2009年1月29日(木)「しんぶん赤旗」

主張

施政方針演説

「安心と活力」の言葉が空しい


 衆参両院本会議での、麻生太郎首相の施政方針演説を聞きました。昨年九月の就任直後の所信表明演説が総選挙を意識し、所信や政策よりも民主党への質問を繰り返す異常なものだったのにくらべ、今回は「新しい秩序創りへの貢献」や「安心と活力ある社会」の名で政策を並べたものです。国民の心を打つ中身がない点では大差がありません。何より国民と痛みを共有する目線や、国民が求める対策にこたえる姿勢がまったくないのです。「安心と活力」という言葉が、空しく響くばかりです。

支持率は1割台に低迷

 第一、首相の演説には、就任後わずかな期間に内閣支持率が急落し、ほとんど唯一の目玉にしてきた「定額給付金」も「消費税増税」も国民からノーを突きつけられていることに正面から向き合い、反省する態度がありません。

 どのマスメディアの調査でも就任直後50%前後あった内閣支持率は一割台にまで急落し、逆に不支持率は七割前後に上っています。定額給付金を「評価しない」は七割を超え、消費税を“三年後増税する”政策にも七割が反対しています。発足からわずか四カ月で「政権末期」といわれる事態です。まともな感覚の持ち主なら、まず国民の信頼を急速に失っていることへの反省から語るべきです。

 首相の演説は、昨年末から大きな社会問題になってきた「派遣切り」「期間工切り」によって仕事も住まいも失った非正規労働者に対してさえ、通りいっぺん、政府の対策にふれただけです。大企業の無法な解雇をやめさせ雇用を守るとはいいません。国民の痛みを痛みと感じない、国民目線のない首相の演説は、血の通った人間の言葉とはとても思われません。

 しかも首相は、現在の深刻な金融・経済危機は「チャンスでもあります」とか、「日本もまた、『この国のかたち』を変える節目にあります」などといいはるのです。国民の苦しみにはお構いなく、「危機」を口実に年来の課題の実現を図る、居直りさえ感じさせます。

 首相は口では「産業の育成」から「政府の重点を生活者の支援へと移す」といいます。しかしその中身が、「中福祉・中負担」を口実にした消費税の増税であり、「変革には痛みが伴(う)」というのではひどすぎます。消費税増税では「二〇一一年度までに必要な法制上の措置」をおこなうと明言しました。これでよく国民の「安心と活力」などといえたものです。

 なにより「重点を移す」といいながら、首相は大企業の横暴を規制するとも、減税しすぎた大企業に適切な負担を求めるともいいません。要は大企業のもうけ本位の政治には、指一本触れないのです。これでは国民の暮らしの安心など、実現できないのは明らかです。

自民党支配の行き詰まり

 外交路線でも首相は、「日米同盟を基軸に」「同盟関係を更に強化」などを繰り返しただけです。世界がどんなに変わってもアメリカ第一の路線を変えないのでは、「世界への貢献」など不可能です。

 安倍晋三、福田康夫と二代の首相が政権を投げ出し、麻生内閣も短い期間に国民の信頼を失っているのは、自民党の政治そのものが危機に陥っている証明です。国会の論戦と国民の運動で自公政権を追い詰め、政治の中身を変えていくことがいよいよ急務です。


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