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2009年8月18日(火)「しんぶん赤旗」

景気が先か暮らしが先かでなく国民の懐温める経済こそ

NHK「日曜討論」 市田書記局長の発言


 日本共産党の市田忠義書記局長は16日、フジテレビ系「新報道2001」、NHK「日曜討論」、テレビ朝日系「サンデープロジェクト」に相次いで出演しました。「日曜討論」での発言を紹介します。


自公が暮らしの安心を壊してきた

 番組冒頭で司会の影山日出夫解説委員は、内閣府の景気ウオッチャー調査が少し上向く一方で、4年前の選挙後も現金給与総額が「傾向としては減り続けている」と指摘。「個人の懐が温まってこなかった、そこはまずいなと反省されていると思いますが」と問いかけました。自民党の細田博之幹事長は「去年の世界経済の崩壊で一気に落ち込んだ」「小泉改革、解散以来4年間で全部失敗だったといいますが、そうじゃない」と弁解しました。市田氏は次のように発言しました。

 市田 政府の世論調査でも「暮らしが苦しくなった」と答えている人が6割近くいるわけですよ。景気がよくなったとしてもそれは一部の輸出大企業であって、労働分配率もどんどん減っています。それから向こう10年間で100万円国民の所得を増やすと自民党はいっていますが、この10年間で国民の所得が70万円くらい減っていますよね。自民党は「安心と責任」とおっしゃっていますが、その安心を壊してきたことへの反省がまったくないと思うんですよ。

 いま、年間通して働いて収入200万円以下という人が初めて1千万人を超えたわけで、これはやっぱり、人間らしい働き方のルールが壊されてきたことが根底にある。それから毎年2200億円ずつ社会保障費が削られてきて、医療難民、介護難民という言葉も生まれるようなひどい状態になっている。庶民にはこの間(年間)5兆円の増税で、大企業・大資産家には7兆円の減税でした。これでは暮らしが大変なのは当たり前で、もっと雇用や社会保障、農業、中小企業こそ支援すべきであって、そういう暮らしにしてきたことへの反省がいまの政府には求められていると思います。

土台を温めるところに力点を置く

 今後の経済運営をめぐり、与党側は「(企業の)競争力、成長戦略をもたなければならない。そこがないと他のことをいっていけない」(公明党の北側一雄幹事長)などと主張。市田氏は次のように発言しました。

 市田 景気が先か暮らしが先かという問題の立て方が間違っていると思います。これまで、「いざなぎ景気を超えた」といわれたときは、バブル期の2倍近い利益を大企業は上げましたが、コスト削減でそれこそ派遣労働がまん延した。いわば働き手としての国民を犠牲にして一部の大企業がもうけたわけです。そういうやり方が破たんしたのが今日の姿だと思います。

 私は企業も大事だと思います。しかし、土台となる国民の懐を温める。雇用の安定、社会保障の充実、農業や中小企業、そういうところをきちんと支援することによって国民の購買力が高まれば、消費が活発になる。そうなれば、国内のモノの売り買いが活発になるわけですから、企業もよくなるし日本経済もまともに発展する。あれかこれかではなくて、土台を温める、国民の懐を温めるところに力点を置くことが、企業の発展にも経済の発展にも資することになると考えています。

社会保障費削減で何が起こったか

 社会保障費の削減が議論になり、自民党の細田氏は「反省」を口にしつつ「小さな政府が大事という哲学は変えていない」と発言。公明党の北側氏は「社会保障について削っているわけではない。社会保障について毎年1兆円増えるところを、2200億削るということをやっただけだ」などと述べました。市田氏は「それは本当におかしな論理だ」と批判し、次のように指摘しました。

 市田 お年寄りが増えれば自然増があるのは当たり前で、それを毎年2200億円削り続けて、1兆6500億円も削ってきた。それで何が起こったのか。

 後期高齢者医療制度がつくられ、障害者自立支援法で応益負担が押し付けられ、国保料が高すぎて払えない34万世帯から保険証が取り上げられた。そういう事態をつくった根源に毎年2200億円ずつも社会保障費を削ってきたことがあるんです。

財源といえば消費税との考え方を改めよ

 財源問題が議論になり、自民党の細田氏は「消費税を全く先送りにするのでは赤字が増えていくということから、ある程度の視野に入れる」と、景気回復後の消費税増税を明言。民主党の岡田克也幹事長は「(最低保障年金の財源として)将来的にはそういうことはある」と述べると、司会の影山氏は「いずれ(消費税を)上げるという点では同じじゃないんですか」と指摘しました。

  社民党の重野安正幹事長は、無駄をなくすなどしても財源が不足する場合は「消費税なのか名前は別として、国民に負担をお願いする。それは将来ありうる」と発言。国民新党の亀井久興幹事長も将来的には「社会保障目的税にして国民に理解を求める」と述べました。これに対し、市田氏は次のように発言しました。

 市田 先ほど影山さんから、自民党も民主党も消費税に依存するということでは違いがないと。そのような表現がありましたが、財源といえば消費税と短絡的に考えること自身を改めるべきだと考えています。

