2009年4月21日(火)「しんぶん赤旗」

主張

米州首脳会議

新たな「地域秩序」の幕開けに


 南北アメリカの三十四カ国首脳が参加した第五回米州首脳会議は、この地域の目を見張らせる変化を鮮やかに示しました。前回首脳会議(二〇〇五年)の開催国アルゼンチンのフェルナンデス大統領は、米州諸国の米国への従属の歴史を指摘し、「従属ではなく協力」の「新たな地域秩序」を建設する必要を強調しました。米国のオバマ大統領も「過去の誤りを認めていく」と応じ、今後は「対等のパートナー」として協力すると強調して「新たな方向」の追求を呼びかけました。

経済覇権に抗して

 第一回米州首脳会議は一九九四年、クリントン米大統領(当時)が呼びかけて開かれました。米国、カナダ、メキシコによる北米自由貿易協定(NAFTA)を踏み台に、米州全域で米国の経済覇権を確立する「米州自由貿易圏(FTAA)」を〇五年までに創設するためでした。その構想はブッシュ前米政権にも引き継がれました。

 しかし、FTAA構想は当初から中南米諸国民の根強い反対に直面しました。中南米で自主的・進歩的政権が燎原(りょうげん)の火のように次々と誕生し、米国の覇権を許さない地域協力が拡大する中で、構想は頓挫し、前回首脳会議で立ち消えに追い込まれています。

 八〇年代を「失われた十年」、九〇年代を「絶望の十年」と呼ぶように、中南米では繰り返す経済危機のもとで貧困が拡大しました。「ワシントン・コンセンサス」と呼ばれた、米国と国際金融機関が押し付ける徹底的な規制緩和などの新自由主義政策が主因でした。それに代わる経済社会のあり方が求められたことが中南米を覆う変革のうねりを生み出したのです。

 新自由主義の破たんは明白です。今月開かれたG20サミットでは議長を務めたブラウン英首相が「ワシントン・コンセンサスは終わった」と宣言しました。中南米の進歩勢力はこの世界的変化に大きく貢献し、それがこれら政権への強い支えとなっています。

 首脳会議の“主役”が、米州でただ一つ首脳会議に招かれていないキューバだったことにも、この変化が反映しています。首脳会議はキューバの「復帰」と米国の対キューバ経済封鎖の解除を求める声に覆われました。そのもとで、オバマ大統領は対キューバ関係の「新たな始まり」を表明しました。

 オバマ政権は首脳会議直前、対キューバ経済封鎖の一部緩和を発表しました。中南米諸国の封鎖解除要求が強まる中、対米批判を和らげる意図が込められているものの、六〇年以来のキューバ敵視政策そのものを見直すにはいたっていません。オバマ大統領は対キューバ関係の改善には時間がかかるとし、「相互主義」に立つと表明しています。

干渉政策と決別を

 米国は「民主化」の名でキューバの政権転覆を公然と掲げ、経済封鎖をそのテコに使ってきました。キューバの主権を侵害するあからさまな干渉です。国連総会は毎年、対キューバ経済封鎖を非難する決議を圧倒的多数の賛成で採択しています。

 オバマ大統領は首脳会議で、「米国の政策が他国への干渉であってはならない」と述べました。その言葉がどんな行動につながるのか、中南米諸国と世界が注目しています。


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