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2009年11月23日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

地域経済振興条例 各地で

行政、業者、住民 一体で

中小商工業研究集会で討議


 各地で、中小業者、自治体、住民が一体となって地域経済を立て直す取り組みが広がっています。「地域経済振興条例」制定運動はその一つです。今月初め、京都市で開かれた「第16回中小商工業全国交流研究集会」(同研究集会実行委員会主催)の「自治体施策」分科会でも真剣な論議・追求がおこなわれました。

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 条例の根拠は中小企業基本法です。(注)

 条例制定運動では各地の民主商工会が中心になっています。全国組織である全国商工団体連合会常任理事の瀬戸善弘氏は、「自治体施策」分科会の報告で「中小業者が、自分の地域(自治体)に住み、営業と生活を続けるためにも『地域経済振興条例』が必要だ」と指摘しました。そのうえで、条例は「一部の業者だけでなく全体の業者を引き上げることが重要であり、まちづくりを視野に入れないと地域経済の活性化ができない」と強調しました.

 研究集会で基調講演した京都大学の岡田知弘教授は「地域産業の実情にあった独自の産業政策を地方自治体が持つことが重要だ」と述べました。

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 この(地域経済)振興条例が各地で広がりを見せています。2005年以降25の自治体で制定されました。最近では大阪府吹田市、岩手県一関市、北海道釧路市などで制定されています。分科会では吹田市などから経験が報告されました。

 一関民主商工会の小野寺喜久雄さんは「条例案が7月の議会に提案され、9月には制定されてしまった。考えていた以上の早さで、住民、市長、議会の理解には時間がかかりそうだ」と笑いを誘いながら、条例制定の背景を語りました。

 行政が、地域経済の主体である地場中小業者の振興を軽視し、ひたすら誘致大企業に依存する経済運営をおこなってきたこと、NECやソニーなど誘致企業が撤退し、非正規労働者が大量解雇され、さらにハローワークの廃止などが進められてきた現状を告発し、「地域経済振興の重要性を認識させるためにも必要だった」と、条例制定の意義と共産党市議団とも連携し進めてきた運動を紹介しました。

 北海道帯広民商会長の志古田英明さんは、中小企業振興にとって信用金庫の役割が大きいことを発言。信金理事長が懇談で「役割は地域に貢献することが第一」であり、(預かった)地域のお金は地域のために使う、そのために相談体制も強化し、若い相談者が増えてきたという発言を紹介し、「こういう人たちと連携し、声を上げていくことが大事だ。黙っていたら地域はどんどん悪くなっていく」と強調しました。(金子義夫)


 〈注〉中小企業基本法第6条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、中小企業に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の区域の自然的経済的社会的諸条件に応じた施策を策定し、および実施する責務を有する


「起業・工業」担当  市に配置

吹田民主商工会 西尾栄一事務局長

地図

 大阪府吹田市は35万の人口と1万数百の事業所を擁する複合都市です。大阪万博の開催地であり、「福祉のまち吹田」として名が知られた都市でもあります。この吹田市で2009年4月1日、「産業の振興は、中小企業者の発展を基に推進されなければならない」とする「吹田市産業振興条例」(以下「条例」)が制定されました。

 「条例」の討議は「吹田市商工業振興対策協議会」で2007年8月から始まりました。商工会議所の皆さん、中小企業家同友会の皆さん、消費者代表の皆さん、そして、10年以上前から「地域経済振興条例」の制定を求めて提案活動を行ってきた吹田民主商工会(民商)の会員の皆さんの思いが重なって積極的な議論が展開され、3月市議会で、全会一致で採択されたものです。

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 「条例」は「産業の振興は、市が市民、事業者及び経済団体等との協働の下に産業の振興のための施策を行うことにより推進」することを基本理念に定めています。厳しい経済情勢のなかで精いっぱいの営業努力をしている中小業者を行政が後押しして「協働して」施策を行おうというものです。市が「必要な調査を行い、産業施策を総合的、計画的に推進する」こと、「必要な財政的な措置を講ずる」こと等も記されており、今後の施策展開に期待をもたせる内容となっています。また、大型店が「地域社会における責任を自覚」すること、大企業が「中小企業者との共存共栄を図る」ことを明記した内容ともなっています。

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 条例の制定に意欲的にかかわった吹田民商の皆さんは、中小業者が経済的な側面だけではなく、まちづくりへの参加など社会的な側面でも大切な役割を果たしている存在であるにもかかわらず、その地位が低いことをさまざまな運動を通して問題にして、産業施策の位置づけを改めるよう求めてきました。

 吹田市の商工予算は一般会計の0・5%しかなく、官公需の地元発注割合は毎年後退しています。

 「条例」の制定は、中小業者の経済的、社会的な役割を認め、系統的な施策展開を行うことを表明するものです。この2年間で、「産業労働室」が「産業労働にぎわい部」に昇格(2007年11月)し、「条例」もできて、ようやく、施策推進の基礎ができたと歓迎されています。

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 「条例」制定後、行政の推進体制が変更され、商業、起業・工業、農業、観光の部署と労働の部署に職員の配置換えが行われました。「起業・工業」担当ができたことは大きな前進であり、7月からは、この部門が「ビジネスコーディネーター派遣事業」をスタートさせています。民間への委託事業ですが、4人の企業OBの方が、すでに200を超える事業所を訪問して実態把握に努めています。

 そして、まもなく全事業所実態調査も行われます。その項目づくりも集団で討議して行いました。これらの調査を基に新たな施策展開が期待されているところです。



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