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2009年10月12日(月)「しんぶん赤旗」

新政権の子ども手当

控除廃止の影響どうなる

民主党は説明を


 鳩山新政権が掲げる子ども手当はいつ、どのように実施されるのか。長妻昭厚生労働相は、15日に提出する概算要求に盛り込むよう指示したものの、制度創設のための法案提出は来年の通常国会に先送りする方向です。最近の世論調査では、子ども手当に賛成が57%、反対が39%で、反対が若干増えています(「読売」5日付)。子育てへの経済的支援の拡充を歓迎する一方、財源問題などで疑問も根強い世論の状況が現れています。


給付

所得制限はないけれど

 民主党が公約した手当額は、子ども1人につき月2万6千円、年間31万2千円です。所得制限を設けず、中学校卒業まで、すべての子どもに支給します。2010年度は半額で実施し、11年度から全額支給を目指しています。

 現行の児童手当は、3歳未満の子どもに月1万円、3歳〜小学6年生までの子どもに月5千円(第3子からは月1万円)の支給です(所得制限あり)。

 これは欧州諸国と比べても低い水準であり、子育てへの経済的支援の拡充は当然です。「子どもの貧困」が広がるなか、給付への期待もあります。

 しかし、新政権の案には見過ごせない問題があります。

財源 

控除廃止も3兆円不足

 最大の問題は、庶民増税と抱き合わせであることです。

 子ども手当の実施には年5・3兆円の財源が必要です。民主党は財源として(1)所得38万円以下の配偶者がいる場合の「配偶者控除」(2)所得38万円超76万円未満の配偶者がいる場合の「配偶者特別控除」(3)0〜15歳および23〜69歳の扶養親族がいる場合の「一般扶養控除」―を廃止するとしています。これは、8日から始まった新政府税制調査会での議論の焦点の一つです。峰崎直樹財務副大臣は10日、来年度から扶養控除を廃止する可能性を示唆しました。

 ただ、廃止したとしても、それで生まれる財源は1・4兆円。現行の児童手当の公費負担分約8千億円を加えても、3兆円余が足りません。

増税

負担増世帯900万試算も

 控除廃止による増税の影響について、民主党は、増税となる世帯は「夫婦のみの世帯で一方が家事専業の場合」で、「全世帯の4%程度」だとしています。また、増加額は「平均的な収入(437万円)」で「月額1400円程度(年額1・9万円)の見込み」と説明しています。

 しかし、同党はこれらの数字の根拠を明確にしていません。

 本紙は8月15日付で、負担増となる世帯は、高校生以上の親族を扶養する専業主婦世帯や23〜69歳の親族を扶養する共働き世帯なども含まれ、少なくとも600万世帯、全体の12%以上にのぼるとの試算を示しました。

 「日経」9月14日付は、全世帯の18%(約920万世帯)が負担増となり、その平均額は年額4万円という一橋大の高山憲之教授らの試算を紹介しています。

 民主党は、これらの指摘と自党の主張との違いについて、明確に説明すべきです。

 控除廃止は、国民の負担増を招くとともに、生計費非課税という税制の民主的原則にも反します。日本共産党は、増税と抱き合わせの実施には、反対しています。(坂井希)



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