2009年6月21日(日)「しんぶん赤旗」

主張

米欧の金融規制

日本も規制緩和路線の転換を


 米国のオバマ大統領が金融改革の方針を発表しました。大恐慌後の1930年代に実施された改革「以来の規模」(同大統領)です。欧州でもフランスなどが厳しい規制を求めています。欧州連合(EU)は19日の首脳会議で、欧州規模の金融監督機関の創設を柱とする規制強化策で合意しました。

 世界金融危機を引き起こした規制緩和の流れが転機を迎えています。昨年来2度開かれた金融サミット(G20)が打ち出した危機再発を防ぐ規制強化の具体化に、各国が足を踏み出しています。

危機再発の防止へ

 米国の新方針は、連邦準備制度理事会(FRB)に大手金融機関に対する銀行、証券、保険の各分野を一括した監督権限を付与するのをはじめ、金融の監視・監督を包括的に強化しようとしています。投機集団ヘッジファンドの登録制導入や、現代の錬金術であるデリバティブ(金融派生商品)の規制も盛り込んでいます。

 米国はこれまで金融資本のあくなき利潤追求を助け、経済覇権を握るため規制緩和を世界に押し付けてきました。その路線は貧富の格差の極端な拡大など深刻な問題を引き起こしたあげく、金融危機で大破たんしました。米国が金融規制に転じたことは、流れが変わったことを強く印象づけます。

 新方針はウォール街(米金融機関)が容認する範囲内だとの批判もあります。オバマ政権は方針策定にあたってウォール街と協議を重ねました。大恐慌後の改革の成果に銀行業と証券業を分離したグラス・スティーガル法がありました。同法の廃止が今回の金融危機の伏線になったとされ、「銀・証分離」の復活が求められたものの、新方針には反映していません。

 新方針には、米国が「金融勝者」として復活を果たすための計算ものぞいています。G20や国際金融監督機関での規制強化の動きを、米国の新方針に合致したものにするため「指導力を発揮する」と表明しています。

 金融危機直前まで高騰を続けた穀物や原油は、投機資金が逃げ出していったん価格が下がったものの、いまふたたび上昇の勢いです。投機資金が再流入しているとみられています。人々の生活を左右する食料やエネルギーへの投機にしっかり歯止めをかけることは、国際社会の重要課題です。来月開かれる主要国首脳会議(G8サミット)はその責任を負っています。

 日本は規制強化の流れに逆らい、金融緩和の道を歩き続けています。今国会で成立した金融商品取引法の改定は金融商品取引所と商品取引所を相互乗り入れさせ、穀物などの市場に大量の投機資金が流れ込む環境をつくるものです。G20や米国が店頭デリバティブ取引の規制を打ち出すなかで、日本は商品取引所法改定案で店頭商品デリバティブ取引を一般消費者にも広げようとしています。

投機を抑えるために

 日本の金融機関は90年代の土地バブル後遺症からグローバル化の時流に乗る余裕がなく、今回の金融危機で欧米ほど手痛い影響を受けなかったとされます。そのためもあり、政府は依然として規制緩和路線を維持しています。

 こんな時代錯誤の政策は許されません。政府は世界の流れにも目を向け、規制を強めて投機を抑える路線に転換すべきです。


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