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2009年11月24日(火)「しんぶん赤旗」

児童虐待

増える相談 足りぬ人員

1人100件以上担当も

大阪


 児童虐待に関する相談や通告が今年度上半期で、大阪府では前年度約1・2倍の1731件にのぼったことが分かりました。大阪市では約1・7倍の693件。府市ともに、西淀川区で今年4月、小学4年女児(当時9歳)が死亡した虐待事件以降の関心の高まりが背景にあるとみています。虐待の早期発見へ相談をと呼びかける半面、慢性的な人員不足なのが、第一線で対応する児童福祉司です。(松田大地)


 「負担は増える一方。このままでは燃え尽きてしまう」―。府内に6カ所ある府子ども家庭センターに勤める虐待対応の児童福祉司が声を落とします。「担当ケースは100件を超えます。帰宅中の夜10時すぎに携帯電話が鳴り、一時保護などを行う緊急出動のため戻る。翌朝までかかる場合もあります」

 部下の助言・指導役の総括主査らも「常に現場に出ている」ため「ゆっくり相談する時間もなく、知識や経験の蓄積を学びづらい」と危機感を強めます。

 子どもや家族との面接、学校や保育所からの情報収集、児童養護施設への入所手続きなどの膨大な書類の山…。府のセンター全体では、虐待対応課に児童福祉司38人を配置、大阪市の中央児童相談所(児相、平野区)の虐待対策室には10人配置されていますが、関係機関との調整担当などを除けば、地域担当の人員はさらに少なくなります。府では今年度、5人増員したものの、別の児童福祉司は「とても追いつかない。いつどこで誰が倒れてもおかしくない」とため息をつきます。

 厚労省の調べでは、虐待相談・通告件数は昨年度、全国で4万2662件と過去最高でした。府センターに、政令市の児相2カ所の件数を含めた府内全体の件数は4354。神奈川県に次ぎ、全国で2番目の多さです。

 府センターでは、相談・通告の半数近くが身体的虐待(44・1%)に関するもので、保護の怠慢・拒否(ネグレクト・40・1%)、暴言や無視による心理的虐待(11・5%)、性的虐待(4・2%)―の順に続きます。

 「この20年で虐待相談件数は約40倍に増えたのに、児童福祉司の数は倍にも増えていない」。こう指摘するのは、関西学院大の才村純教授(児童福祉論)です。国による児童福祉司の配置基準は2005年に改正されたものの、才村教授の調べでは、カナダやイギリスで児童福祉司1人当たりの担当ケース数が約20件(03年時点)なのに対し、日本は107件(07年時点)でした。「制度が異なるので単純に比較できないが、日本が格段に多いことは間違いない。(改正も)まだまだ焼け石に水という実態だ」と語ります。

 実際、06年末時点で児相137カ所のうち47カ所(34・3%)が、虐待対応に伴うストレスなどが原因で配置転換や休職になった職員がいると答えています。才村教授は「国が政令を改正し、児童福祉司の配置を手厚く抜本的に増やすことが第一だ」と指摘。その上で、「一般行政職からの配置転換もあるなど、児童福祉司の任用制度は緩い。専門性を高めることが重要だ」と話しました。


◇児童相談所全国共通ダイヤル0570(064)000(24時間対応・管轄相談所に転送するシステム)
◇大阪市の児童虐待ホットライン(0120)017285(24時間365日)



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