2009年6月20日(土)「しんぶん赤旗」

トヨタとパナソニック出資会社

派遣切りして期間工大募集

「腹が立つわよ。私たちを中途解雇しておいて」


 減産を口実に「派遣切り」をした製造企業で、増産が必要になったからとして労働者の募集を始めるところが出ています。人員削減から時間がたたないうちに人員増に転じるという身勝手さが浮かびあがっています。(酒井慎太郎)


写真

(写真)期間工募集のビラに憤る中途解雇された女性=静岡県浜松市

 パナソニックEVエナジー(静岡県湖西市、従業員2200人)は13日に「100名大募集」とした期間工の選考会を開き、採用枠を大きく上回る160人が参加しました。

 今春、専門学校を卒業した愛知県豊橋市の男性(21)は、ハローワークでは1社に1、2人の募集しかなく、「正社員になりたいが仕事を選んでいられない」と話しました。

 同社はトヨタ自動車とパナソニックが出資し、自動車用電池を製造。トヨタが燃料電気両用車を増産するため、増員に動きました。

最長2年11カ月

 期間工は時給1150円と、派遣会社の時給1300円より低く抑え、契約期間は最長2年11カ月しかありません。失業中の静岡県内の40代男性は、「この年齢になると働き口は限られる。雇用は安定しないが仕方がない」と言いました。

 しかし、同社は1月末に「派遣切り」を行ったばかりでした。

 「腹が立つわよ。辞めさせておいて、また募集するなんて」と憤るのは浜松市の女性(46)。減産を理由に4月半ばまで契約があったのに、中途解雇で人員削減されました。

 労働契約法で、中途解雇は原則禁止されています。しかも、派遣先指針で定められた中途解雇者への再雇用あっせんなども行わず、放り出したのです。

 「私のいたラインでは半数の9人が中途解雇されました。私は高校生と中学生の子ども2人を育てる母子家庭で、明日からどう生活するか途方にくれました」と語ります。

 昨年12月末、解雇を告げられてから、「辞めろと言う職場で働きたくない。有給休暇を消化したい」と言っても、「生産が回らなくなる。有休を使うなら自主退社になる」と脅されたと言います。

 ところが、同社は2月1日、派遣労働者を全員、期間工に採用する方針を発表しました。減産を口実に派遣切りをすすめる一方で、期間工に切り替えていく計画だったのです。その朝礼で製造課長は、「わが社は派遣切りなんてことはしない。期間工として雇うから、安心して働くように」とうそぶきました。

 この女性ら5人は1月、「声を上げてたたかいたい」とJMIU(全日本金属情報機器労組)静岡西部地域支部に加入。派遣会社に解決金を支払わせましたが、いまだに仕事が見つかっていません。

法令にも抵触か

 そんななかで持ち上がったのが、今回の100人採用でした。労働者派遣法では、派遣をやめて労働者を採用する場合、派遣労働者を優先して雇用しなければなりません。同社が派遣切りをやってすぐに期間工を採用したり、新たに期間工を増やすことは、こうした法令にも抵触しかねない問題です。

 同社は、「派遣切りなど一人もしていない」といって自らの責任は棚上げし、派遣会社の問題だと開き直っています。中途解雇した派遣労働者を優先して雇う考えはないとしています。

 解雇された労働者は再就職先のあっせんもないため、全員が今も仕事に就けず、今月で失業保険も切れます。

 JMIU静岡西部地域支部の青木克之書記長は、「中途解雇して放り出したまま、新たに期間工を雇い入れる身勝手さは許されません。大企業の社会的責任を果たすよう求めたい」と話しています。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp