です。コメ生産量の82%、穀類では48%が激減するという試算もあります。先の総選挙で民主党が「日米FTAの推進」を公約に掲げましたが、国民の厳しい批判を受けたのはそのためです。日米FTAと農業再生との両立はありえません。

日豪EPA

 EPAとは、Economic Partnership Agreement(経済連携協定)の略語。FTAは2国間または多国間で貿易を自由化する協定ですが、EPAは、それにとどまらず投資や技術協力、人的交流など広範囲の経済連携が含まれています。

 日豪EPAは、自公政権が07年から交渉を開始し、民主党中心の新政権もそれを継続しています。穀物や畜産物は、オーストラリアが圧倒的な競争力を持っており、EPAが成立すればわが国の小麦生産は99%、乳製品44%、牛肉56%、それぞれ減少する、と試算されています。日本農業に重大な打撃を与えるものとして、日本共産党は交渉の中止を求めています。

思いやり予算

 本来、日本側に負担義務がないのに、米軍基地従業員の給与や施設建設の費用分担に応じて日本側が負担している予算。「米軍に思いやりの精神を」として名付けられました。

 1978年度62億円から2009年度1973億円と32倍に大膨張しました。思いやり特別協定では、バーやゴルフ場の基地従業員給与も日本が負担することを取り決めています。施設建設では、豪華な米軍住宅やボウリング場、ダンスホール、バーなどの娯楽施設の建設までおこなわれています。国民の医療・福祉予算を大幅に削る一方で思いやり予算の拡大は、国民的批判を浴び、全廃への要求が強まっています。

日米核密約・事前協議条項

 日米安保条約第6条にもとづく事前協議を骨抜きにして核兵器を日本に持ち込めるようにした日米間の秘密合意。

 米軍の核兵器の持ち込み(イントロダクション)と戦闘作戦行動について日本政府と事前協議をおこなうことを義務づけましたが、核兵器を搭載した米軍艦船や航空機の寄港・飛来(エントリー)を事前協議の対象としないとしました。

 また、朝鮮有事の際、在日米軍が「国連軍」として出撃する際には対象としないと合意しました。また、有事の際、沖縄に核兵器を持ち込めるなどの密約があります。鳩山内閣は、調査公表を約束していますが、公開・廃棄が求められています。

第2章(7)

日米地位協定

 安保条約第6条にもとづいて、米軍基地や米兵の特権を定めた不平等で従属的な協定。アメリカが日本全国どこにでも米軍基地を置くことを定め、民間港湾や民間空港に自由に出入りできるとしています。

 また、米軍人や家族などの軍属が所得税や住民税などの税金を免除されることを規定しています。刑事裁判権では、米軍人の「公務中」の事件・事故についてアメリカ側に裁判権があることを定めています。「公務外」で日本側に裁判権がある場合でも日本が裁判権を放棄する「密約」が存在すると指摘されています。実際、米軍犯罪の81%が不起訴となっています。

年次改革要望書

 アメリカにとって都合のいい政治・経済システムを日本に押しつけるための仕組み。1994年から始まり、15年も続いています。

 郵政民営化も、この仕組みを通じて米政府から要求されました。具体的には、(1)日本の政治・経済の「あるべき改革」の中身について、毎年秋、米政府が文書で注文をつける、(2)この注文書に書かれた「改革」を日本政府が実行に移す、(3)その達成状況を米政府がつぶさに評価し、翌年春、米議会に報告しています。世界でも異常な他国への介入の制度化であり、「きわめて異常な国家的な対米従属の状態」(党綱領)の象徴の一つです。

6カ国協議

 北朝鮮の核問題解決のために、韓国・北朝鮮と日米中ロの6カ国によって2003年8月からおこなわれている多国間協議。当時、米国は北朝鮮をイラン・イラクとともに「悪の枢軸」と呼び、イラクに軍事侵攻しました。しかし、問題の外交的解決をめざす中国をはじめとした周辺諸国の努力もあり、米国は北朝鮮問題では「軍事一本やり」ではない対応をとりました。

 05年9月に採択した共同声明では、北朝鮮がすべての核兵器・核計画の放棄を約束する一方、米韓は朝鮮半島に核兵器が存在しないことを確認しました。また、米朝、日朝の国交正常化への措置を約束し、国連憲章の順守と、朝鮮半島の恒久的平和体制確立、6カ国による北東アジアでの安保協力の探求などを掲げています。

