2009年6月4日(木)「しんぶん赤旗」

老齢加算廃止

高齢者の訴え棄却

福岡地裁 違憲性を認めず


 北九州市の生活保護受給者39人が老齢加算の減額・廃止は生存権を規定する憲法25条などに違反するとして処分の取り消しを市に求めた福岡生存権裁判の判決が3日、福岡地裁(高野裕裁判長)で言い渡されました。高野裁判長は老齢加算の減額・廃止後原告らの生活が「健康で文化的な生活水準を下回っているとまでは認めがたい」として、原告らの請求をいずれも棄却しました。原告側は控訴する方針。

 訴えなどによると、老齢加算は1960年、70歳以上の高齢者には加齢に伴う特別な需要があるとして創設。2004年4月から段階的に減額され、06年4月に廃止となりました。

 原告らは、老齢加算廃止等の基になっている調査は、健康で文化的な最低限度の生活を下回る低所得者と生活保護を比べるなど合理的でないと主張。特別な需要は現在もあり、生活保護の基準生活費、介護保険、通院移送費などではまかなわれていないとしました。

 市側は、60歳から65歳までと70歳以上の消費支出額を比較すると70歳以上の方が支出額は低くなっており特別な需要は認められないとしました。

 高野裁判長は、低所得者の生活扶助相当消費支出額より70歳以上の加算を除いた生活扶助額が上回っているとして、保護基準改定が「違憲、違法なものであるということはできない」としました。


「援助必要ない」とは 原告ら批判

 福岡生存権裁判で3日、福岡地裁前で、判決を知らせる弁護士が掲げたのは「不当判決」の垂れ幕でした。

 傍聴席に入れず地裁前で待っていた原告や支援者らからは悲鳴ともため息とも言えない声がもれました。「抗議する」「裁判所は憲法25条を守れ」との声がその後に続きました。

 判決後、原告や弁護団弁護士、支援者らが集まり福岡市内で報告集会と記者会見を開きました。弁護団長の高木健康弁護士は「仕方がないという判決ではない。極めて不当な判決」と批判しました。

 高木弁護士が「不当判決」として例に挙げたのは91歳の原告でした。家のなかでつえをついて歩くのが精一杯で自分で外出することは困難で買い物に行くことすらできません。自宅の蛍光灯は自分で取りかえられず、冷蔵庫を置いている床は傾いたまま。生活に関して援助が必要ですが、生活保護費は70歳になると老齢加算がなくなったためにそれまでより減額となります。

 「本当に誰が見ても援助が必要な人に裁判所は『援助は必要ない』といった。裁判を通じて高齢者の生活実態を見てきたが、この判決は認めるわけにはいけない。今後も全力で頑張っていきたい」

 原告の女性(76)=八幡東区=は「これからも苦しい状態が続くと思うと、何が何だか分からない。もう少しこんな貧困な年寄りのことを考えてほしい」と語りました。

 原告団、弁護団、支援する会は、判決について3者合同でコメントを発表。「司法が職責を放棄し、貧困スパイラルを容認したものといわざるを得ず、憤りを禁じ得ない」としました。


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