 税金は応能負担の原則で負担能力に応じて払う。消費税は応能負担の原則に一番反する税で、「派遣切り」にあって手持ちのお金が1000円しかない人にも増税になるわけです。文字通り「社会保障破壊税」だし「景気破壊税」です。(1997年の)橋本内閣のときに3%から5%に上がってどれだけ景気が悪化しましたか。

 それから、財源という場合には(軍事費と大企業・大資産家優遇という)「二つの聖域」にメスを入れるべきだと思っています。1メートルに1億円もかかるような東京外郭環状道路だとか八ツ場(やんば)ダムだとか川辺川ダムだとか、そういう無駄を省く。それから軍事費です。軍事費をいっぺんに全部やめろとはいいませんけれど、中小企業予算は今年1890億円なんですよ。1事業所あたり4万5000円。ところが、在日米兵1人当たりの「思いやり予算」だけで811万円なんです。これはやっぱりまずい。

 こういう軍事費の無駄を削って、応能負担の原則に基づいて証券優遇税制などを改める。アメリカでも富裕層に増税して財源を生み出し、低所得者の減税をやろうとしています。軍事費も向こう10年間で140兆円、オバマ政権ですら減らそうといっている、イギリスでも消費税の減税をいっているときに、消費税の増税に頼るという議論はますます景気を悪化させ、暮らしを疲弊させると思います。

自民党の自己評価は甘すぎる

 与党側からマニフェストの公約実現の可能性を追及された民主党の岡田氏は、大阪府の橋下徹知事が“民主党のやろうとしていることは自分が大阪府でやったことと同じようなことだ”といった言葉を引用し、「まさしくそうだ。だからそれはきちんとできる」と発言。私学助成の大幅カットなどで高校生を泣かせている橋下府政をモデル扱いしました。また、4年前の政権公約についての自民党の自己評価が甘すぎることや、民主党がマニフェストの日米FTA(自由貿易協定)などの記述を変更した点が議論になり、岡田氏は「修正したのではない。追加をした」と述べました。この議論を受け、市田氏は次のように発言しました。

 市田 自民党が自己評価で「A」とか「B」とか、ほとんど合格点ですよね。しかし、この4年間で雇用や医療や社会保障や農業、中小企業がこれだけひどい状態になった。国民が答えを出していると思うんですよ。「これほど暮らしが大変なときはない」というふうに答えている人が、政府の統計で6割近いわけでしょう。それへの反省が自民党にはない。それと、マニフェストは政策の羅列だけではなく、外交をどうするのか、経済のあり方をどうするのか、という将来像がみえないとマスメディアからもいろいろと批判があります。どういう国の形にしていくのか。

 われわれは「ルールある経済社会」をつくろう、そのためにも財界・大企業中心の政治を改めて、国民が主人公の政治にしようと。外交で言えば、憲法9条を生かした自主・自立の平和外交へ、ということを打ち出しています。そういう将来像を示すことが政策の提起とともに非常に大事です。

 それから民主党の日米FTA問題ですが、「締結」を「協議の促進」に変えても中身はそう変わっていないとおっしゃった。自公政権も「市場に任せればすべてうまくいく」ということで流通も価格も市場に任せて農業を破壊してきたし、食料自給率を4割に落ち込ませてきた。それを一層ひどくするのが日米自由貿易協定です。

 農産物を除いて日米の自由貿易協定はありえません。関税がかかっているのは農産物がほとんどなわけで、これは壊滅的な打撃になります。米は82%ぐらいだめになってしまうわけで、これはやっぱりまずいのではないかと率直に思います。


人を使い捨てる世の中は企業も社会も発展しない

テレ朝系番組 市田氏が討論

 テレビ朝日系の「サンデープロジェクト」では、1999年の労働者派遣法改悪以来、3人に1人が非正規労働者となった雇用のあり方をめぐって議論になりました。

 自民党の細田氏は、「景気回復すれば企業は従業員を増やす必要があり、派遣労働者に頼らざるをえない」などとして、今後も派遣労働の継続は必要という考えを示しました。

 民主党の岡田氏は、「製造業への派遣は原則禁止だが、すべて禁止というわけではない」と述べ、99年の前に戻すものではないと主張。「技能があり正社員なみの賃金を得ている人の場合は認めるべきだ」と述べ、製造業への派遣を一部容認する考えを示しました。

 これに対して市田氏は「臨時的な仕事以外は正社員にしていくべきだ。欧州では派遣労働など臨時的な働き方の人は1割ぐらい。日本で3人に1人というのは同じ資本主義国でも異常すぎる。もうかるときは安い賃金でこき使い、不況になればモノのように使い捨てる社会でいいのか。そういう社会では企業も社会も発展しない」と強調しました。

 番組では、小泉内閣時に総務相などを歴任した竹中平蔵氏が、「非正規雇用が増えたのは制度に問題があるからだ」などとして、「整理解雇4要件」を確立した79年の最高裁判決に基づく解雇規制の撤廃を求めました。

 市田氏は、「最高裁の判例などで正社員の首が切りにくくなったから派遣労働者が増えた。だから自由に正社員の首を切れるようにする、そういう社会にしようというのか。あなたの議論は社会の現実、実態を見ていない」と厳しく批判しました。



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