2009年1月19日(月)「しんぶん赤旗」

派遣切りノー

愛知トヨタ系労働者 労組をつくり相談会


 もう我慢できません。「派遣切り」や、派遣会社の無法な支配とたたかおうと、トヨタ系の大手自動車部品メーカー「フタバ産業」(本社・愛知県岡崎市)で働く労働者たちが労働組合を結成。十八日、同県安城市で労働相談会を開きました。参加者たちが次つぎ現状を訴えました。


 JMIU(全日本金属情報機器労組)愛知地方本部の平田英友執行委員長は「トヨタやフタバには十分な力がある。雇用を守らせる取り組みを進めよう」とよびかけました。

 参加した四十代の男性労働者は「自分も一週間後に首を切られるかもしれない。一人で悩むより、みんなと力を合わせたい」と話します。

 彼らが所属する派遣会社は「大洋荷役」(本社・同、大竹昭宏代表取締役)。ここで、いま起きていることは――。

トヨタ系フタバ産業の派遣労働者 組合を結成

そして、仲間がいる

行き場ない。ここを変える

 団体交渉の申し入れ書を手にほほ笑む男性Aさん(55)。昨年五月、派遣会社「大洋荷役」(本社・岡崎市、大竹昭宏代表取締役)の求人広告を見て、沖縄県から出稼ぎに来ました。

 学生の子どもが二人います。沖縄で見た広告には「月収三十五万円以上可」「二食付の寮完備」とありました。派遣先は、トヨタ系の大手自動車部品メーカー「フタバ産業」(本社・愛知県岡崎市)。一生懸命に働けば、家族を養えると思いました。

 そして現在、Aさんは「解雇」を言い渡されています。

 理由の説明はありません。期日は二月十三日。しかし沖縄には帰れません。飛行機の切符が買えないのです。ある月、Aさんが手にした金額は七万七千五百七十二円。二十一日、働いてです。

 これまでに、多くの同僚が首を切られたり、夜逃げするさまを見てきました。派遣社員は、そんなものかと思っていました。

 いまは違います。解雇は撤回させられると知っています。そして労働組合の仲間がいます。

 「ほかに行き場はない。だから、ここを変えるしかないんです」。JMIU(全日本金属情報機器労組)大洋荷役分会の分会長のB(50)は、そう話します。結成されて十日ほどの分会です。

 「全国に組合や共産党の仲間がいます。そう思うと、勇気がわいてくるんですよ」

プレハブの寮 食事は1回

 大洋荷役が労働者を派遣するフタバ産業は、東証一部上場。資本金百十八億円。自動車用マフラーでは国内最大手の大企業です。

 Bさんたちは幸田工場(愛知県幸田町)で、フォークリフトを使った仕分けなどの作業をしています。部品はトヨタに送られて最高級車「レクサス」などになり、世界に輸出されています。

 その生産を支える労働者は、「奴隷」と言える状況です。

 大洋荷役の労働者の時給は千百円。月収は十八万円ほどです。

 そこから「寮費」が五―六万円引かれます。寮はプレハブで、部屋は二×三メートルほどの狭さ。風呂、トイレ、流しは共同。食事の提供は、仕事のある日のみ、一度だけです。

 工場への送迎はなく、車がないと通勤できません。十数年前の軽自動車を借りさせられ、これも月に一万八千円。ガソリン代は自己負担です。

 生活のために、賃金を前借りせざるを得ません。その分は翌月の賃金から差し引かれます。

 社会保険なし。国民健康保険料を払えず、無保険状態です。

 一方的な解雇も常態化。百部屋ほどある寮は、昨年夏、ほぼ満室でしたが、いまは六、七割しか埋まっていません。

クビ宣告「俺…今怒つてる」

 この寮で、JMIU大洋荷役分会は組合員を増やしています。

 きっかけは、昨年十二月三十日。Aさんが、求人広告のコピーを寮の食堂に張り「話が違うじゃないか!」と同僚たちに訴えたのです。騒ぎを聞きつけた大洋荷役の常務は、飛んできて「お前は首だ! いますぐ出て行け!」と怒鳴りつけました。

 この光景を見た同僚のBさんは、身を震わせました。自他ともに認める温厚な性格、というBさんは「俺(おれ)…いま怒ってる」と感じました。

 そのとき、頭に浮かんだのが二月にテレビで見た、日本共産党の志位和夫委員長の国会質問。キヤノンの派遣労働の実態を取り上げ、企業の責任を追及したのです。

 「自分の思いを代弁してくれていました。それ以来、ずっと頭の片隅に共産党があった」

 「共産党に相談したらどうか」。Bさんが声をかけました。うなずいたAさんが一〇四番で愛知県委員会の電話番号を調べ、連絡。西三河地区委員会の高林誠常任委員(66)が駆けつけました。解雇は無効と説明する高林さんは、大洋荷役に電話。ただちに解雇を撤回させました。

 高林さんはJMIU愛知地方本部を紹介。分会が結成され、八日、大洋荷役に組合結成通知と、解雇の撤回や待遇の改善を求める団体交渉の申し入れ書を送りました。

 組合に入った男性(51)は語ります。

 「組合ができて、ちょっとホッとしています。『一人じゃない』という安心感というか…。仕事自体には、これっぽっちの不満もありません。働き続けられることだけが願いなんです」

 Bさんは言います。

 「派遣社員でも入れる組合があるなんて知らなかった。もう、同じ思いをする仲間を生ませたくない。自分たちが、この職場を変える」



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