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2009年11月19日(木)「しんぶん赤旗」

主張

保育所の基準緩和

子ども犠牲は政治の責任放棄


 長妻昭厚労相は、認可保育所の国の最低基準を緩和し、待機児童が多い都市部で保育室の面積基準を自治体に委ねるなどの方針をまとめました。子どもの「詰め込み」を深刻化し、保育環境を悪化させるもので、父母、保育関係者からきびしい批判があがっています。

命と安全脅かす基準緩和

 もともと今の最低基準はきわめて低いものです。遊び、食事、昼寝を同じ部屋で行わざるをえず、廊下に布団を敷いている実態もあります。引き下げは一日の大半をそこで過ごす子どもの育ちに、重大な影響をもたらしかねません。

 最低基準は1948年に制定、憲法25条の見地から子どもの健康と健全な育成に必要な最低限度の基準とされました。当時は国民生活も貧しく、経済の進展、国民生活の向上にあわせ高められるべきものと位置づけられたのです。

 しかしこれまでの政府がこの努力を怠ったため、保育士配置が若干改善された以外は、今でも保育室面積は61年前のままです。厚労省の委託研究でも、諸外国と比べて面積、保育士配置とも低く保育室は少なくとも1・2倍以上に改善が必要だと指摘されています。

 参院予算委員会で日本共産党の小池晃参院議員は「安心して預けられるのか。子どもに犠牲を押し付けていいのか」と基準緩和の撤回を求めました。鳩山由紀夫首相は「時限的な話」「東京などわずかな地域」と弁明しました。これは国として子どもに保障すべき最低水準を守る責任の放棄です。

 一時にせよ守るべき基準に風穴をあけるなら、保育所を増やす展望が示されていないもとで今後さらなる緩和、引き下げの拡大につながる危険も指摘されています。

 しかも医務室や園庭、建物の耐火基準、避難設備などの最低基準は都市部に限らず国の基準自体を撤廃して、自治体が独自に定めるとしています。狭いうえに園庭もなく病気の子が休む医務室もない、防災設備も大きく後退した施設でどうやって子どもの生命と安全を守るのか。とうてい認められません。犠牲が出てからではとりかえしがつかないのです。

 そもそも保育所建設がすすまない主な原因はなにか。東京都社会福祉協議会保育部会の報告書(今年10月)は、一番大きな問題が「資金の不足」であり、国に財政支援の拡充、国有地の提供などを求めています。求められているのは基準の緩和ではなく、保育予算を抜本的に増やし、国が責任をもって保育所建設計画を示すことです。お金を出さずに基準緩和の詰め込みをすすめることほど、子ども犠牲のやり方はありません。

本格的建設への着手こそ

 民主党政権は「事業仕分け」で保育予算を取り上げ、国の責任を後退させ自治体や保護者の負担増につながる見直しを検討中です。そこでは「構造改革」路線にもとづく保育制度改悪を迫る場面もありました。予算削減と基準緩和、制度改悪が一体となれば、保育条件の大幅後退は避けられません。自公政治を退場させ、安心して子育てできる社会の実現を期待する、国民の願いに逆行するものです。

 子どもに犠牲をおしつけ、保育現場に大きな困難をもたらす最低基準緩和はただちに撤回し、保育予算を増やして、将来の女性の就労の広がりを展望した本格的な保育所建設にこそ着手すべきです。



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