文字の大きさ : [] [] []

2009年8月23日(日)「しんぶん赤旗」

6党党首討論 志位委員長の発言

テレビ東京系


 22日にテレビ東京系で放映された6党党首討論。日本共産党の志位和夫委員長のほか、自民党の麻生太郎総裁、公明党の太田昭宏代表、民主党の鳩山由紀夫代表、社民党の福島瑞穂党首、国民新党の綿貫民輔代表が出席しました。聞き手は、日本経済新聞客員コラムニストの田勢康弘氏、テレビ東京の大江麻理子アナウンサーです。


獲得議席目標と選挙戦の手ごたえ

目標――11比例ブロックで議席を増やす

手ごたえ――「自公政権退場」が圧倒的な声に

「建設的野党」「将来像」の訴えに共感が広がる

 冒頭、各党が総選挙の目標や手ごたえなどをフリップに書いて説明。各党が「自公政権維持」(麻生氏)、「小選挙区8、比例区23以上」(太田氏)、「政権交代」(鳩山氏)、「2ケタ台」(福島氏)、「全員当選」(綿貫氏)とするなか、志位氏は「11ブロックで増やす/建設的野党、将来像に共感」と書き、こう説明しました。

 志位 11の比例ブロックで議席を増やすというのが目標です。手ごたえは、自民・公明の政権をまず退場させようということでやっておりますが、やはり、これはもう国民の圧倒的な声になっていると思います。

 それから、その後で、おそらくは民主党中心の政権ができるだろうと。そのときは国民のみなさんの要求をどんどん(政策として)提案し、「良いことには協力する、悪いことにはきっぱり反対する」という「建設的野党」と、これもそういうところが伸びてほしいと(いう反応です)。それから、私たちの将来ビジョンを、「国民が主人公」の日本と、大いにいろいろな具体的な政策を掲げて語っております。共感が広がっているという感じです。ぜひ結果を出したいと思っています。

国のあり方――二つの転換を

「小さな政府」――国民のための仕事を壊してきたことへの反省と転換が必要

「グローバル化」――内需を犠牲にして外需で稼ぐというやり方が行き詰まった

 討論で田勢氏は「マニフェスト(政権公約)の先にあるもの、つまりマニフェストをつくった段階で、どういう国のあり方を考えているのか」と問題提起。各党のマニフェストを読んだ感想として「『小さな政府』論が姿を消した感じがする。それは小泉『改革』の評価にかかわる」と述べました。

 これに対し麻生氏は、「『小さな政府』になれば福祉の部分は人を減らさなければならないことになる。われわれは『中福祉』。成長をある程度していかないと福祉に対応できる財源が生まれてこない」と発言。鳩山氏は、内需振興だけでなく「グローバリゼーション(経済の地球規模化)をむしろ積極的に活用しなければいけない」と答えました。これらの議論を通じて志位氏は、次のように述べました。

 志位 いま二つの問題が議論されましてね。「小さな政府」という問題については、具体的に「小さな政府」という掛け声で、この間やられてきたことは何だったのかということの検証がいると思うんですよ。

 私は、国民のための仕事を小さくしてしまう政府になってきたというのが実態だと思うんですね。たとえば政府というのは働く人をきちんと守るルールをつくるのが仕事なんですが、労働法制をどんどん規制緩和して、働く人の3人に1人は不安定雇用、若者と女性の2人に1人は不安定雇用にしてしまった。「働く貧困層」といわれる方々を1000万人を超えて増やしてしまった。

 そして一方で、社会保障というのはもう、国が絶対にやらなければならない仕事なんですけれども、毎年毎年2200億円、予算を削減して、そして後期高齢者医療制度から、障害者自立支援法から、(生活保護の)母子加算の廃止から、もうぼろぼろにしてしまったわけですね。ですから「小さな政府」の掛け声で、ほんらい政府がなすべきことを壊してきたと。この反省が一つ必要で、転換がいると思うんですね。

 それからもう一つ、先ほどのグローバリゼーション。グローバリゼーションについて、私たち、資本主義が発展する中で各国の交易が盛んになるのは、これは当たり前なんですけども、問題は「グローバル化」という名の下に、一部の輸出大企業の「国際競争力」さえ強ければいいんだと。そのためには労働者がどうなってもいいんだと。あるいは賃金を下げてもいい、派遣に置き換えてもいい。こういう内需を犠牲にして外需で稼ぐというやり方が行き詰まったわけですよ。ですからそういうやり方の転換が、いま求められていると。やはり外需頼みから内需主導に、大企業から家計に、二つの転換が必要だと思いますね。

