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2009年10月11日(日)「しんぶん赤旗」

貧困ビジネスに批判

住民ら「悪質業者来るな」

地元への説明を偽る

東京・板橋「無料」宿泊所計画


 生活困窮者を食い物にする「貧困ビジネス」が社会問題となるなか、東京都内で持ち上がった「無料低額宿泊所」の建設計画に、地域住民から「悪質業者は来るな」「国・自治体が責任をもって住まいを確保すべき」だと声が上がっています。(田代正則)


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(写真)宿泊所建設予定地を案内する近隣に住む人たち=東京都板橋区

 問題となっているのは、特定非営利活動法人(NPO法人)やすらぎの里(中野区)が事業者となり、東京都板橋区で進められている宿泊所の建設計画。

 入所費用は、月に家賃5万3700円(生活保護の住宅扶助上限額)、食費4万5000円で、単身者世帯生活保護費約13万円の大半を徴収するといいます。

 やすらぎの里は当初、「3階建ての老人施設」を建てると近隣住民の一部に説明していましたが、途中で「5階建ての宿泊所」に変更。路上での立ち話や住民側からの問い合わせしか行われていないのに、板橋区には、区の要綱で定められた住民説明会を開いたと報告していました。

 宿泊所の部屋数も、住民には、37室(1室14平方メートル)で1室1人と答え、区には81室(1室7平方メートル)の建設案を示すなど、住民に偽って建設計画をすすめていました。

 住民たちは、「本当に社会的弱者を助けるなら、地元住民に説明し協力を求めるものでしょう。こそこそ建設を進めるのは信頼できない」と口々に話します。

 同法人は06年にも、大田区で虚偽の開設目的を説明されたと怒った地域住民の反対運動にあい、宿泊所の開設が中止になっています。

 建設予定地のすぐ近くに住む住民は、「住居のない人の支援は、民間丸投げにせず、国や自治体が責任をもってほしい。公営住宅の空き室を使ったり、民間アパートを借り上げて、自立して生活できるようにすべきではないでしょうか」と強調しました。

3畳、食費込み12万円余

都内劣悪「宿泊所」

 東京都板橋区での無料低額宿泊所建設計画が問題になっているやすらぎの里は、隣の北区でも宿泊所を運営しています。

 古い元ビジネスホテルの部屋をベニヤ板で3畳弱に仕切ったものでした。「異臭がひどく、衛生状態も疑問です。あんなに狭くて家賃5万3700円では“高額宿泊所”です」と話す人もいます。

 日本共産党の金崎文子板橋区議が現地調査したところ、家賃5万3700円、食費4万5000円に加え、水光熱費1万5000円、日用品費9600円をあわせて、12万3300円を生活保護費から徴収していると分かりました。手元には、6000円そこそこしか残らないことになります。

 しかも、北区の宿泊所は、民間団体「FIS」が運営していた施設で2008年4月から事業を行っていることも分かりました。FISは、劣悪な宿泊所運営で逃げ出す入所者も多く、徴収した入所費用から多額の使途不明金を出して問題となっています。

 板橋区の要綱では、宿泊所を設置する場合、住民説明会を開き、住民と協定を結ばなければならないと定めており、区議会健康福祉委員会で10月6日、住民の提出した陳情の住民説明会の開催を求める項目が、全会一致で採択されました。

 区の担当職員も「住民の理解が得られるまで、建設を見合わせるよう要請する」と答えました。

 やすらぎの里の担当者は、宿泊所運営費用についての本紙の取材に対し、「プライベートなことなので、答える必要はない」と話しました。

 宿泊所運営に乗り出す業者が増加する背景には、公的責任がおざなりにされている実態があります。

 東京都内で生活保護法に基づき住宅扶助を行う「宿所提供施設」は、たった6施設491人分しかありません。

 国民のたたかいで、自公前政権も重い腰をあげ、雇用と住居も失った人がアパート入居を果たすまでの臨時的住宅(シェルター)を自治体が確保する際の補助金を引き上げましたが、肝心の自治体が失業者の集中を恐れ、十分活用されないままになっています。


 無料低額宿泊所 社会福祉法で定められた第2種社会福祉事業で、「生計困難者のために、無料又は低額な料金で簡易住宅を貸し付け、又は宿泊所その他施設を利用させる」とされています。入所者のほとんどが生活保護を受給しています。



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