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2009年11月25日(水)「しんぶん赤旗」

主張

科学予算削減

基礎研究と若手支援つぶすな


 行政刷新会議の「事業仕分け」で科学研究予算の廃止や大幅削減が相次ぎ、総合科学技術会議の有識者議員や日本学術会議、9大学の学長、さまざまな学会や研究者団体、若手研究者から厳しい批判の意見書や声明が出ています。

 海外の有力な科学誌も「予算削減は科学による収穫も奪う」と批評しています。

計り知れない損失に

 文科省所管の競争的資金の半分強が「事業仕分け」の対象となり、そのほとんどが「予算縮減」や「見送り」となりました。

 新たな革新的技術を開拓し、気候変動予測などの究明の力となる「次世代スーパーコンピューター」、和歌山毒カレー事件で使用されたヒ素の科学鑑定に威力を発揮した大型放射光施設「スプリング8」、地震発生の究明にも資する「深海地球ドリリング」、新型インフルエンザ対策として期待される「感染症研究国際ネットワーク推進プログラム」など、温暖化対策や国民生活にも貢献する基盤的研究も含まれています。

 基礎研究を振興する「科学研究費補助金」(科研費)や若手と女性研究者への支援に大なたを振るおうとしていることも重大です。

 科研費は、研究者の自由な発想による申請に対し多くの研究者による審査に基づいて配分され、日本の学術発展に多大な貢献をしてきました。日本のノーベル賞研究のほとんどが科研費から生まれたといっても過言ではないといわれており、予算の縮減は日本の基礎研究の衰退に直結します。

 見逃せないのは、若手研究者支援を“過保護だ”として縮減しようとしていることです。安定した研究ポストが削減され、ポスドク(任期付き研究員)の多くが深刻な就職難に直面している下で、現在の支援策は不十分ながらも研究を保障する「オアシス」の役割を果たしています。iPS細胞(人工多能性幹細胞)に象徴される先端的研究の多くを支えているのは大学院生やポスドクです。彼らは研究開発の重要な担い手です。研究事業が相次いで縮小し、若手研究者支援も細るなら、大量のポスドクが失業しかねません。

 科学研究は人類に新しい知見をもたらし、経済発展や国民の健康で豊かな暮らしを支える基盤となっています。21世紀の科学を担うべき若手研究者が大量にリストラされれば、日本社会にとって計り知れない損失となります。

 関係者から“費用対効果で評価されれば長期的視点に立って研究する場が日本からなくなる”との憂慮と批判が燎原(りょうげん)の火のように広がっています。ある学会の声明が“民主党への期待は大きな失望に変わった”と言うのも当然です。

 これでは自公政権が進めた「行政改革」の名による基礎研究予算の削減と何ら変わりません。

科学者の声尊重して

 鳩山政権は、研究者らの意見に真摯(しんし)に耳を傾け、乱暴な「事業仕分け」の評価を来年度予算に反映させることはやめるべきです。

 科学者の声を尊重し、科学、技術の多面的な発展をうながす政策への転換こそ急務です。

 5兆円に上る軍事費や国民の血税を分けどる政党助成金、「もんじゅ」の大事故で破たんが明白な「高速増殖炉サイクル研究開発」や大企業に投入する技術開発補助金こそ削減すべきです。


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