2009年4月2日(木)「しんぶん赤旗」

西松建設献金事件は単なる「形式犯」ではない

栗田 敏夫


 民主党代表小沢一郎氏の公設秘書が起訴された政治資金規正法違反の罪について、軽微な「形式犯」にすぎないという議論が一部でくり返されています。はたしてそうでしょうか。

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 東京地検の起訴事実によると、秘書は二〇〇三年から〇六年までの四年間、資金管理団体と政党支部で西松建設からの献金計三千五百万円を受けたのに、それぞれの政治資金収支報告書に、西松建設のダミー(隠れみの)政治団体からの献金と虚偽記載しました。

 三千五百万円もの企業献金を、政治団体からの献金だとうその記載をしたというのです。

 検察が起訴したのは時効の関係もあり、四年間分の献金だけでした。

 本紙は、小沢氏秘書の逮捕より二カ月以上早い昨年十二月二十一日付で、ダミー政治団体の一つである新政治問題研究会の存在を暴き、小沢氏側や自民党の二階俊博経産相、森喜朗元首相などに巨額献金が流れていたことを報じています。

 ダミー政治団体からの小沢氏側への献金は、ダミー設立の一九九五年から始まり、団体が解散する〇六年まで十二年間も続きました。献金総額は政治資金収支報告書で本紙が確認しただけでも一億二千九百万円にものぼります。

 「西松」という特定の建設業者からの巨額献金が長期間にわたって、国民の目からおおい隠されてきた――これが今回の事件の核心です。

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 政治資金規正法は第一条でその目的について、「政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにするため」とし、政治資金の収支の公開や政治資金の授受の規制を通じて、「政治活動の公明と公正を確保し、もつて民主政治の健全な発達に寄与することを目的とする」としています。

 この政治資金規正法の趣旨からいっても、今回の事件を、単なる「記載ミス」「書き間違い」の「形式犯」などといってすますわけにはいきません。それは公明、公正であるべき民主政治の土台をゆるがす重大な政治犯罪ともいうべきものです。

 量刑からいっても虚偽記載の最高「禁固五年」は、収賄罪に匹敵します。

 小沢氏や民主党は、この重大な疑惑に対して、真実はどうなのか、なぜ西松からの多額の献金を長期にわたって隠さなければならなかったのか、国民に納得のゆく説明をすべきです。もともと、見返りを求めない企業献金はありえません。仮に犯罪事実がなかったにしても、国会議員には、高い政治的道義的責任が求められています。真相をみずから明らかにする責務があります。

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 政治資金規正法は、多くの「抜け道」や、透明度の低さなどから「ザル法」といわれました。

 金丸信元自民党副総裁が東京佐川急便から五億円のヤミ献金を受け取りながら、届出をしなかった一九九三年の政治資金規正法違反事件。検察当局が略式起訴にし、東京簡裁が罰金二十万円の略式命令ですませたとき、国民から猛然と批判の声があがりました。

 以後、検察当局は政治資金規正法違反容疑で、何人かの政治家や秘書を摘発しましたが、立件しなかった疑惑も多くありました。

 国民からくじで選ばれる審査委員で構成する検察審査会は、そうした事例について、「起訴相当」「不起訴不当」の議決をしてきました。

 「政治とカネ」への目が検察よりも国民のほうが厳しいことを物語っています。

 小沢氏側に渡った巨額献金の趣旨や、二階氏をはじめ自民党政治家への同質の献金疑惑についての究明は、今後いっそう進めていくべきです。しかし、そこに進まないからといって今回の事件を軽くみることは、民主政治の根幹をふみにじる犯罪を免罪することになりかねません。(社会部長)



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