外交・安保問題

日米核密約

鳩山氏「志位委員長が密約のペーパーを持ってこられているから、そこからスタートを」

志位氏「半世紀も国民をだましてきた。きちんと決着をつけるべきだ」

鳩山氏「政権をとって調査し国民に公表する」

 続いてテーマは外交・安保問題に。「日本は永遠に核兵器を持たない」ことに「○(賛成)・×(反対)形式」で質問したのに対し、全党首が「○」札をあげました。そのうえで、田勢氏は「『非核三原則』の『持ち込ませず』とか、実は持ち込まれていたんだという(日米核)密約のような議論がされていますが」と鳩山氏に質問。鳩山氏は「志位委員長が密約のペーパーを持ってこられているから、そこからスタートされたら」と志位氏に語り、議論が進みました。

 志位 「非核三原則」というのは、いわゆる核兵器を「つくらず、持たず、持ち込ませず」ということで1968年以来、「国是」とされてきたんです。

 ちょっとこれは写真のコピーですけれども、これがいわゆる日米核密約、アメリカの公文書なんですけれども、1960年の日米安保改定時に、実は軍艦と航空機での核兵器の持ち込みについては事前協議の対象にしないと(した)。つまりそういうものは持ち込み自由だという密約が安保改定時に結ばれていた。これはアメリカの公文書なんですね。私どもは9年前に不破(哲三)委員長(当時)が国会で取り上げて、そのとき政府は「知らぬ存ぜぬ」だったわけですね。

 しかしそのあと、元外務事務次官の方々が事実だということをいってきたわけで、実は「非核三原則」といいながら、「持ち込ませず」という部分が空洞化していたというのが実態だったわけですから、やはりこの密約をきちんと公開し、廃棄して、名実ともに「非核の日本」になる。そうしてこそ初めて世界に向かって核兵器を捨てよという立場ができますしね。それから北朝鮮に対してだって核兵器を捨てろという一番強い立場に立てますから。やはりこういう、半世紀にわたって国民をだまし続けてきたことは、きちんと反省しなければいけないと思います。

 田勢 1960年当時は「非核三原則」はなかったわけですよね。

 志位 そうですね。ですからその(「非核三原則」の)前に密約を結んでいて、それでその密約がずっと少なくとも外務事務次官、事務方の次官にずっと引き継がれていて、それでときの総理大臣や外務大臣に報告されたりされなかったりというようなことがあった。(米国は日本政府に)63年の段階できちっと密約を確認させたと。その後、「非核三原則」といわれると。ですからやはり、少なくとも半世紀の間だましてきたという、この問題は、きちんと決着をつけないといけない問題です。

 鳩山 いずれにしても現政権にはこういった密約があったということはなかなか言い切れないと思うんです。したがって、私どもは政権をとってきちんと調査し、アメリカにも当然行く必要があるだろうかと思いますが、その調査結果を国民のみなさんに公表するということができるのではないか。

「核の傘」

鳩山氏「今すぐ『核の傘』から出るべきだと主張するつもりはない」                

志位氏「『核の傘』とは核で相手を脅すこと。核抑止思考から脱却してこそ核兵器廃絶を主張できる」

 田勢氏は、鳩山氏に対し、民主党のいう「対等な日米同盟関係」と「核の傘」との整合性はどうなるか、日本がアメリカの「核の傘」から抜けることはありうるのか、と質問。鳩山氏は、「『核の傘』の中に入っていることは今の北朝鮮の情勢を見れば、ある意味でやむを得ない。今すぐに『核の傘』から出るべきだということを主張するつもりはない」との認識を示しました。志位氏は次のように批判しました。

 志位 「核の傘」っていうのはいわゆる「拡大抑止」といわれるんですね。要するに核による抑止という考え方をとり続けるのかということが、いま人類に問われていると思うんですよ。

 核抑止というのは結局、核兵器で相手を脅す。脅しが利かなかったら核を使うぞということが前提になっている論理なんですね。ですからやはりその論理を21世紀にいま使うのかと。アメリカの元国務長官のシュルツさんなども、“いったい文明国の指導者が核兵器のボタンを押せるか。平壌やテヘランに核兵器を落とせるか。何十万もの人が死ぬのがわかっていて落とせるか。文明国の指導者だったら落とせないし、使えない。使えないんだったら抑止力は成り立たない。だからこれは捨てよう”と言い出しているんですね。

