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2009年9月14日(月)「しんぶん赤旗」

ハイキングを次代に

労山が全国交流集会


 日本勤労者山岳連盟(労山)は12、13の両日、長野県茅野市の唐沢鉱泉で第17回全国ハイキング交流集会を開きました。「ハイキング文化を次代に引き継ぐために何をすべきか」をテーマに、18都府県から集まった約80人の会員が意見を交わしました。

 今回の集会は、会員拡大と事故防止に議題を絞って各地の取り組みを出し合いました。会員増の活動では、20〜30代の自然愛好者を対象にしたハイキングセミナーを16年間続けてきた大阪労山が報告。多忙な若い人たちが参加しやすいようにと、実技は5日以内とし講習会場も駅に近い施設に変えたことや、お互いの名前を早く覚えられるように顔写真入りの名簿をつくり、歌集や文集作製の共同作業で交流を図るなどの工夫をしていると話しました。

 事故防止の活動では、運動能力測定山行を10年も続けてきた福岡労山が発言。健康科学の専門家と協力して登山中の心拍数を測ってみると、中高年登山者が意外に無理をして登っている実態が分かり、会員が自分の体に関心を持ち、事故を防ぐ手助けになっていると語りました。

 全国連盟の井芹昌二(いせり・しょうじ)遭難対策部長は今年に入って重大事故が連続して起きていることを示し、その背景に登山計画の不備など一部の山岳会にある弱点を指摘しました。また、欧米の山岳組織ではどこでも登山の基礎教育を一定の水準に保つ標準化が進んでいることを紹介し、労山でも登山者教育の標準化を進める必要があると強調しました。


トムラウシ山遭難

同行程を体験クラブが報告

 労山に加盟する伊豆ハイキングクラブの6人パーティーは、今年7月に北海道の大雪山系トムラウシ山で死亡事故を起こしたツアー登山グループと前後して同コースを縦走しました。ハイキング交流集会では、同クラブの鍋島要事務局長が、その経過について特別報告を行いました。

 参加者は2カ月前から計画を立て、15キロ以上の荷物を背負って数度の例会山行をこなすなど準備は十分だったといいます。あの事故の前日まではほぼ予定通りで、当日はツアー登山グループの後に付いて行動し、途中で追い越しました。強い風と雨で1人が低体温症で行動不能になりましたが、仲間がお湯を飲ませ、温かい衣類に着替えさせるなど介抱したことで、なんとか自力下山を果たしました。下山口に到着したのは午後7時ごろ。予定より4時間遅れでした。

 鍋島事務局長は全員の無事下山を評価しながらも、(1)入山初日の夜、地元の人から天候が悪化すると告げられながら翌日の好天に予定を変えなかった(2)事故当日の朝、ツアー登山につられて悪天候の中を出発してしまった―などの問題点があったと話しました。

 その理由として、(1)については下山日の宿泊と飛行機の予約があったことと百名山へのこだわりがあったこと、(2)では、ツアー登山のガイドがしっかりしているように見えたことと、自分たちだけ取り残される不安―を挙げ、リーダーは難しい判断を迫られたと語りました。

 当事者のショックが大きく、まだクラブで十分な教訓は引き出せていないといいます。それでも事故の経験から、山行前日に天候が悪くなりそうなときは、リーダーが躊躇(ちゅうちょ)することなく中止することや、中止決定後に天気が回復してもリーダーに文句を付けないことなどを確認したと報告しました。


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