第2章(8)

国際労働機関(ILO)

 1919年に結成。第二次大戦後、国連の専門機関となり、183カ国が加盟。他の国際機関には見られない三者(政府、労働者、使用者)構成主義を採用し、労働者の代表が政府代表と同等の地位において意思決定に参加しています。

 今日までに188本(うち5本は失効)の条約を採択。ILO条約・勧告は、国際労働基準として位置づけられています。条約・勧告の実施を常時監視する常設的監視制度をもっているのが大きな特徴。「ディーセント・ワーク(人間らしい労働)」の実現を最重要課題にかかげ、貧困・格差問題の解決を重視しています。

欧州連合(EU)

 ヨーロッパの政治的経済的統合をめざして設立され、加盟国は、27カ国。とくに1990年代以降、社会・労働分野でのルールづくりを積極的にすすめ、全加盟国に対して目標達成を義務づけるEU指令を多数採択しています。

 ヨーロッパでは労使関係が社会的に見て重要なものとして制度化されており、この労使協定を土台にしたEU指令は、パートタイム労働、有期労働契約、派遣労働など六つにのぼります。このほか、男女均等待遇や労働時間、解雇規制でも指令が採択され、基本権憲章や社会憲章などを含め労働者の権利を保障しています。

日本経団連

 約1600にのぼる大企業や業界団体などが結集する「財界の総本山」。2002年5月に、経済団体連合会(経団連)と日本経営者団体連盟(日経連)が合流して日本経団連となりました。

 旧日経連は1995年5月、現在の深刻な雇用不安を招く元凶となった提言「新時代の『日本的経営』」を発表するなど、利益第一主義の立場から「ルールなき資本主義」の源となってきました。その日経連と経団連が合流したことで、政治も政策も、いっそう財界主導の色彩が強められました。とくに04年以降は、自民、民主、公明各党と会合をかさね、とくに、民主、自民両党との間では「政策を語る会」を定期的に開催。財界の立場から政党を品定めする「政策評価」という名の“通信簿”をつけ、その結果を企業・団体献金に反映させるという手法をとってきました。2009年は政権交代のため「政策評価」をとりやめました。

第2章(9)

経済同友会

 1300人余の財界人・企業人が参加している個人加盟の経済団体(1946年に発足)。

 日本経団連が大企業や財界全体の意思や要求をまとめているのにたいし、経済同友会は、一人ひとりの経営者や財界人としての立場から、数多くの「政策提言」を発表しています。その内容は、税制のあり方や社会保障から、選挙制度、道州制、憲法問題などまで、政治・経済・社会のあらゆる分野に及んでいます。2000年度以降のこの10年間で発表した提言・意見書・報告書は250件以上となっています。

 「マニフェスト選挙」や「国会改革」論にみられるように、経済同友会の提言は、現在の政権党である民主党にとくに大きな影響を与えています。

内閣法制局

 内閣に設置されている行政機関の一つで、内閣の日常業務や法案・条約案などについて、法制面から意見を述べたり、審査したりするなど、内閣を直接補佐しています。内閣法制局長官は、内閣が任命します。

 従来、各省庁の官僚は「政府委員」として国会答弁にたっていましたが、1999年の「国会改革」で原則的に廃止されました。しかし、内閣法制局長官は、人事院総裁や公正取引委員会委員長など、他の3人とともに「政府特別補佐人」としてひきつづき国会答弁に立つことになりました。民主党の小沢一郎幹事長(同党政治改革本部長)は、4人の政府特別補佐人のうち、内閣法制局長官だけを「削除する」と明言しています。

21世紀臨調

 「21世紀臨調」の正式名称は「新しい日本をつくる国民会議」です。

 メンバーは2009年11月現在で205人。所属は大別すると、多い順から(1)メディア関係者(74人、運営委員だけなら73人)、(2)学者(37人)、(3)弁護士などの識者(37人)、(4)財界人(30人)、(5)自治体首長(22人)、(6)労働組合関係者(5人)となっています。現在の体制は2003年7月からスタートしましたが、その前身は1992年4月に発足した「民間政治臨調」(政治改革推進協議会)です。

 この運動体は、小選挙区制を「国民運動」の形で導入するために創設され、小選挙区制導入後は、2大政党制とマニフェスト選挙の実現を至上命題としてきました。



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