2009年2月17日(火)「しんぶん赤旗」

経済悪化をくいとめ、雇用、社会保障、農業、中小企業を応援し、内需をあたためる予算に

2009年度予算案の抜本的組み替えを要求する

日本共産党国会議員団


 日本共産党国会議員団が16日に発表した「2009年度予算案の抜本的組み替え要求」は次の通りです。


 日本経済は、急速に悪化し、深刻な落ち込みを見せている。昨年10―12月期のGDP(国内総生産)は12・7%の大幅マイナスとなった(実質、年率換算)。この間の「構造改革」路線が、内需・家計をないがしろに、日本の経済を極端な外需頼みの構造にしてきたことによって、アメリカ発の金融危機という「津波」から、国民のくらしと経済をまもる「防波堤」を崩してしまった。自民党政治の責任は重大である。

 ところが、政府が提出した2009年度予算案には、経済悪化を緊急にくいとめる対策もなければ、くらしと内需の回復に役立つ方策もない。選挙目当てのばらまき「定額給付金」(第2次補正予算)につづき、雇用対策も短期・一時的なものにすぎず、大企業による「派遣切り」を止める対策もない。そして、社会保障についてはいぜんとして「抑制路線」に固執している。その一方で、大企業、大資産家のための減税は、いっそう規模を拡大しようとしている。これでは日本経済の回復どころか、生産が落ち込み、雇用と所得が大幅に減少し、消費が冷え込むという、経済縮小の悪循環を加速するだけである。

 日本共産党は、経済悪化に歯止めをかけ、日本経済の体質改善にふみ出す方向で、2009年度予算案を抜本的に組み替えることを要求する。

1、経済悪化に歯止めをかけ、内需主導の経済にふみだす

(1)安定した雇用と失業者の生活、再就職支援を

 雇用不安の拡大が、個人消費、内需を冷え込ませ、景気悪化を加速させている。この悪循環を押しとどめることは、いま求められている最重要の景気対策である。

無法な「派遣切り」「非正規切り」をやめさせるために大企業への指導・監督を

 厚労省の調査でも3月末までに12万5000人、業界団体の試算では、製造業だけで40万人の非正規労働者が失職するとされている。その多くが、違法な中途契約解除や、偽装請負などの違法行為によって本来なら派遣先企業に直接雇用されているはずの労働者への不当解雇である。これ以上の大量解雇を許さないために、現行法にもとづいて、政府が大企業への指導・監督を強化すべきである。

職を失ったすべての人に住居、生活、再就職の支援を

 「派遣切り」によって、職を失うと同時に住居さえ奪われ、ホームレスに転落してしまうという悲惨な事態が続出している。失業者の生活と再就職の支援のために、雇用保険の6兆円の積立金を活用し、失業給付を拡充する。雇用保険未加入者を含めて手厚い施策をとる。

二度と「派遣切り」を起こさないための派遣法の抜本改正をはじめ、人間らしく働けるルールを

 労働者派遣法を1999年の原則自由化以前に戻し、もっとも不安定な働かせ方の登録型派遣を原則禁止するなどの抜本改正を求める。あわせて、現に派遣で働いている労働者が職を失わずに直接雇用に移行できるような経過措置を設ける。正社員の長時間労働を是正する。

(2)社会保障予算を削減から拡充に

 社会保障予算の自然増を毎年2200億円削減する自公政権の路線は、事実上、破たんしている。ところが、麻生内閣はなおも削減路線の続行を宣言し、この間、強行してきた医療・年金・介護・福祉などの制度改悪も続けようとしている。

 貧困と生活苦を打開し、国民の命と健康をまもるため、今こそ社会保障を削減から拡充へと転換するべきである。その第一歩として、02年度以来、削減された年額合計1兆6200億円の社会保障予算を復活させ、緊急対策にあてる。

 ――後期高齢者医療制度を廃止する。高齢者の窓口負担増、病床削減による患者追い出しなど、06年「医療改革」による改悪を中止・撤回する。

 ――国保料(税)をひとり1万円、国の責任で引き下げる。国民健康保険証の取り上げをただちに中止する。

 ――年金・生活保護・児童扶養手当などの水準を物価高騰にあわせて引き上げる。生活保護の母子加算・老齢加算を復活させる。福祉灯油への国の財政支援を実現する。

 ――国の制度として、子どもの医療費無料化を実現する。

 ――介護保険の国庫負担割合を引き上げ、保険料・利用料の減免制度をつくる。介護サービスの取り上げを中止する。介護報酬を5%引き上げる。介護労働者の賃金を国の責任で引き上げる。

