2009年1月13日(火)「しんぶん赤旗」

学テ 秋田知事の公表強行

市町村教委 一斉に反旗

一時期の結果を子どもに突き付け 自信失わせていいのか


 秋田県の寺田典城知事が全国学力テストの県内市町村別平均正答率などを一方的に公表した(十二月二十五日)ことにたいし、市町村教育委員会から「教委の独立性を侵すものだ」「序列化、過度の競争を招く」などと批判が強まっています。藤里町教委は八日、二〇〇九年度学テへの「現段階不参加」を決めました。(秋田県・桑高豊治)


 昨年九月、寺田知事が「私の責任で(学力テスト結果を)公表せざるを得ない」と発言し、根岸均県教育長らが公表を説得する行脚を行いました。それにたいし、全二十五市町村教委が公表に反対しました。文部科学省の学力テスト実施要領は、参加や結果公表を市町村教委に委ねています。

不参加明言も

 県教委が市町村名を伏せて十月二十二日に開示したのにたいして寺田知事は、「公開したのかしてないのかよくわからない」といい、市町村別結果公表にこだわりました。

 この時すでに、複数の教育長が「参加の前提が崩れた。ルールを無視して公表するなら来年度学テに参加しない」と明言していました。

 寺田知事は公表理由に「公教育はプライバシーを除いて公開が基本」をあげました。知事公室は「職として知り得た情報は開示できる」「県民から請求はなかったが、県情報公開条例に基づいて公表した」といいますが、文科省の学テ実施要領上、知事は学テにかかわりを持ちません。

 部外者の知事が公表した教育情報は子どもたちに直結する情報です。藤里町の古川弘昭教育長は、「子どもは成長します。あるときのテストで問題が解けなくても数カ月後には解けるようになるものです。一部の教科のごく一時期の結果を子どもたちに突き付けて自信を失わせるようなことがあってはならないのです」と話します。

 「○村は小中ともいい。都市部の△中はガタッとおちる」などと発言する寺田知事にたいし、現場教師たちは、「子どもたちの状態で大きく変化する。平均点比較は意味をもたない」と批判します。

県教委に批判

 県教委も同席して九日に開いた町村教育長会議(会長・鶴飼孝東成瀬村教育長)では、教育に介入する知事への怒りとともに、学テ結果の自主公表をせまる県教委にも批判が続出しました。鶴飼教育長は「(結果公表で)たとえ一人の子どもでも、意欲をなくしたり、優越感をもったり、劣等感をもたせるなどということは教育の場で絶対あってはならないことだ」と発言しました。

 市町村教委の反発にたいし、寺田知事は「(来年度も)公表するべきだ」とのべ、不参加表明の藤里町教委には「一教育委員会が子どもの権利を否定するのはいかがか」と攻撃しました。

 この公表問題で、日本共産党県委員会、県高等学校教職員組合、県革新懇などが寺田知事にたいし直ちに抗議。「憲法に基づく民主教育を考える会」は四日、各市町村教委に要望書を送付し、二〇〇九年度学テへの「不参加」などを求めました。十日現在で十九市町村教委が来年度学テへの参加・不参加を検討中です。



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