2009年3月27日(金)「しんぶん赤旗」

石原都政 10年間新築ゼロ

都営住宅入れない


 景気悪化や雇用破壊のなか公営住宅への要求は高まっています。東京都の石原慎太郎知事は一九九九年の就任以来、二〇〇八年度まで都営住宅を新築していません(既存住宅建て替えによる新築を除く)。経済危機のなか都民生活への緊急対策が求められた〇九年度予算案にも盛り込まず、十年間新築ゼロが続きます。(佐藤つよし、坂井和歌子)


不況下 応募倍率は30倍

 〇七年十一月の募集以降、世帯向け(一般募集住宅)都営住宅の応募倍率はここ数年三十倍を超える高倍率がつづいています。国土交通省の調査によると全国平均の公営住宅の応募倍率は八・七倍。これに対し東京都は二十八・三倍(二〇〇七年度)。入りたくても入れない深刻な状況をつくっています。

 十年も都営住宅を新築しないのは、石原都知事が「都営住宅の総戸数抑制」策をかかげているためです。

 〇一年五月の都住宅政策審議会答申は「公営住宅の建設を中心とした従来の直接供給型の政策を抜本的に見直す」としました。〇二年二月に都がつくった「住宅マスタープラン」は、将来の人口・世帯数の減少や、区市町村が中心になってやっていくのが望ましいという理由で、新たな都営住宅を建設しない方針を明確にしました。

 国も、住宅政策を「市場の活用とストックの活用」に転換。入居収入基準の引き下げなど公営住宅を抑制し、救貧対策にせばめようとしています。

 健康で文化的な生活を営むための住宅を整備し「住宅に困窮する低額所得者に対し低廉な家賃で賃貸」(公営住宅法第一条)するという自治体の責任を投げ捨ててきたのです。

敷地に高級マンション

 都営住宅新築から手を引いた石原都政が力を入れているのは高層マンション開発です。

 地下鉄・青山一丁目駅に近い都心の一等地にある南青山一丁目アパート(東京都港区)。すぐ隣に都が建設したのは一カ月の最高家賃三百七万円という超高層賃貸マンションです。同アパート建て替えの際、敷地内にマンション建設のための空きスペースをつくり、そこに大手ゼネコン・不動産が乗り込んできたのです。

 開発に提供した都営住宅の敷地面積は約六千七百平方メートル。これを三井不動産や大成建設、伊藤忠商事三社でつくる特別目的会社(SPC)に七十年の定期借地として貸し付け、民間事業として開発しました。建て替えでできた都営住宅は十四階で百五十戸。敷地の半分に四十六階の民間賃貸マンションを建て、都営住宅の二倍を超える三百七十九戸の入居を受け入れました。

 所得の低い人へもっと都営住宅をつくってほしいと運動している東京都生活と健康を守る会連合会が、この開発現場を見学しました。バス二台に七十五人が参加した都政ツアー。最高家賃月三百万円ときいてびっくり。「本来都営住宅の用地に、私たちの年収の倍もする家賃の高級マンションの開発で大企業にもうけさせるなんておかしい」と怒りの声が上がりました。

 都営住宅建て替えで土地を貸し付け、高級マンションなどを開発するプロジェクトを都は各地ですすめています。都営住宅総戸数抑制策と一体で「民間活力と連携したプロジェクトの推進」(住宅マスタープラン)を持ち込んできたものです。

表

自・公・民 新規建設に反対

 日本共産党都議団は昨年12月の都議会で、都営住宅の抑制策を見直し、新規建設に踏み出す決議案を提出しましたが、自民、公明、民主の同意が得られず上程されませんでした。

 決議案は、都民生活が困窮度を増しており東京において住まいを確保することも困難になる中で、都営住宅の募集に対し毎年10万人(世帯向け)を超す応募者が殺到していることや、低所得者や子育て世代が入居できる家賃の安い住宅が大幅に不足していることを指摘したものです。

 都営住宅の新規建設に反対する政党は、都民の切実な要求に背を向けていると言わざるを得ません。


都営住宅充実と活用迫る共産党

 日本共産党都議団は都営住宅建設の抑制に反対し、都に新規建設を要求してきました。

 安くて質のよい都営住宅を求め、住民とともに運動。老朽化した都営住宅の建て替えの際に介護ベッドが入れられないなどの声を取り上げて間取りを広げさせたケースもあります。国による公営住宅法改悪で家賃値上げや住民の追い出しを起こさないよう都に要求し、家賃値上げを一年間延期させました。

 昨年十二月の都議会代表質問では、都営住宅の空き家が一万戸あることを示し、雇用破壊のなか解雇されて住居を失った人々に公営住宅を提供するよう都に求めました。

 その後も十二月と今年一月に石原知事に申し入れ。三月十一日の都議会予算特別委員会で曽根はじめ都議は派遣切りで寮から追い出されている労働者の状況にふれて「ほとんどの県で県営住宅はもちろん市町村営住宅や国の雇用促進住宅、都市再生機構住宅などと調整して住宅を提供している」と指摘。都営住宅の一時利用を迫りました。

 東京都は、介護職など都の就労支援事業の対象者について、四月以降の早い時期に都営住宅を提供する考えを示しています。



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