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2009年9月23日(水)「しんぶん赤旗」

「差別怖く隠した」

水俣病大検診を訪れた住民


 20、21日に行われた不知火海沿岸地域住民の水俣病の大検診では、手足のしびれなどに苦しみながらこれまで隠してきた多くの人たちが受診に訪れました。理由を聞くと差別、偏見、情報不足が口々に語られ、国による全容を解明する調査の必要性が浮かび上がりました。

 「家族から水俣って言わんでくれとずっと口止めされてきた」。戦後、水俣市内にずっと住んでいる男性(83)はこう話し、口に人差し指を当てました。当時、毎晩のおかずは行商から買った魚介類だったといいます。

 男性は足先のうずきに30年以上悩まされてきました。夜も眠れないことがあり、睡眠薬を服用しています。からす曲がり(こむら返り)も頻繁にあり、検診で視野が狭いことも分かりました。診断は「水俣病の疑い」。

 これまで声を上げませんでした。理由は偏見と差別。長崎県に住む弟のところに遊びに行ったとき、迎えに来た駅前で一番初めに言われたことは「足がしびれるとか口にせんでくれ」。妻と旅行した時には、宿帳を書くと急に布団を換えると言われたこともあります。帰りの切符を購入する際は「水俣」までと告げると、後ろに並んでいた人が後ずさりしました。

 「水俣病は何か怖い病気と思われていた。結婚とかにも差しさわりがあるから隠すしかなかった」

 今回初めて水俣病の保健手帳申請をする出水市の女性(58)は20代前半から何もないところでも頻繁につまずくようになりました。これまで声を上げてこなかったのは「回りの目が気になる」からでした。国がこれまで調査などを行っていないことについては「するべきだと思う。私も出てくるとき勇気がいった」と語りました。


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