 ――障害者自立支援法による「応益負担」を廃止する。福祉労働者の賃金を国の責任で引き上げる。

 「医療崩壊」の打開にむけ、産科・小児科・救急医療などへの支援を国の責任で推進する。国公立病院の統廃合をやめ、地域医療の確保をはかる。

 保育制度の改悪を中止し、公的保育をまもり、充実する。

 社会保障の拡充は、国民のくらしを直接あたため、将来不安をとりのぞき、医療・介護・福祉などの各分野で新たな雇用を生みだすという「一石三鳥」の経済効果があり、内需主導の景気回復にも大きな力となる。

(3)中小企業の仕事の確保、自然エネルギー予算を抜本的に増やす

 中小企業予算を大幅に拡充する。中小企業への仕事おこしのため、国と自治体の中小企業向け官公需発注比率を引き上げる。大型公共事業を削り、学校耐震化など、教育、福祉、防災、環境などの生活密着型の公共事業に重点を移す。

 中小企業への貸し渋り・貸しはがしの先頭に立っているメガバンクに対して、早急な指導・是正をおこなう。中小企業への信用保証制度について、部分保証制度を撤回し、全業種を対象とし、全額保証に踏み切る。各種セーフティーネット貸出について、全業種への拡大と適用条件の緩和、返済猶予、金利と保証料の引き下げなどをおこない、中小企業への資金供給を円滑化する。「下請かけこみ寺」などの相談体制を強めるとともに、広く立ち入り検査を実施するなど、大企業の不当な下請け切り、下請けいじめを是正する。

 地球温暖化を抑制するため、またエネルギー自給率がわずか4%しかない状況を打開するため、太陽光・熱、風力、小型水力、バイオ、地熱などの自然エネルギーの利用を抜本的に拡大する。自然エネルギーの小規模・分散型の供給体制を追求すれば、地元の雇用や、建設・電気関係など中小企業の仕事を増やすことができる。電源開発促進税の税収を、安全上も技術的にも未確立な原発に優先的に使うのをやめ、自然エネルギーに振り向ける。

(4)日本農業を再生し、地域経済を支える

 内需拡大型の経済構造に転換するには、日本の豊かな自然条件をいかした農林水産業の再生こそ、地域経済を下支えする大きな柱である。世界の食料は、かつてないひっ迫傾向を強めており、お金を出せば食料を世界中から買い集められる時代ではなくなっている。食料自給率が40%と異常に低い日本にとって、農漁業の再生による自給率の引き上げは、経済・社会の安定にとって最優先の課題である。

 食糧増産に不可欠な価格保障・所得補償を思い切って実施すべきである。ミニマムアクセス米の輸入をやめ、主食用米のゆとりある生産を基本に、麦・大豆とともに米粉・エサ用の米生産への支援を強める。依然として続く資材や飼料の高値から、農家経営をまもる対策を強化する。新たに就農する人への支援も、月15万円を3年間支給するなど手厚い支援を実施する。

 地産地消や食の安全を重視した地域づくりで、国産農産物への消費者の信頼を高める。BSE(牛海綿状脳症)対策の全頭検査の維持に補助金を復活させ、輸入食品の検査体制を強化し、原産国表示の徹底をはかり、食品の監視体制を強化する。漁業、林業への支援を強める。

 地方交付税を増額し、大幅に削減されてきた地方財源の復元に向かう。

(5)日本の未来に希望を与える教育、文化の拡充を

 わが国の教育予算の水準はOECD(経済協力開発機構)諸国平均の7割にすぎず、きわめて劣悪な条件にある。しかも「貧困と格差」の拡大が、子どもの状況をいっそう深刻なものにしている。

 「30人学級」や特別支援教育の充実をはかる。義務教育費国庫負担制度を元に戻し、国の義務教育への責任を果たす。

 わが国の子どもの貧困率は、OECD諸国平均より高く、しかも所得再配分によって貧困率が逆に増えている異常な状態にある。就学援助を国庫負担制度に戻し拡充する、母子家庭への支援の強化、児童手当の増額、子どものいる家庭の税負担の軽減をおこなう。

 親のリストラなどにより勉学をあきらめる若者が増えつつある。高校・大学等の授業料減免を大幅にひろげるとともに、奨学金の全無利子化・返済免除制度の拡大・給付制奨学金の創設をおこなう。

 教育に有害で関係者も強く反対している全国いっせい学力テスト、教員免許更新制度は中止する。

 国立大学、独法研究機関の運営費交付金と私立大学の経常費補助の連続削減を中止し、基盤的経費として十分に確保する。基礎研究を支援する科学研究費補助金の採択率を大幅に引き上げる。若手教員・研究者を増員し、非正規雇用を抑える。

 文化庁と芸術文化振興基金がおこなっている公的助成の削減をやめ、助成方式の改善と予算増をはかる。日本芸術文化振興会、国立美術館・博物館への運営費交付金を増額する。「埋蔵文化財発掘調査」予算削減をやめ、拡充する。

(6)消費税増税に反対、減税こそ必要

 政府は、「所得税法等改正案」の付則に、2011年度までに消費税増税を決めることを盛り込み、これを国民におしつけようとしている。消費税は内需をさらに冷え込ませ、低所得者ほど重い負担をかぶせる最悪の大衆課税であり、増税は断じて認められない。

 イギリスでは、付加価値税(消費税)の税率が引き下げられ、EU(欧州連合)も消費税減税の「勧告」を出している。日本でも、当面、食料品の非課税を実施すべきである。

2、米軍再編・基地強化と自衛隊の海外派兵体制づくりをやめる

 09年度の軍事費は、グアムでの米軍基地建設や沖縄の新基地建設のための経費を本格的に計上するなど、アメリカいいなりですすめている米軍再編と自衛隊の海外派兵体制づくりをすすめるものになっており、これらを削減する。

「米軍再編」を中止・撤回する

 米軍・自衛隊の再編は、アメリカの先制攻撃戦略にもとづいて、日米軍事同盟を地球規模の侵略的な軍事同盟につくりかえるものである。司令部から基地使用、情報・通信、演習にいたるまで米軍と自衛隊を一体化させ、基地機能の抜本的強化と固定化をすすめようとしている。沖縄の新基地建設や海兵隊「移転」の名によるグアムの米軍基地増強、キャンプ座間や横田基地における日米司令部機能の一体化、岩国基地への米空母艦載機部隊の移転、米軍機の訓練「移転」など、三兆円にもおよぶ米軍再編計画を中止、撤回する。「アメとムチ」で関係自治体を脅しつけて、基地増強を強要するための「再編交付金」は廃止する。

米軍「思いやり」予算を全額削除する

 日米地位協定上、日本に負担義務のない米軍「思いやり」予算と沖縄の米軍基地たらい回しをすすめる「SACO(日米特別行動委員会)関係費」を全額削除する。

海外派兵体制づくりをやめる

 自衛隊の海外活動を「本来任務」にし、本格的な海外派兵体制づくりがおこなわれている。インド洋・アラビア海から自衛隊を撤退させるとともに、「海賊対策」の名によるソマリア沖への新たな派兵をやめる。海外派兵型装備の導入・開発をやめる。中央即応集団や中央情報隊など、海外派兵を促進するための組織づくり、日米軍事一体化をささえるための軍事行政機構づくりを中止する。

 アメリカの先制攻撃戦略の一翼をになう「ミサイル防衛」の経費や宇宙の軍事開発利用を拡大するための関連予算を削除する。

3、大企業・大資産家優遇税制をあらためる

 政府は、「内需拡大が重要」と口先では認めておきながら、外国子会社からの配当非課税制度を創設するなど、海外進出企業をいっそう優遇する税制を導入しようとしている。また、株式の譲渡益・配当にたいする税率を10%に引き下げる証券優遇税制を、さらに3年間も復活・延長することにしている。「カジノ資本主義」の害悪がこれだけ明らかになっているにもかかわらず、極端な優遇税制で「株主資本主義」を促進することは、まさに時代に逆行するものである。こうした大企業・大資産家優遇税制を、ただちに改める。

財源についての考え方

 歳出面では、軍事費や大型公共事業などムダを削る。いま「国会のムダを削る」と称して、議員定数を削減しようとしているが、これは国政と民意をつなぐパイプを細らせるものである。国民の税金を政党が分けどりし、憲法違反の年間約320億円もの政党助成金を、単に「削減」するにとどまらず、きっぱり廃止すべきである。

 歳入面では、大企業の法人税率の段階的な引き上げや所得税最高税率の引き上げなど、応能負担の原則にもとづく税制改革をおこなうことによって確保する。

 同時に、雇用対策をはじめとする当面の景気対策の財源や、こうした税制改革による税収増が実現するまでの「つなぎ財源」としては、財政投融資や雇用保険の特別会計の積立金などの有効な活用をはかる。道路特定財源は、形をかえて道路に使途を限定するようなやり方をやめ、名実ともに一般財源化する。原発推進の財源となっている電源開発促進税の使途をあらため、自然エネルギーや環境対策のために活用する。



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2009年度予算案の抜本組み換え案/市田書記局長が記者会見で発表(09.2.16)

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