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2009年7月6日(月)「しんぶん赤旗」

社会リポート

統廃合される職業訓練校 東京都

自公民 今までの計画に賛成

共産党 不況の今こそ拡充を


 解雇や派遣切りが深刻化するなか、東京都の石原慎太郎知事は多摩地域の都立職業能力開発センター(4カ所)のうち武蔵野校、立川校を廃止、2011年に開設する本校(昭島市)に統合する計画です。日本共産党都議団は「不況の今こそ拡充を」と主張しています。(東京都・坂井和歌子)


 石原都政はこの10年間、都の職業訓練施設を次々に統廃合して減らしてきました。今回の計画は、「東京都雇用・就業対策審議会答申」(05年12月)と「東京都職業能力開発計画」(07年1月)に基づくもの。職業訓練を求職者のためのものから、本来は大企業など雇用主の責任で行われるべき在職者の能力向上・開発にシフトしていくことを打ち出しています。

 職業訓練を求める人が急増し、公的な職業訓練施設が不足するなか、新しい本校の開設を契機に2校を廃止することは、職業訓練の明らかな後退です。

 武蔵野校の廃止で区部西部、多摩地域東部が職業訓練の空白地域となります。

 また、無料だった1、2年コースの授業料と入校選考料(受験料)が07年4月に有料化され、利用者が減っています。

 「民間教育訓練機関との役割分担」の名で職業訓練を市場原理にゆだねる方向を強める石原都政。自民、公明、民主の「オール与党」は職業訓練の授業料の有料化と市場原理導入、これまでの統廃合にも賛成してきました。

 日本共産党は、清水ひで子都議が6月の都議会経済港湾委員会で質問するなど、統廃合や授業料有料化をやめ、職業訓練を拡充するよう求めてきました。

 武蔵野校を視察した清水都議は「設備や教育内容が充実しており、存続は中小の製造業を担う青年を育てる点でも非常に大切です。職業訓練施設は統廃合ではなく、今ある施設を残しつつ増設・拡充すべきです。そのために引き続き頑張ります」と話しています。

訓練生「すごくいい学校」

 武蔵野市境の武蔵野校。校門をくぐると、作業着姿で日陰に腰かけ談笑する人たちに出会いました。休憩中の先生と訓練生たちで、気さくに会話し打ち解けた雰囲気です。

 「ここに入ってよかった」。訓練生の共通した声です。

 高校卒業後、入校した男性(19)は父親の営む電気工事の仕事を継ぐのが夢。「早く技術を身につけ父と働きたい」と話します。

 廃止計画について「知らなかった」と驚く人がほとんど。「先生たちも熱心ですごくいい学校。廃止せず残してほしい」

 同校は1958年、都武蔵野職業訓練所として開設。記録のあるこの20年だけでも約6400人を社会に送り出してきました。電気工事、建築設計、溶接造形など7科があり、期間は3カ月〜1年。高校新卒者や定年退職後の60代など幅広い年代の人が学びます。

 特徴は技術の習得方法。一人ひとりに専用の道具を配り、校内の機械や調理場を使い、実際の作業を通して知識を身につけます。

 阿部久人校長は「企業が実際に使っている資機材を導入しての訓練、幅広い世代が刺激しあい、労働法の知識を身につけることなどを通して協調性や働き方そのものについて学ぶことができる。中小企業やものづくりを担う人材を育てる役割がある」と語ります。

過去10年間の東京都職業訓練施設の変遷

99年3月 牛込校、新宿校廃止
01年3月 中野校廃止
  同4月 飯田橋校開設
05年3月 王子校廃止
08年3月 中央・城北職業能力開発センター有明分校廃止

※名称変更などは除く



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