 やっぱり核抑止っていう考え方から脱却して、とくに「核の傘」は他人の核で相手を脅そうっていうことでは同じです。やっぱりここから離脱して、本当に名実ともに「非核の日本」になる。そうしてこそ初めて核兵器廃絶ということをいえると思うんですよ。ですからそれを、いまオバマさんがせっかく核廃絶と言い出している。私も書簡を送って「ぜひ協力してやろう」といっていますけれども、ぜひこれを後押しすべきだと思うんですよ。

 太田氏は「非核三原則の法制化には反対。国是としてきちんと今まできた」と発言。麻生氏は、核の先制不使用について「日本と同盟をもっているアメリカに核の先制不使用ということは日本の安全を考えるうえで現実的にはない」と拒否しました。

 田勢氏は、「アメリカの『核の傘』にいるという現状を肯定的にみるか、否定するかという立場の違いが出ている」と討論をまとめました。

「日米同盟」のあり方とアジア

麻生首相「安定した日米同盟はアジアからみても安心感」

志位氏「軍事同盟にしがみつくのは時代錯誤。東南アジアの平和共同体を北東アジアにも広げる発想が必要」

 議論は「日米同盟関係」のあり方になり、麻生氏は「安定した日米同盟関係を結んでいることは、アジアの国々からみてもかなりな部分、安心感がある」などと発言しました。志位氏は、この見解にきっぱりと反論しました。

 志位 私は、こういう構想が必要だと思うんです。東南アジアは、ASEAN(東南アジア諸国連合)というかたまりができて、いま平和の共同体のような形になっているんですね。かつては東南アジアにも軍事同盟がありました。SEATO(東南アジア条約機構)という軍事同盟があって、ベトナム戦争のときには、東南アジアの人たちが殺し合いをやったわけですね。その反省の上に立って、もうこの地域には軍事同盟をなくそうという形で、平和の共同体ですよね。TACという、東南アジア友好協力条約という、もう紛争は全部平和的に解決するという流れが、ずーっと広がっていますね。私は、それを北東アジアにも広げていくという発想がいると思うんですよ。

 北東アジアは、いま六つの国で、この間6カ国協議というのをやってきました。いま北朝鮮が脱退するということをいっています。これはけしからんことですけれども、そういうなかで、6カ国協議をあきらめちゃうんじゃなくて、やはりこの6カ国協議がもし発展して、非核の朝鮮半島ができて、そして、前にさらに進めば、ちょうどASEANが発展したように平和の共同体が北東アジアにも広がっていくと。そういう努力とあわせて、私は日米安保条約というものを見直し、軍事同盟をなくしていく。そのための国民多数の合意をつくっていくという努力がいると思うんですよ。

 世界全体からすると、軍事同盟というのはだんだん、だんだんなくなって、東南アジアからもなくなりました。中東からもなくなりました。南北アメリカ大陸のリオ条約もほとんど機能していない。オセアニアのANZUS(オーストラリア・ニュージーランド・米国相互安全保障条約)も機能停止です。ですから、軍事同盟がずーっとなくなる時代ですからね、いつまでも軍事同盟にしがみついているというのは、これは時代錯誤だと私は思っています。

 鳩山氏は「政権をとってオバマ大統領との間の信頼関係をまずつくらなければいけない」と表明。太田氏は「日米安保、自衛隊、国連をいままでどおりに維持し、充実させていく」などと述べました。

若い人たちに

「自己責任論」を乗り越え、政治を変え社会を変えるという流れが広がっている   

 最後に、田勢氏は「最近、小学生から大学生まで、将来何になりたいかと聞くと、政治家になりたいという人は、ほとんどいない。これでは将来日本はいったいどうなるんだろうか」と問いかけました。

 「保守の魅力が衰退してきたから無党派層が増えている」(麻生氏)、「自民党中心の政権が続き何も変わらない思いが(若い人たちに)あった」(鳩山氏)、「人間力、地域力などが崩壊している」(太田氏)などの見方が出されるなか、志位氏は次のように述べました。

 志位 若い方のなかで、これまで「自己責任論」というのがずーっと入ってきたと思うんですよ。たとえば就職がなかなかできない、あるいは正社員になれない、これはあなたの能力のせいなんだと。これでがんじがらめになっていて、なかなか発言できない。そして政治も遠いものに感じたと。そういう方々がですね、たとえば昨年秋から「派遣切り」がやられる。そういうなかで立ち上がってみると、やっぱり自分の責任というよりも、社会のゆがみだったんだと。そして、根底には政治の規制緩和の問題があり、いろんな問題があると。そこの政治の根っこを変えていくことによって、やっぱり社会は変えられるんだという流れが、いま広がっていると思いますね。



■関連キーワード

もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp