2009年2月4日(水)「しんぶん赤旗」

合併症への体制整備

妊産婦医療 政府懇が提言


 厚生労働省の「周産期医療と救急医療の確保と連携に関する懇談会」(座長=岡井崇・昭和大医学部産婦人科学教室主任教授)は三日、「周産期救急医療における『安心』と『安全』の確保に向けて」と題する報告書を大筋まとめました。同懇談会は、昨年十月に東京都内で、八つの病院で受け入れ困難とされた妊婦が死亡した問題を受け、同十一月に設置されたものです。

 報告書は、現状の問題点として、産科・新生児担当・麻酔科・救急の医師や看護師などの不足が深刻な状況にあると強調。周産期医療に万全の体制を整備する意思を表明するよう、政府に求めています。

 とくに、妊産婦が別の急性期疾患を併発している場合への体制整備がこれまで十分でなかったと指摘。周産期母子医療センターの指定基準を見直すことや、各センターが提供可能な診療機能を明示し、病状に応じて迅速に搬送できるようにすることなどを提言しました。

 二十四時間、患者を受け入れ可能にすると、病院の経営が不採算となるため、必要な支援策を検討するとしています。

 また、妊産婦受け入れ困難の主因となっているNICU(新生児集中治療管理室)不足の解消を図ることが重要だとして、NICU必要病床数を、出生一万人につき二十床から、当面一万人につき二十五―三十床に引き上げ、整備を進めるとしています。

 医師や看護師など人的資源の維持・拡充を「喫緊の課題」とし、支援策を検討するとしています。


解説

現場への国の財政支援急務

周産期・救急医療の報告書

 「実現を厚生労働省に確約させ、血判状を押させるくらいのつもりでやるべきだ」「財政措置がなければ、すべては絵に描いたもちだ」―三日、厚生労働省内で行われた「周産期医療と救急医療の確保と連携に関する懇談会」は、現場医師らが、その場に居合わせた政府関係者らを激しく突き上げる場となりました。

 この日、大筋まとめられた報告書は、「現状の問題点」の筆頭に、産科救急医療を担うスタッフの不足を挙げています。とくに産科医については、産科をやめて婦人科に専従する医師や、出産・育児のために離職・休職する女性医師が増えている実情を指摘し、「早急な対策を講じなければ、今後、現場の産科医不足がさらに悪化する可能性がある」との厳しい見通しを示しています。

 医療費削減のためとして、医師数を抑制してきた政府の責任が、改めて厳しく問われます。政府も〇九年度からは医学部定員を過去最高水準まで増やすなど、方針転換せざるを得なくなりました。

 いま大切なことは、そこにとどまらず、国民の不安、現場の困難を解消するため、あらゆる必要な手だてを国の責任でとるべきです。

 とりわけ、現場の医師・医療機関への財政支援は急務です。懇談会でも、医師確保のための勤務環境の改善、看護職員の十分な配置、女性医師の勤務継続支援などが、緊急かつ切実な課題として提起され、「診療報酬の改善を含めた財政措置」が強く要望されました。

 昨年十月、東京都で八つの病院に受け入れ困難とされ、妻を亡くした男性は当時、記者会見で「妻が死をもって浮き彫りにしてくれた問題を、都や国などが力を合わせて改善してほしい。妻の死をむだにしないで」と訴えました。

 報告書には「周産期救急医療体制の整備は、基本的には都道府県が地域の実情を踏まえて行うべきである」というくだりもありますが、国は決してこの問題を都道府県任せにせず、国民の生命を守るために責務を果たすという立場に立つべきです。(坂井希)



■関連キーワード

もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp