2009年1月26日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

市民の病院守ろう

会つくり住民運動


 政府がすすめてきた医療費削減・制度改悪による医師不足、公立病院の縮小・廃止。これにたいし「地域医療・病院を守ろう」という運動が広がっています。愛知県蒲郡(がまごおり)市と、「独立行政法人化」に反対する愛媛県宇和島(うわじま)市の取り組みを紹介します。


医師確保へ県に署名

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愛知 蒲郡

 愛知県の「蒲郡市民病院を守る会」の人たちは、市民病院(三百八十二床)を守ろうと三万人の署名を集めるなど多彩な活動をしています。

 蒲郡市民病院は、医師不足のため消化器内科の休診、一病棟の休止などを余儀なくされています。収益も悪化し、昨年度は十八億円の繰り入れをして収支を合わせました。

副市長も出席し

 地域の革新運動をすすめる「革新蒲郡まちづくり学校」は、市民病院長を招くなど二回の学習会を開きました。人口当たりの医師が全国一多い京都府に比べ、愛知県の予算規模は三倍もあるのに、医師確保予算は八分の一しかありません。

 学習会では、地域医療計画を策定する県は、医療資源確保の責務があることを学びました。そこで「蒲郡市民病院を守る会」を結成し、県知事あてに医師確保を求める署名と、病院スタッフを励ますメッセージを集めることにしました。

 昨年八月九日の結成総会には、足立守弘副市長も出席し、市民の協力を呼びかけました。市内のスーパー前や市民病院まつり、クラフトフェアなどで署名を集めました。また、労働組合、老人クラブなどの団体に要請したほか、開業医や商店にも署名用紙を預けて協力を呼びかけました。

3万人超え話題

 署名活動に参加した若いレントゲン技師や看護師は「頑張って。絶対に、お医者さん増やしてね」などと声をかけられ、期待の大きさを感じていました。また「信頼できる先生、助産師さんのおかげで安心して出産ができました。今でも通り過ぎるたびに『生まれた場所だよ』と娘に感謝の気持ちとともに語りかけています」など多数の応援メッセージが届きました。

 人口八万人の蒲郡市で、三万人を超える署名を集め、大きな話題になりました。会は、十二月二日、地元の大竹正人県議(自民)、足立副市長とともに県に陳情しました。

 県健康福祉部の五十里明局長は「三万人の署名は非常に重みのあるものと受け止めている。蒲郡市民病院は、(公立病院等地域医療連携のための)有識者会議でも、救急医療を堅持すべきだとの意見をうかがっている。県内四大学にも協力を要請する」と積極的な対応を約束しました。

 大竹県議は「二千や三千の署名なら同行しなかった。三万の署名には驚いた」と語っています。

 病院長らの努力により、二月に二人、五月までにはさらに四人の医師が着任する予定で、念願の消化器内科の再開ができる見込みとなりました。

 会のメンバーは運動に自信を持ち、何としても病院を守る決意を新たにしています。(日本共産党蒲郡市議・柴田安彦)


独法化反対 職員と結成

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愛媛 宇和島

 愛媛県南西部にある宇和島市には、長年、住民の命と健康を支えてきた市立宇和島、津島、吉田病院があります。医師不足など地域医療の危機に、病院職員や住民が協力して「市民の会」を結成して存続運動をすすめています。

医師確保で改善

 旧吉田町にある市立吉田病院を襲った“医師不足”。最大で十三人いた医師が、二〇〇五年には、四人にまで激減しました。宇和島市職員労組同病院支部の石村貴彦書記長は「医師がいなければ、患者さんの足も遠のきます。病院の運営も厳しくなり、〇五、〇六年度は四億円を超える赤字でした」と振り返ります。

 職員らは、アンケートで住民の声を集めて、県や市に医師確保を要請しました。住民の間でも、産婦人科の存続や常勤内科医の確保を求める署名が自発的に取り組まれ、短期間で大量の署名が集まりました。

 職員と住民の運動は「町立吉田総合病院を存続・充実させる会」(現在は「市立吉田病院を存続・充実させる住民の会」)の発足に結びつきました。議会要請や住民向けの定期ニュースを発行するなどの運動を展開。その結果、会のメンバーが松山市の医師と直接交渉したり、地元選出の県議の結びつきなどで新たに常勤医師を三人確保できました。

 「患者さんの利用も増え、病院の収益も改善に向かっています」と石村さん。

 一方、宇和島市は、総務省のアドバイザーらの報告をもとに、今年をめどに市立三病院を独立行政法人化する方針を固めました。「独法化すれば、不採算を理由に、必要な医療部門が切り捨てられる」と自治労連愛媛県本部医療評議会の山崎昌典議長は話します。

3病院存続ぜひ

 この危機に、三病院の職員と住民らは、〇七年十月に「宇和島地域医療を充実させる市民の会」準備会を結成します。同年十二月には、地域医療を守る幅広い共同を呼びかけたシンポジウムを二百人以上の参加で成功させました。

 運動の高揚の中で、昨年九月、「宇和島地域の医療・福祉と市立病院を守り充実させる市民の会」が発足します。結成総会には百六十人が参加し、独法化反対と医師の確保で地域医療を守ることなどを確認しました。

 看護師の会員(56)が病院の職員に声をかけると「『職員が頑張らないで、どうするのよ』と市民から言われて」と快く入会したと話します。ある会員(59)は、年賀状に「入会の呼びかけ」を記して送付し、会員を増やしています。

 会の事務局長を引き受けた山崎さんは「津島病院でも住民と結びついた運動をつくろうとしています。運動の規模を大きくし、市民の病院を守りたい」と語ります。(愛媛県・宮内智矢)


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