2009年6月29日(月)「しんぶん赤旗」

主張

来年度の軍事費

増額路線への転換許さない


 政府は2010年度予算の概算要求基準を、来月1日に決定する予定です。注目されるのは、政府が先の「骨太方針09」で打ち出した軍事費重視の方針です。軍事費「抑制」から「増額」への転機にすることは許されません。

「軍事同盟絶対」で

 「骨太方針09」は初めて「防衛」という項目を設け、北朝鮮の核実験などをあげ「厳しさを増す安全保障環境に適切に対処」するとのべました。軍事費増のすすめです。

 北朝鮮が核実験を強行したことは、国連安保理決議にも朝鮮半島の非核化をめざす6カ国協議にも違反した暴挙であり、許されることではありません。だからといってそれを口実に軍事費を増額し、軍拡を進めるのは、軍事力での応酬に道を開くだけで、事態の平和的・外交的解決にまったく役立ちません。

 安保理決議1874は、国連憲章41条による非軍事的対応を明記し、「対話を通じた平和的、包括的解決」や「緊張を悪化させかねないあらゆる行動を慎む」とのべています。日本政府が北朝鮮問題を口実にして、軍事的に「対処する」こと自体が間違っています。

 実際、政府にとって北朝鮮問題は口実にすぎず、軍事費増額に方向転換する真の狙いは、「日米軍事同盟絶対」で、自衛隊を強化・拡大することです。

 日米両政府が決めた「米軍再編」のための日本の負担は、沖縄の新基地建設やグアム基地建設費など、あわせると3兆円だと米側はいっています。軍事費の増額が不可避になっているのです。

 自衛隊の海外派兵強化も軍事費増大の大きな要因です。イラク派兵が終わってもインド洋での給油は続け、期限なしの「海賊対処」派兵にふみだし、アフガニスタン本土への派兵も狙っています。

 宇宙の軍事利用を本格化する「宇宙基本計画」の具体化でも軍事費増額は避けられません。海外での軍事作戦に不可欠な偵察衛星の開発・保有や弾道ミサイルを探知・追尾する早期警戒衛星の開発・保有などにふみだせば、予算は天井知らずになります。

 政府はいま、長期的な軍拡計画となる「防衛計画の大綱」の「見直し」作業を、年末に向け進めています。そのために設置された麻生太郎首相の諮問機関「安全保障と防衛力に関する懇談会」では、「日米同盟をしっかり維持していくためにも、日本が積極的に色々なことをやらなければならない」などという議論が支配的です。

 自民党の国防部会・防衛政策検討小委員会も、新「防衛計画の大綱」で自衛隊を「質」「量」ともに「必要な水準を早急に見直」すことを、政府に提言しました。

 来年度予算編成での軍事費増額が、「日米軍事同盟絶対」の立場で日本を海外で戦争する国にすることにつながるのは明らかです。

暮らしと福祉にまわせ

 「骨太方針09」の決定にあたって政府は、社会保障予算の抑制路線への批判を受けて、「来年度は削減しない」といわざるをえなくなりました。しかしそれに便乗して軍事費も増額させようというのは筋違いというほかありません。

 軍事費を大幅に削減し暮らしと福祉に回すことこそ国民生活にとって重要です。それは軍事ではなく外交で世界の平和に役立つ道を広げることにもなります。



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