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2009年9月24日(木)「しんぶん赤旗」

タイ・カンボジア係争問題

挑発行動に批判

両国は平和解決を強調


地図

 【ハノイ=井上歩】タイとカンボジアが互いに領有権を主張しているクメール寺院遺跡プレアビヒアの周辺地域で20日、タイの反タクシン元首相派の政治団体「民主主義市民連合」(PAD)が国境境界線近くまで前進し、カンボジアに住民と兵士の撤退を求める声明を読み上げました。カンボジア政府はPADを非難するコメントを出しました。

 プレアビヒアをめぐり強硬的な立場をとるPADのデモ隊は19日、同遺跡に接する東北部シサケット県でカンボジアへの抗議行動を実施。近隣関係の悪化を望まない地元住民や警官隊が阻止に出て両者が衝突、十数人の負傷者が出ました。

 デモ隊は20日、治安当局に認められタイ領内を境界線近くまで進出。代表者が「カンボジアはわが国を侵食している。カンボジア政府が住民と兵士を速やかに撤退させなければ、タイ国民は主権を守るための義務を果たさなければならなくなる」などと挑発的な声明を読み上げました。

 カンボジア政府のパイ・シパン報道官は21日、「プレアビヒアはフランス・シャム条約、国際司法裁判所、標識設置のための両国覚書などでカンボジア領と確認されており、カンボジアは“国境問題”はないと考えている」、「タイの政党は政治的利益のためにプレアビヒアを利用している。黄色のグループ(PAD)は事実を歪曲(わいきょく)し、国民を混乱させ、タイの国際的信用をおとしめている。平和的解決のための過去の合意を尊重すべきだ」と述べました。

 国営タイ通信などによると、アピシット首相は20日のテレビ演説で、衝突と負傷者の発生に遺憾を表明。係争地に対して主権を主張する立場を確認しながら、平和的解決のための2国間交渉に努力していることを指摘しました。

 また、英字紙ネーション(電子版)によると、タクシン元首相はウェブサイトへの投稿で、プレアビヒア寺院は国際司法裁判所が1962年にカンボジア領と決定していることを指摘しました。

 PADは昨年、カンボジアによるプレアビヒアの世界遺産登録を支持した当時のタクシン派政権を糾弾、メンバーとみられる僧侶がカンボジア領内の同寺院に侵入し両国兵士のにらみ合いを引き起こしました。

 PADはことし政党を結成。ナショナリズムをあおることで、次回総選挙に向け反タクシン派のなかで独自色を出そうとしているとみられています。


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