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2009年7月25日(土)「しんぶん赤旗」

主張

最低賃金

貧困打開に大幅引き上げを


 全国の最低賃金決定の目安を決める、中央最低賃金審議会の検討が大詰めを迎えています。

 まじめに働いても生活できない「ワーキングプア」(働く貧困層)をなくすために、最低賃金の大幅な引き上げが求められている一方、財界などは不況を口実に、引き上げを見送る策動を強めています。労働者に対する最低生活の保障さえ考慮に入れないものであり、賃金の抑制は家計の消費を冷え込ませ、不況をいっそう深刻にします。不況のときこそ、最低賃金の引き上げが不可欠です。

生活権の保障のため

 最低賃金とは、国が最低賃金法にもとづき賃金の最低額を決めるもので、企業はそれ以下の賃金では労働者を働かせてはならないことになっています。全国平均の目安にもとづき、都道府県ごとの地域最賃や産業別最賃が決められます。昨年7月に施行された改正最低賃金法は、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、少なくとも生活保護水準は下回ってはならないことを定めています。

 昨年はこの基準にもとづいて、最低賃金は全国平均で16円引き上げられ、時給703円となりました。もちろん、引き上げられたといっても703円では1日8時間、月22日間働いても月給は12万3728円、年収は148万4736円にしかなりません。年収200万円以下の「ワーキングプア」の水準です。最低賃金を、全国一律で時給1000円以上にというのは、生きていくうえで、切実で当然の要求です。

 しかも厚生労働省によれば、都道府県ごとの地域最賃は、東京や神奈川など少なくとも12都道府県で、それぞれの地域の生活保護基準を下回っています。生活保護基準との整合性を定めた改正最賃法にさえ違反しているのは明らかで、最低賃金の大幅引き上げは、この面でも待ったなしの課題です。

 財界や一部の経営者がいうように、不況だから最低賃金を抑えるというのは、労働者の生活権保障をうたった最低賃金の趣旨に照らして、とんでもない暴論です。時給703円という低賃金や生活保護基準さえ下回るという水準が、「健康で文化的な最低限度の生活」に値しないことは明白です。

 財界・大企業は、不況の中でもためこんだ内部留保は確保し、株主への配当は続けています。それにもかかわらず、労働者を切り捨て、賃金も抑え込もうというのは、犠牲はすべて労働者や下請けに押し付け、自分たちだけは生き残ろうという身勝手なものです。

 昨年来の不況は、一部の大企業などでは「底を打った」などといわれていますが、雇用の悪化は歯止めがかからず、個人消費はなお低迷しています。最低賃金を引き上げ、労働者のふところを温めることこそ、内需を拡大し、景気を回復軌道にのせていくために欠かすことができません。

ルールある経済社会

 最低賃金は世界各国で実施されていますが、欧米では相次いで引き上げられており、日本は最低水準です。最低賃金の引き上げは、日本に、人間らしい労働のルールをつくっていく上でも重要です。

 最低賃金の引き上げを実現し、いまこそ労働者の生活と権利をまもる、「ルールある経済社会」を築いていくことが求められます。


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