2009年7月2日(木)「しんぶん赤旗」
概算要求基準閣議了解
公共事業・軍事費
積み増し余地残す
政府は1日、2010年度予算の大枠を示す概算要求基準(シーリング)を閣議了解しました。政策的経費である一般歳出は、過去最大の約52兆7000億円となりました。過去最大規模となった09年度当初予算(51兆7000億円)を1兆円も上回りました。
シーリングは、経済危機対応等特別枠として3500億円の重点化枠を新設。経済緊急対応予備費として6500億円を充てます。
政府は、世論の反発をうけ、10年度予算については高齢化によって増加する社会保障費の自然増を「そのまま認める」(与謝野馨財務相、6月23日の記者会見)としました。
シーリングでは、社会保障の自然増は1兆900億円と見込んでいます。社会保障費は総額で約26兆円となりました。
公共事業費については、前年度比3%削減を継続します。ただ、今秋以降に特別枠の一部を配分したり、補正予算で経済緊急対応予備費を取り崩したりすることができるようにし、公共事業を積み増す余地を残しています。
一方、私立学校振興費や国立大学法人運営費は同1%減を継続します。
軍事費は同1%減を継続するとしています。しかし、「骨太の方針2009」(6月23日閣議決定)では、「厳しさを増す安全保障環境に適切に対処」するとし、軍事費拡充の可能性も示唆しています。また、概算要求基準は在日米軍再編経費について、「予算編成過程において検討し、必要な措置を講ずる」と別枠扱いとしています。
解説
社会保障抑制路線きっぱりと決別を
麻生自民・公明内閣が閣議了解した2010年度予算の概算要求基準は、来年度予算に限って社会保障費の自然増を「そのまま認める」(与謝野氏)ことになりました。
小泉内閣(当時)の02年度予算以来続けてきた社会保障費抑制路線の行き詰まりを決定的にするものです。
社会保障費の自然増を毎年2200億円抑制し続ける方針のもと、医療、年金、介護、生活保護など、あらゆる制度が次々と改悪されてきました。これが貧困と格差拡大を助長し、命にかかわる事態まで生み出してきました。
政府が来年度予算での「抑制路線」継続を断念した背景には、「抑制路線」への国民の怒りと反対の声が背景にあります。
ところが「断念」は“来年度予算限り”。与謝野馨財務相は「11年度に累積して自然増を1・1兆円抑えるということについては、別に変わっているわけではない」と明言します。与謝野氏の言う通り帳尻を合わせるためには、11年度予算で社会保障費の自然増を4400億円抑制することが必要です。
総選挙での国民の批判さえかわせれば、“後は野となれ山となれ”という麻生内閣の考えがはっきりと表れています。
社会保障抑制路線は行き詰まりました。それならばこの路線にきっぱりと決別して、切り捨ててきた社会保障制度を復活させ、拡充させる路線に転換すべきです。(山田英明)
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